国内4例目の鳥インフルエンザウイルスも「H5型」、2次感染の疑い?

 京都府丹波町の「高田養鶏場」で陽性反応の出た鳥インフルエンザは、茨城県つくば市にある動物衛生研究所の分析で、ウイルスの型が「H5型」であることが3月5日、判明した。これで鳥インフルエンザは戦後、国内4例目となり、拡大が懸念されることとなった。

 採卵養鶏場「浅田農産船井農場」から約5キロしか離れていないことから2次感染した疑いが強まっており、農水省は、引き続き分析を進め、「浅田農産船井農場」で検出された「H5N1型」のウイルスと同じものであるかを比較する、としている。

 京都府は、新たな感染を食い止めるため、3月4日、高田養鶏場で約1万5000羽の鶏の処分を始めている。(04・3/5)

●3月7日、京都府丹波町の「浅田農産船井農場」と、京都府園部町で死んでいた野生のカラス2羽ずつを簡易検査で調べた結果、1羽ずつから鳥インフルエンザウイルスが検出された。動物衛生研究所で鑑定した結果、H5型の高病原性ウイルスと確認された。
 野性のカラスが養鶏場と接触したために鳥インフルエンザウイルスに感染した模様だ。

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通報せず出荷の浅田農産での鶏の大量死、鳥インフルエンザウイルスを最終確認、すべて殺処分。

 農水省は2月29日未明、茨城県つくば市の動物衛生研究所で鑑定した結果、京都府丹波町の養鶏採卵場「浅田農産船井農場」の鳥インフルエンザウイルスはH5型の高病原性ウイルスだったと発表した。京都府は浅田農産船井農場に残りの鶏すべての殺処分を家畜伝染病予防法に基づいて命令した。
 山口、大分両県に続き国内で戦後3例目となったが、ここに至るまでの浅田農産のずさんな対応や認識の甘さなどが厳しく問われるものとなった。

 175万羽の鶏を保有する浅田農産は独立系では業界トップクラスの規模で、1960年に兵庫県佐用町で創業開始し、姫路市の本社工場のほか、京都府や岡山県に農場を持つ。

 京都府の浅田農産船井農場では、まず2月20日ごろに4〜5羽の鶏が死んだ。山口県での発生を受けて各都道府県を通じて農水省が「常にインフルエンザの発生を疑い、発生が否定できない場合は届け出るように」との通知を出したばかりだったが、この際、養鶏場では月平均0・5%の鶏が通常死することから、鳥インフルエンザではなく「通常死」だとして作業をした。
 26日朝は、10の鶏舎で合わせて約3000羽が死んでいるのを見つけた。しかし、この時点でも通報せずに通常通り卵の出荷作業を続けた。
 また、卵を産まなくなった鶏をいつも通り食用に加工するために1万羽以上を兵庫県八千代町の業者に出荷していた。愛知県豊橋市の食鳥処理場にも約5600羽の鶏が運び込まれた。大量死した鶏の近くのコンテナに入れていた加工用の鶏を岡山県の自社農場にも持ち込んだ。処理場で加工された一部の鶏肉は消費現場に出荷された。

 その後、京都府に匿名の情報提供があり、簡易検査で鳥インフルエンザの陽性反応が出た。そして、20万羽を飼育する採卵養鶏場では、27日までに計約2万8000羽が死んだ。

 兵庫県八千代町の食鳥加工会社処理場に出荷された鶏のうち未処理の5羽を簡易検査した結果、すべてで陽性反応も確認され、岡山から同加工会社処理場に出荷されたうちの10羽からも陽性反応が確認された。
 京都府丹波町の採卵養鶏場では、2月28日までに死んだ鶏はさらに増え、6万7000羽になった。

 29日、鳥インフルエンザウイルスが最終確認されたことにより、防疫マニュアルに基づき、同農場の半径30キロ以内の鶏や卵が正式に移動制限の対象となった。

 その後、京都市などの調べで、兵庫県八千代町の処理場から京都市の食肉販売業者に鶏ガラスープ用の鶏肉100羽分が出荷され、そのうち約60羽分が京都市、大阪府、兵庫県、滋賀県の5業者に卸され、一部が飲食店でスープなどに使われていたことも分かった。
 大阪府や兵庫県の業者には各10羽、滋賀県の業者には5羽、京都市では4業者に計35羽が卸された。滋賀県分は地元の保健所が回収を確認した。京都市では5羽の廃棄は確認したが、30羽はスープなどに使われていた。

 浅田農産の代表は「腸炎と信じていたが、結果的に判断が甘かった。責任を感じる」と謝罪したが、同社の行為が厳しく批判されるのは必至で、家畜伝染病予防法違反の疑いも出てきた。(04・2/29)

●「浅田農産船井農場」の会長(67)と妻(64)が3月8日朝、兵庫県姫路市豊富町神谷の同農産本社の鶏舎近くで、首をつって死亡しているのを従業員が発見した。「たいへんご迷惑をかけました」などと書かれた遺書も見つかった。2人は病院に運ばれたが、すでに死亡していた。
 農水省や京都府は、家畜伝染病予防法(届け出義務)違反での刑事告発を視野に入れた対応姿勢を示し、 京都府警は、事実確認のため、複数の従業員から聴取を始め、府からの刑事告発があれば、強制捜査に踏み切る構えを見せていた。そんな矢先に痛ましい事態が発生した。

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遺伝子組み換え生物の移動や栽培などを規制するカルタヘナ法、施行。

 遺伝子組み換え生物の移動と栽培について定めたカルタヘナ法(GM生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律)が2月19日、施行された。これにより管理体制がようやく国際レベルに達する。

 組み換え生物による生態系への悪影響を防止する生物多様性条約カルタヘナ議定書は、2001年1月採択され、発効に必要な50カ国に達したことから、2003年9月に発効した。今回の施行はその国内法。

 遺伝子を組み換えた昆虫などが自然界に広がり、在来の生物に悪影響を与えるのを防止するための措置は、これまでは指針で規定し強制力がなかった。同法の施行により、GM作物の栽培や輸入に関しては、農相などの承認を受けることが義務付けられる。

 除草剤に強い大豆の栽培や運搬など組み換え作物を屋外で利用する第1種使用では、国の承認を受けるなどの事前チェックと、悪影響があれば回収させる。使用中止や回収の命令などに違反した者には、1年以下の懲役か100万円以下の罰金を科す。また、GM作物を国内で勝手に栽培した場合は、最高50万円の罰金、6カ月の懲役が科される。

 「研究室など閉鎖環境で利用する第2種使用では拡散防止措置を取る」「普通の大豆に遺伝子組み換え大豆が混じるなど混入の恐れがある産地からの輸入では、混入を調べる生物検査を受ける」ことも義務付けた。
 第1種使用の承認時には、ほかの生物への影響などの評価書と使用方法などを示した使用規程を主務大 臣に提出させ、悪影響があると判断すれば修正を求める。予想しなかった影響が後から分かった場合は、変更や中止を求めることができる。また、第2種使用で拡散防止措置が定まっていない場合は、主務大臣の確認を受けることが必要となる。
(04・2/20)

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鶏愛好家が飼っていたペットのチャボが鳥インフルエンザ感染。

 大分県九重町の鶏愛好家が飼っていたチャボ13羽のうち7羽が死んでいるのが見つかり、鳥インフルエンザの疑いがあるとされた問題で、大分県は2月17日、茨城県つくば市にある動物衛生研究所の検査結果として、チャボの検体から、鳥インフルエンザウイルスH5亜型の感染が確認されたと発表した。

 このチャボは3年前に卵でもらったものを自宅でふ化させ、庭に建てた3棟の小屋の中で飼育していたものだという。大分県はウイルスまん延を防ぐため、アヒル1羽を含む生きていたチャボ7羽を焼却処分し、民家への部外者の立ち入りを制限すると共に小屋を消毒した。また、熊本県と連携し、民家から半径30キロ以内を対象に、鶏や鶏卵などの移動を制限。養鶏施設や鶏などを飼っている民家、学校などに対しても検査を実施する。

 79年ぶりに国内で発生した鳥インフルエンザの感染は山口県に次いで2例目となったが、今回のようにペットとして飼われていた鶏が感染したのは初めて。

 ちなみにチャボの愛好家が飼うものは1羽が5〜10万円と高価なため、ほとんどの人が普段から放し飼いにせず、小屋や箱の中で飼っているといわれる。しかし、飼育環境は千差万別で、今回の発生を機会に、飼育環境との関連を含めて感染のメカニズムや感染経路の究明が強く望まれる。

 これまで感染の有無を調べるモニタリング調査は、ペットとして飼われている鶏などは対象外だったが、農水省は今後、これらも調査対象に加えるよう防疫マニュアルを改訂する方針だ。

 2月19日には、最初に鳥インフルエンザが見つかった山口県阿東町周辺の鶏の「移動制限区域」が解除され、「終息宣言」が出される。(04・2/17)

●タイでは、ペットとして飼われていた猫2匹が、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)に感染、死んだと報じられた。猫を飼っていた家は養鶏場に隣接し、猫は発病前に養鶏場の鶏の肉を食べており、この鶏が鳥インフルエンザに感染していた可能性があるという。タイ政府当局はこの猫の死因について確認していない。

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アメリカ農務省、BSE感染牛の調査を打ち切り。

 アメリカ・ワシントン州で牛海綿状脳症(BSE)、いわゆる「狂牛病」の感染牛が確認されたことから、感染原因などに関する疫学調査を行なっていたアメリカ農務省は2月9日、調査活動を打ち切ると発表した。

 2003年12月下旬からこの間に至るまで、感染牛とともにカナダから輸入された80頭のうち、所在や行方を確認できたのは28頭にとどまった。また、感染牛と同じ飼料を食べたと見られる牛25頭に限っても、14頭の行方しか分からなかった。
 出生直後に食べた飼料が原因との見方が強かったが、特定には至らず、疫学調査では最後まで追跡できなかった。

 調査開始から約1カ月半でのあっけない「幕引き」だが、これは、牛の記録が保存されていなかったり、牛の耳に付けた認識票がなくなるなどしていたためで、アメリカにおける個体識別(ID)や生産履歴(トレーサビリティー)の不備や安全対策の欠落を裏付けた形となった。

 アメリカ政府は、感染牛以外は安全として、日本など主要輸入国に対し、アメリカ産牛肉の禁輸措置を解除するよう働き掛けを強める方針だ。

 「全頭検査もしくはそれと同等の対応」を求める日本側と、「全頭検査は非科学的」とするアメリカ側との間で、大きく認識が分かれているため、政府間合意にはしばらく時間がかかりそうだ。(04・2/10)

●アメリカ農務省が打ち切ったBSE感染牛に関する原因究明調査について、農務省の説明とは違い、感染牛がダウナー(歩行困難な)状態ではなかったとの複数の目撃証言がでた。牛が歩行可能だったと証言したのは運搬業者、解体場の経営者、解体担当者で、処分後に行なわれたBSE検査も、牛の状態にかかわらず1000頭分の脳組織を提供する農務省と解体業者の契約によるものだったとという。
 調査委は「事実なら農務省の信頼性を揺るがすもので、BSE検査体制の大幅拡充が必要」と指摘している。

●日本がアメリカ産牛肉の輸入再開の条件として求めている全頭検査について、農務省は実施しない方針を決めた。
 アメリカでは年間に約3500万頭の牛が食肉用に処理されているが、BSE対策としては、病的な症状が見られる牛の検査頭数を拡大するものの、多くて45万頭程度を対象にする。生後30カ月以上の健康な牛も年間2万頭を抽出検査するが、検査措置は6月から1年程度だけにとどめる、という。
 折衷案として、民間業者による自主的なBSE検査態勢を新たに設け、検査を済ませた牛肉の安全性をアメリカ政府が認証した後、日本が輸入するという「部分解禁」が、暫定的な対策として浮上していたが、農務省はこれも想定していない。

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環境への影響などが懸念される遺伝子組み換え稲の調査作業を公開。

 北海道農業研究センターは、消費者や生産者約30人が立ち会うなか、北海道内で初めて栽培された遺伝子組み換え(GM)稲の調査作業を2月3日に公開した。

 稲は北海道内で育成されたうるち米「キタアケ」に、光合成能力に優れたトウモロコシの炭酸ガス固定を触媒する酵素を作る遺伝子を組み込んだもので、閉鎖系温室では一般形質及び生育特性、花粉の形状・稔性・寿命、近縁種との交雑可能性など、非閉鎖系温室では根からの根圏への分泌物、微生物相への影響など、隔離圃場(模擬的環境)では花粉の飛散性、低温耐性、栽培土壌の後作への影響などについて安全性を調べる試験を実施した。

 トウモロコシが持つ高い光合成遺伝子を入れることで、米をトウモロコシ並みの収量に高めることができるのではないかということでの栽培実験だが、遺伝子組み換え作物に対しては「食べたくない」という消費者の拒否反応があるため、商品化への現実味は薄く、可能になったとしても家畜飼料やバイオマス利用などに限定されるのが実情だ。

 このため、利用価値が少なくリスクだけが多い今回の栽培に対しては、花粉の飛散などにより本来の環境が変るのではないかなどの懸念の声が上がった。そこで、特に懸念される花粉の飛散を調べるために、うるち米と交雑した餅米が半透明になる性質を利用し、周辺で栽培した餅米から、実際に半透明となった粒を選び出し、組み換え体の遺伝子が含まれているかどうかを分析することにした。

 この粒を茨城県にある農業生物資源研究所で分析するが、交雑の有無を遺伝子レベルで検証したうえでの調査結果がまとまるのは6月以降になる見通しだ。

 さまざまな実験結果などで遺伝子組み換え作物は総じて思わぬリスクが出てきており、これまでの安全性評価では不十分な結果が示されている。このため農水省は新たな指針作りに乗り出したほか、北海道では屋外栽培を禁じる指針の制定方針を打ち出している。

 なお、北海道のほか、遺伝子組み換え稲の野外栽培試験を行なっているのは、茨城県筑波にある中央農業総合研究センターと香川県善通寺市にある四国研究センターで、2001年度から長期栽培試験に取り組んでいる。 (04・2/5)

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2003年産米、9県・15市町村で流通不可のカドミウム含有米。

 農林水産省は1月30日、2003年産米のカドミウム含有調査結果を発表した。食品衛生法の基準の1・0ppm以上を超すものはなかったが、市場には流通させない基準値として農水省が定めている0・4〜1・0ppmを9県・15市町村の45点で検出した。

 前年は945点を調査し、1・0ppm以上が1点、0・4〜1・0ppmが30点で検出されたが、今回は消費者の安全意識の高まりに配慮し、調査点数を大幅に増やし、調査対象は、過去3年間の調査において0・4ppm以上の濃度のカドミウムが検出されたことのある地域の242点とリスク管理上調査することが望ましい地域の2498点の、計2740点の米に拡大した。

 0・4〜1・0ppmを検出した9県・15市町村の45点は次の通り。

 過去3年間の調査において0・4ppm以上の濃度のカドミウムが検出されたことのある地域242点では、宮城県迫町3点、山形県朝日村2点、新潟県豊栄市3点、長野県白馬村3点、福岡県大牟田市14点。
 リスク管理上調査することが望ましい地域の2498点では、山形県米沢市・村山市2点、新潟県大和町1点、福井県福井市・武生市3点、三重県大安町・朝日町4点、滋賀県米原町・近江町9点、愛媛県西条市1点。

 これらは、他の米と混ざらないよう仕分けされ、出荷取扱業者等の倉庫に保管されているが、最終的には農水省が買い上げ、工業用のりなどの非食用として処理する。

 イタイイタイ病の原因として知られるカドミウムは、体内に蓄積すると腎障害を起こす恐れがあることから、食品の国際規格を決めるコーデックス委員会ではカドミウム残留基準を0・2ppmにするように求めている。(04・1/30)

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林野庁、森林のもつ「癒し効果」活用の産学官連携による研究会設立へ。

 森林浴という言葉が定着し、民間レベルで癒しの空間づくりなど、森林効果を利用する動きが多様な価値観や取り組み方法で行なわれるようなってきたが、林野庁は、森林が人間の体に与える癒やしの効果やストレスへの影響を解明する産学官連携による「森林セラピー研究会」を発足させることを決め、1月26日に設立準備会を開いた。
 今後は公開シンポジウムなども実施するほか、高齢者や障害者らの健康維持・管理の指導に当たる新しい専門職「森林療法士」の創設に向けた検討も行なう。

 今後の具体的活動は「森林の快適性増進効果や療法効果については、医学的な解明が現状では不十分であり、客観的かつ科学的な分析にもとづく効能の評価と療法メニューの確立が求められている」との認識で「森林療法における医療的な課題の解明」「森林療法関連品目の基礎的研究」「森林療法資格の検討」などを主な柱にしている。

 方向性として林野庁では、「香り・音・風景など森林の構成要素が、人間の生理的心理的効果に及ぼす影響を医学的に検証・解明し、それらを基に効果的な森林療法メニューと最適森林環境を創出する」「森林療法効果が得られる関連品目について、産学官連携による基礎的な分野の共同研究を行ない、森林の音や映像を主体としたCD、DVDの制作、森林の香り成分を含んだサプリメント等の食品開発、木材が放つ触感・温感をもつ生活関連品目の開発などを行なう」「また、将来的な目標として、森林療法の国民への普及や効果的な療法を実践・補助する森林療法資格での森林療法士の創設や自然療法の利活用を推進するため、健康保険制度の適用可能性等について検討する」としている。

 しかし、本来、自然の力というものは、科学や医学をもってしても及ばない大きくて奥深いもの。解析や分析することも必要ではあるが、狭義なパターン化に陥らず、人智の及ぶ限界を謙虚に認め、その森林の潜在力に身を委ねてみることの方が、まずは肝要のようだ。(04・1/27)

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ヒトへの高病原性鳥インフルエンザ感染および鶏への感染拡大で、日本、鶏肉禁輸も拡大。

 2004年になってアジア各地で猛威をふるっている鳥インフルエンザだが、タイでの鳥インフルエンザ発生および高病原性鳥インフルエンザの感染者が出たことを受けて、農水省は1月24日、タイ産鶏肉などの輸入禁止を発表した。

 また、中国で鳥インフルエンザの発生が確認され、1月27日には、中国からの鶏肉などの輸入も停止した。

 農水省は家畜伝染病予防法に基づき、鳥インフルエンザが発生した国・地域からの鶏肉とその加工品などの輸入をすべて停止しているが、禁輸は、韓国、台湾、香港、マカオ、イタリア、タイ、インドネシア、カンボジア、ベトナム、中国、ラオス、パキスタンの12カ国・地域に拡大した。

 2002年実績での日本国内の鶏肉消費量は173万トンで、国内で消費する鶏肉類の約3割は、タイや中国などからの輸入だ。 (04・1/27)

●タイでは、「2003年12月初め、国立研究所で鶏の検体から鳥インフルエンザウイルスが検出されていた」との関係者の証言が報道され、「経済への悪影響が広がるのを恐れて政府が事実を隠していた」とする「隠ぺい疑惑」も持ち上がった。また、 タイの農業協同組合省は、2003年11月21日以降で85万羽が処分されたと発表していたが、保健省がヒトへの感染を確認した1月23日には、処分した鳥は約710万羽に上ると大幅に修正するなど、タイ政府のパニックぶりも表面化した。また、タイ市民も鶏肉を避け始め、市場では売り上げが激減している。

●鳥インフルエンザウイルス拡大の次の懸念は豚だ。豚は、人と鳥のウイルス両方に感染することが知られている。鶏や豚などを同一の空間で飼っている場合、鶏から豚へと感染するケースも考えられ、豚が感染すると体内で遺伝子が変異してさらに強い感染力を持ち「新型インフルエンザ」として人の間で大流行する懸念がある。このことから、WHO(世界保健機関)は今後の動向を注視している。日本国内では養鶏と養豚はかけ離れた形態で営まれているため、その可能性は極めて低い。

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クローン牛受難、一般流通は人気なしで生産中止傾向。

 遺伝子操作によるクローン牛について疑問が多いなか、受精卵クローン牛の一般流通が暗礁に乗り上げ、生産振興事業から撤退する自治体が出始めた。

 80頭が産まれてこれまで20頭が食肉処理された受精卵クローン牛が最も多い北海道は、最初の数頭は道内の肉店で販売したものの、以降は敬遠されて流通業者も取り扱わず、今では研究目的に限られていることから、受精卵クローン牛の取り組みへの見直しをはじめた。
 そして、長野県では、1996年度に始めた受精卵クローン牛の生産振興事業を2003年度いっぱいで中止することを2004年1月15日に決めた。

 受精卵クローン牛は、長野県では畜産試験場で4頭が誕生し、2頭が食肉処理されたが、1頭目はイベントで試食販売されたものの、消費者には浸透せず、2頭目は買い手がつかなかった。その後、流通ルート確保の見通しが立たない状態になったことから「技術的には普及できるめどが立ったものの、これ以上事業を続けてもメリットが見込めない」との判断で、事業そのものの中止が決まった。

 農水省は、親と全く同じ遺伝子を持つ「体細胞クローン牛」については出荷自粛の姿勢だが、受精卵クローン牛については流通を促しており、1980年代後半から、受精卵の細胞分裂初期に別々の卵子に細胞を分けて移植し、同じ遺伝子のクローン牛をつくるという受精卵クローン牛の研究が全国で進んだ。

 クローン牛に関しては過去に、表示のないまま市場に出回っていたことが表面化して問題になり、消費者から疑問の声が上がったことがあった。この時、農水省は、新潟県産の受精卵クローン牛(黒毛和種とホルスタイン種の交雑種)1頭の肉(約352キロ)をクローン牛肉と表示して試験的に販売。クローン牛が生まれる仕組みや安全性などを説明したパンフレットを配布したりと躍起になったこともあった。
 しかし、現実には消費者に支持されていない受精卵クローン牛は、全国和牛登録協会でも登録を認めておらず、流通の壁は厚いままだ。通称「Cビーフ」の呼び名もある受精卵クローン牛が全国でどの程度流通・消費されているかの詳細は不明だが、今後も人気がないことだけは確かなようだ。

 牛肉は今、狂牛病=BSEがらみで再び敬遠気味になっているが、クローン牛に関する消費者の意識は、これらと同等、もしくはそれ以上の敬遠ぶりなのかも知れない。(04・1/15)

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国内の養鶏場で79年ぶりに毒性の強い鳥インフルエンザが発生。

 山口県阿東町の採卵専門養鶏場で、毒性の強い「高病原性鳥インフルエンザウイルス」が検出された。同ウイルスが国内で検出されたのは1925年以来79年ぶりという。

 この鳥インフルエンザウイルスは、2003年に韓国でアヒルやニワトリに被害が拡大したA型インフルエンザウイルス(H5N1)と同じ「H5」型に属し、人に感染することもあるが、山口県が従業員6人と家族5人に簡易検査をしたところ、陰性の結果だった。また、人や物の流れを含め、韓国との間に接点はまったくないという。

 発生場所は、山口県阿東町で約3万4000羽の鶏を飼育する採卵専門の養鶏場で、2003年12月28日頃から鶏の死亡が発生し、1月6日には約6000羽も死亡するという事態になった。

 このため、山口県などが調査したところ、鳥インフルエンザのウイルスが確認された。

 国の防疫マニュアルに基づき、同養鶏場の鶏は処分され、発生農場から半径30キロ以内の農場の鶏や卵などの出荷も停止される。

 鳥インフルエンザは、人への感染としては、香港で、1997年の18人が感染し、うち6人が死亡、2003年に2人が感染し、1人が死亡した例や、2003年のオランダで獣医師が死亡した例などがある
 これらは、生きた鶏との接触による感染で、鶏肉や卵を食べることによる感染は今のところ確認されていないことから、農水省などでは「過度な警戒は必要ない」としているが、山口県教育委員会は、問題となった卵を学校給食に使用しないように関係者に通知した。

 同養鶏場は6棟の鶏舎を用意して2003年4月開業。福岡県内にある自社の育成農場から当初約6000羽を導入し、3カ月おきに5000〜6000羽を各鶏舎に入れた。福岡県に本社を置く同養鶏場の代表は「農場が野鳥が出入りできる構造だったため、野鳥から感染したのではないか」との見方を示しているが、今後、農水省は感染ルートの調査を進める。

 最も理想的な養鶏は「平飼い」といわれるもので、鶏が元気に外で運動し、自然の餌をついばむ。しかし、数万羽規模の養鶏は、ウインドレス鶏舎や密集飼い鶏舎などで、抗生物質や着色剤入の飼料や配合飼料を与えら、運動もせずにただひたすら卵を産む。こうした飼育形態も災いし、鶏に突然の大量死をもたらした病原ウイルスの強さもさることながら、密集飼いの抵抗力のない鶏だったからこそ、感染しやすい環境が不運にも整い、その集団が鳥インフルエンザに感染した、とも言えそうだ。

 過去、香港では97年から98年にかかけて鳥インフルエンザが大流行し、このウイルスに感染したとみられる6人が死亡。2001年5月には新型ウイルスが発見され、120万羽以上が処分された。
 また2003年3月にオランダの採卵鶏農場で「鳥インフルエンザ」が発生したため、オランダ産鶏肉に対して輸入禁止措置が講じられ、アメリカ・コネチカット州の養鶏場でも「鳥インフルエンザ」が発生したことから、農水省は2003年3月にアメリカ産鶏肉のすべても輸入停止したことがある。
(04・1/12)

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