◆列島縦断ニュースハイライト◆
【関東/甲信越発】


■30余年の対立に終止符、東北電力が巻原発建設を断念。

 東北電力は2003年12月24日、新潟県巻町に計画していた巻原発建設について断念することを決定した。

 71年に計画発表された巻原発は81年、「地元の合意が得られた」として政府の「電源開発調整審議会」(電調審)に上程され、着工に向けたゴーサインが出された。しかし、巻原発計画をめぐって反対運動が根気強く行なわれ、96年8月、原発建設の賛否を問う全国初の住民投票では町民の6割が「建設反対」の意思を表示するなど、建設計画拒否の姿勢が鮮明に打ち出されてきた。
 また、原発予定地内の町有地を町が反対派住民らに売却したのは違法とした推進派による訴訟でも、最高裁が12月18日、上告を受理しない決定をして建設反対派の勝訴が確定するなど、巻原発の建設は物理的にも不可能となっていた。

 最終決着に向けて新潟県知事や巻町長も東北電力に対して計画撤回を求め、東北電力の幕田社長も「電力需要はそれほど伸びず、供給力の確保を急ぐ状況にない。将来のために巻原発を残す選択肢もあるが、現実的でない」とし、電力の需給面でも巻原発の建設は必要ないとの考えを示すなど、計画断念の動きが加速していた。

 東北電力が巻原発建設を断念したことにより、電源開発基本計画に組み込まれ、国策で建設が決まっていた原発が中止される初の事例となった。

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【関東/甲信越発】


全国初、市町村合併の是非で中学生も参加しての住民投票実施。

 長野県平谷村で5月11日、市町村合併の是非をめぐり、中学生も投票に参加した住民投票が行なわれた。平谷村は長野県内最少の人口で613人(5月1日現在)。長野県南部の山間部にあり、中学校は小学校と併設された1校だけ。

 中学生以上が権利をもつ住民投票は2002年10月、村長が「村の将来選択に、村民が主体的にかかわってもらいたい」と実施を表明。12月村議会で関係条例が可決された。全国で行なわれる市町村合併をめぐる住民投票では、合併先を選択、もしくは合併先を示した上で賛否を問うが主流だが、平谷村の場合は合併相手を示さず、合併の是非のみを問うた。

 投票資格を15歳以上、あるいは18歳以上とする条例制定の自治体はあるが、中学生が参加した住民投票実施は全国で今回が初めて。

 当日の有権者は530人(このうち未成年者は中学生25人を含め73人)で、即日開票の結果、合併を「する」が341票で、「しない」の118票を上回った。投票率は88・49%(男84・90%、女91・58%)で無効票は10票だった。「する」とした票は有効票の74・3%で、平谷村の住民投票条例規定では、「7割以上」を占める投票結果の意思を「尊重」することが義務付けられている。

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【関東/甲信越発】


児童らから高濃度のヒ素を検出、旧日本軍の毒ガス関連の研究所があった茨城県神栖町の井戸水汚染。

 旧日本軍の毒ガス関連の研究所があった茨城県神栖町の井戸水から基準値の450倍のヒ素が検出された問題で、医師らでつくる茨城県の専門委員会は5月7日、周辺住民の尿から通常は体内から検出されない有機ヒ素化合物が高濃度で検出され、乳幼児や児童には、歩行の遅れや手足の震えなどの症状がみられることを明らかにした。

 高濃度のヒ素が検出された井戸を使った住民32人のうち28人の尿を調査した結果、旧日本軍が毒ガスの「くしゃみ剤」に使った成分が分解してできたとみられるジフェニルアルシン化合物とモノフェニルアルシン化合物を検出した。

 有機ヒ素化合物が高濃度で検出された幼児2人は、妊娠中に母親が井戸水を飲んでいたり、出生後に井戸水を与えられていた。このほか、健康調査に協力した6歳以上の人のなかで、バランスよく歩けない協調運動障害が10人、立ち上がってまっすぐ歩けない起立歩行障害が5人、手などの細かな震えやけいれんが8人と、何らかの症状がみられる人が23人もいた。

 今後の対応について委員会は「遺伝子損傷や神経障害などが残る可能性もあり、長期的な検査が必要だ」としている。

●鈴木環境相は5月20日、「旧日本軍の毒ガスとの関係が極めて濃厚だと思う」「健康被害への救済は大きな課題だ。これを政府全体の気持ちとして共有しないといけない」と述べ、住民の健康被害に対する救済策を講じる考えを明らかにした。

●5月26日、神栖町で説明会を開いた環境省は、高濃度ヒ素の汚染原因を突きとめるための現地調査について、その調査方法を説明した。
 それによると、5月29日から7月まで環境基準の450倍の高濃度のヒ素が検出された木崎地区の井戸を中心に、周囲10メートル四方の範囲で旧日本軍の毒ガス兵器の容器があるかどうかを調べ、地中レーダーや磁気探査で汚染源を探すとともに、深さ15メートルのボーリング調査を25カ所で行なうという。

●また、この説明会の席上で、参加した地権者の一人が「過去にもあったのではないのか」と指摘。これについて県などは、1999年に同町内にある社宅敷地内の井戸水から環境基準の44倍のヒ素が検出されことを認めたうえで、「社宅敷地内の井戸水使用を中止するように指示して水道水の使用に切り替えた際、周辺7カ所の井戸を調査したが、いずれも基準値以下で、健康被害もみられなかった」と答えるにとどまった。
 今回の有機ヒ素化合物で汚染された水を飲んだ住民は「徹底的に調べれば、こんな被害は出なかった」と当時、公表も説明も対策も取らなかった県などの対応を批判した。

 一方、現地入りした自民党環境部会の視察団は、住民に対し、「住民の健康被害を重く受け止め、救済に取り組む」と、国への働きかけを強めていく姿勢を示した。

●その後、町内の小中学校でプールなどに使用していた井戸水からも水質基準を上回る濃度のヒ素が新たに検出され、住民の間に不安が広がっている。
 学校の井戸水からヒ素が検出されたのは、町内の小学校6校と中学校4校のうち、小学校4校と中学校1校の計5校。小学校4校はプール用、中学校は散水用として使用していたが水質基準の1・4〜8・1倍だった。

 民家の井戸水から高濃度のヒ素が検出されて以降、県が水質検査をし4月21日までに判明していたが、町教委が「上水道に切り替える対応策がまとまった後、保護者に説明する」との方針を各学校に通知し、公表されていなかった。

 後手にまわる行政などの対応に対し、住民は「非常に腹立たしい。事実を早くに知っていれば私たちも対応できたかもしれない」と憤慨している。

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【関東/甲信越発】


埼玉県朝霞・志木・和光・新座4市の合併ご破算、住民投票で「ノー」。

 埼玉県の朝霞・志木・和光・新座4市合併の是非を問う住民投票が4月13日、投開票された。その結果、和光市で合併反対票が賛成票を上回り、4市での合併はなくなった。
 4市は、2001年4月から合併の法定協議会を設けて、消防本部を1つに再編したり、合併後の市役所を朝霞市におくことや、地方税や水道料金などは一番低い市に合わせることなどをすでに決めていた。しかし、住民投票にはかった結果、4市の中で財政力が高く、地方交付税の不交付団体となっている東京都に隣接する和光市で、合併反対票が賛成票を上回った。
 4市では今後、合併そのものをやめるか新たな枠組みで合併の道を探るかが再度模索される模様だが、4市の中で1市でも反対が多数占める場合、現在続けられている合併協議は打ち切ることになっていることから、朝霞・志木・和光・新座の4市合併はご破算になった。
 合併協議中の 複数の自治体による一斉住民投票は初めて。4市とも20歳以上の市民が合併に賛成、反対のいずれかを選択する方式で実施。投票率は43・26〜54・12%だった。

 現在進行形の国策でもある市町村合併は、民意が反映されていないと批判が多いのが現実だ。

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