コラム

●ガーデニングブームに内在するもの●

 空き地をはじめ庭空間や室内空間に、緑や草花を植えたり置いたりのガーデニングが静かなブームになっている。

 ただ単に、庭に草花を植えるという行為とは違い、個人の創造性を膨らませて、自らのアイデアで演出するというクリエイティブさがうけている。切り花が主体だったフラワーアレンジメントとも違い、部分の演出型から全体空間の演出や創造型に、興味が深まってきた。

 また、この空間創造には、これまでの庭づくりとは大きく違った要素が存在するようになった。それは、草木の美しさを愛でるという行為をこえた草花などが元来持つ「セラピー(癒し)」的なもの。

 その要素は、古くからある草花そのものが持つ効用の例としての「ハーブセラピー」などから、草花を育てる・草花に接する事そのもので発生する効用としての「園芸セラピー」などまで、幅広い。

 このガーデニングブームは、表面では「創造型」や「癒しの演出」がジワジワと浸透している事を示している。が、それと同時に内面では、「人間そのものは動物であり、元を辿れば植物である」「自らを癒しの空間に置いて動植物として再生させたい」という本能的な、体内に存在している「植物」の息吹が、この世紀末の時代にあって、自らが気がつかない内に、静かに目覚めはじめている事も物語っている。

 そして人は、そろそろ気付かないといけないのかも知れない。生き物がいのちを謳歌することの本来の素晴しさを。そして、植物も微生物も鳥も動物も人も、大自然の一員として生きながら生かされている事に。人間は、「万物の霊長」などという奢り高ぶった存在として自然の中で突出して生きているのではなく、ましてや人間の価値観で自然を保護する事など出来るものではなく、自然に保護される恩恵の中で、その一員として生かされている存在である事を。

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