番外コラムバックナンバー

●だんご三兄弟の怪●

 『だんご三兄弟』という歌のCDが発売と同時に売れ行き大好調だという。
 一部では『泳げタイ焼くん』を超す勢いが期待されるとも言われている。これを耳にしながら、ある種の「怪」と「恐怖」と「不思議さ」を率直に感じざるを得ないのは、私たちだけだろうか?

 これまで歌は「こどもが自然と口ずさむようになればヒット間違いなしで、いい曲だ」とされていた。いしだあゆみが歌った『ブルーライト横浜』もジュディーオングが歌った「♪何とかが蝶〜♪」も、(ピンクレディーの『UFO』も)、まさにこどもまで口ずさむ歌になり、いわゆる大ヒット曲になった。勿論、「♪まいにちまいにち♪鉄板の〜上で焼かれて♪」も、そして、『だんご三兄弟』のメロディーでは先輩格の『黒ネコのタンゴ』もそうだった。
 (その後、音楽のヒットという側面だけで見れば、ヒットの仕方は様変りし、様々なケースも誕生させているが、その大半は、若者中心に支持されてミリオンセラーを記録するという一つのパターン化されたものにもなっている。しかしこれは古くから言われる「国民的大ヒット」の領域には入らず、ミリオンセラーを記録したとしても年齢層に限定されたヒットの仕方だった。やはり「国民的大ヒット」というものの基本には、「こどもまでが口づさむ歌になれば」という面があることは、否めないようだ。)
 しかし今回のこの歌の場合は、それらの現象とは大きく違った。なぜなら、過去の例は、(古くは)どこに行っても自然に街角のどこかからそれらのメロディーや唄が聴こえてきて、ある日、ボンヤリと気が付かない内に心に染み込んでいるメロディーを口ずさんでいるという、ほとんど自然現象のような浸透の仕方だった。(最近では、テレビCMやテレビドラマなどで耳にする機会が多い分、馴染みも増して浸透度も高くなるというものや、詳細にケース分けすれば、まだまだ沢山の例に分けられるが、それは別の領域に譲るとして)、今回の『だんご三兄弟』の浸透の仕方や現象は、過去のケースとは大きく異なっているから「不思議」で「奇妙」で、珍なのである。
 そして最も奇妙なのは、毎日決まった時間の決まった番組の中だけで、幼児たちや幼児に関わる大人たちが、好むと好まざるとにかかわらず耳にし、それが刷り込み現象のように脳に、聴覚に刻み込まれ、記号のように反応して歌うようになってしまったという点である。
 (例としての引き合いには「拒否反応」が多いとは思うものの、端的に表現すれば適切な例ではないにしても)、それは、あたかもオウム信者がヘッドギヤーを付け「修行するぞ修行するぞ」などという教祖の言葉を刷り込み現象のように唱える状態に極めて近いことを直感する。

 このCDの売れ行き好調をリポートしたテレビニュースの一コマで「この歌のどこがいいですか?」の問いに、「軽快で覚え易くて楽しい」と、それを口ずさむこどもを持つ母親が、単純かつ明快に返答していた。

 これを「ちょっと待って、これは洗脳現象(その言葉に違和感を覚えるのであれば『刷り込み現象』あるいは『これまで身体のどこかに刷り込まれていたものが共(響)震して、呼び起こされた』と置き換えて読まれたし)に近い反応だ」と感じ、不気味さや奇妙さを覚える人は、いないのだろうか?(そして、この奥にある方程式化された緻密さに対し、見事さを感じる前に、小ざかしさやうっとうしさを感じる人はいないのだろうか?)

 そう感じるのは私たちだけなのだろうか? そして、そう感じる私たちが、どこか変なのだろうか?

(1999年3月5日)

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これに対しては、
異論や反論、意見なども多いだろうと思い、
急きょ「だんご三兄弟」BBSフォーラム
を設定し、意見書き込みをお願いしました。
そうしたところ
以下のような意見が寄せられました。

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だんご三兄弟の歌は子供達が喜んで聞いていました。こんなにヒットするとは思っていませんでした。CDを発売当日買いにいったのですが売り切れでした。
マスコミが騒ぎすぎている感じがします。(こぶたちゃん)

このヒットの背景には、確かにこの編集部の方が感じる奇妙なものがまったくないとも言えないし、それに加えて、ぼくが思うのは、いかに幼児の多くが「おかあさんと一緒」のテレビで子育てされているかが伺い知れるし、あの種の番組に依存しているおかあさんがいかに多いかっていうのも分かる。
そしてもうひとつあるのは、いま多くの人がヒットするものの出現を待望していて、それらしきものが出現すればすぐに乗りたいっていう心境が潜在していて、今回は、その心理に何かがうまく触れて、こんな状態になったような気もしますね。
でも小室ファミリーの歌ばかりが流行るよりは、こんなのもいいんじゃないでしょうかね。(あんぱんさん)

この分析って、”レコード時代”のもので、かなり古いんですよね…。オリコンとか日経エンターテイメントを読むまでもなく、ここ10年くらい、このような音楽の売れ方はしなくなっていることは、常識のはず。
レコード時代と異なり、現在は割と100万枚以上売れる曲が多く出ます。もう「街角から唄が流れてきて…」という時代じゃないんですよ。
今回の「だんご3兄弟」を「刷り込み」と書いていますが、ドラマやCMのタイアップと同じようなことであって、大げさに、オウムだの洗脳だのと述べるのは、論証がずれていると思いますけど。
それに、このような説明では「おかあさんといっしょ」では他にも毎日歌っている曲がたくさんあるのに、何故この曲だけが、という説明が付かないんじゃないですか。(音楽評論するなら勉強してさん)

「だんご3兄弟」は、われわれ(おかあさんといっしょを見るくらいの子を持つ親)の間では放送当時から話題になっていました。この歌は同番組の1月の歌です。わたしのように会社勤めしている親の場合、専業で家にいらっしゃる方に比べて見る確率は極端に低いはずですが、それでも話題になっていました。
わたしもこれがなぜなのか、いろいろ考えていました。
子供向け番組の中に大人にも面白い(わたしが思うにあの歌はどちらかというと大人のほうが面白い)ものがあり、大人が口ずさんだり、ビデオに録っていたら繰り返し見たりとしていれば、自然に子供も耳にする機会が多くなり・・・というのが、今回のブームの土壌ではないかと思います。うちの子は長男ですが、すでに大きな子がいる家ではそれぞれの子を発信源としてさらに広がっていくという感じなのではないかというのが今のところの考えです。
わたしが「洗脳に近い」と思ったのは昨年はやったモーニング娘の「もいちど好きって聞かせてほしい〜」という歌です(笑)。(ひろさん)

「だんご三兄弟」がなぜこんなに大ブレークしているのかは、音楽評論的な側面だけじゃ言えないと思う。僕が思うには、これは刷り込み現象はあるだろうけれど、洗脳現象ではなく、DNA反応現象の面もあるのでは、と思う。
むかし親のおなかの中で聴いたメロディーが、今の親やそのこどものDNAにあって、それが反応した。そうだとすると、「おかあさんといっしょ」では他にも毎日歌っている曲がたくさんあるのに、何故この曲だけが、というのもある程度説明がつく。つまり、それらの多くは「DNAが反応しなかった」からブレークしなかった。
ところで僕は「パジャマ、ぱじゃま、パジャマ」を歌うおねえさんが好きだ!(フリーダムさん)

考え過ぎ。
そんな、歌の持つ力をセーブするのも人間なんだから。危ないかも、って気付く人がいったってだけでいいんじゃないの?そんなん言ってたら、心地いい曲作んな、ってこっとになんない?音楽は本来楽しいもんでしょ。
それをね、つい口ずさみたくなるからって、すぐ洗脳と結びつけるのはどうかなって思うな。ま、そういう可能性もあるってことを、意識するっていうのは、ある意味、大切な事だとはおもうけどね。(わたしさん)

楽しい曲だと思います。ほのぼのして。だけどおよげたいやきくんの時代に育った私たちはだんごごときにおいこされたくないです。(みーさん)

このまま、およげたいやきくんの記録を抜くのは時間の問題でしょう。毎日繰り返し歌い聞かせたから売れた=『洗脳状態』と言うのは私の分析論とだいぶ違います。
私の分析論ですが、純粋に子供心やその子供を持つ親のハートに強いインパクトを与えた結果だと思います。はじめからヒットを狙った訳でもなく、結果としてCD化(売れる見込みもあったと思いますが、シャレのつもりも含まれたいたと思います)で数字になって一般の人に評価しやすい形で知れ渡ってしまったのではないでしょうか?
とにかく、一度火のついたブームがマスコミの力を借りながら、どこまで広がり続けるかは非常に興味深いものがあります。(だんごに続けと別の会社が第2弾を考えているかもしれませんネ)
あゆみお姉さんと、けんたろう兄さんが3月いっぱいで交代という事が大変残念です。(でも紅白で会える様なのでそれもまた楽しみですが..)(いとよしさん)

わたしも何でこんなにブレークしているのだろうか?って、ぼんやりと不思議がっていた一人です。昨日ひさしぶりにカラオケに友達と行ったら、カラオケにもありました。みんなで(4人)で「うたっちゃおうか」といって歌いましたが、途中でやめました。
何だか不思議と中年の人と一緒に無理やりナツメロを歌っているような感覚になってしまいました。ほかの3人は「わざわざカラオケで歌うような曲じゃないね」って言ってました。
多分私たちの親が若い頃聴いて流行った歌のメロディが、私たちの感覚に、このコラムでいっている「刷り込まれて」いて、それが、ここのフリーダムさんの書き込みにもある「DNAにあってそれが反 応した」。そして、「『おかあさんといっしょ』では他にも毎日歌っている曲がたくさんあるのに、何故この曲だけが、というのも・・・それらの多くは『DNAが反応しなかった』からブレークしなかった」というのを目にして、う〜ん、そうかも知れないって、ちょっぴりですけど思っているところです。(べあっちゃさん)

今年一月、3歳になる親戚の男の子の守りをしている時、NHKのこども番組からその歌は流れてきた。もちろんその時初めて耳に、そして目にしたのだが。
子どもは別にその歌が気にいっているわけでもなく、おもちゃを手に、ウルトラマンガイアの歌を口ずさんで部屋の中を走り回っていた。気になったのは、その歌を初めて耳にした私の方だった。
「こんな片隅の番組で(失礼ながら正直な気持ち、私にとっては「おかあさんと一緒」はそんな感覚の番組だった)、使い古されたセロリーの曲や歌詞をつくってがんばっている人がいるんだ」と、ふとそんな思いがめぐった。がんばっているという思いの中には、「創造力もなく、いわば少々ずるく気弱に」「しかし、この業界でいきるために必死に」という印象が多く含まれ、胸が少し痛んだ。
そして三月、巷で沸き起こっているこの「だんご3兄弟現象」に触れることになるのだが、その時の第一印象は「えっ、あの歌か」と、一度しか聴いていないにもかかわらず、あの一月のあの瞬間に感じた思いまでがメロディーを伴って蘇り「あれをつくった人もこれで一花咲いてよかったなあ」と、他人ごとながら安堵したものだった。
しかしこれがオソマツな安堵で、ある日のニュース番組で紹介していた作者像は、「CM業界では売れっ子」の「気鋭」であった。もう一花も二花も咲いているのである。私は、あの時感じた胸の痛みや安堵さを苦々しく思い出し、「まんまとやられたな」と実感した。
そして先日、その親戚の男の子の母親と電話で話す機会があり「いま彼は何の歌を日常口づさんでいるか?」と聞いてみた。すると母親は「ウルトラマンガイヤ」と明快に応えた。そして「だんご3兄弟」については、「あれは大人受けする歌でしょ、やっぱり子どもはイメージがどんどん膨らむガイヤみたいなのがいいみたいよ」とその母親は言っていた。私はその言葉を聞いて少しほっとした。(れいやーさん)

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この後、アクセス過剰で
「だんご三兄弟」BBSフォーラムが掲示板状態
もしくは伝言板状態になる気配をみせ、
サーバ負荷も増加の一途。
一旦フォーラムを終了させました。

3月5日〜17日までのこのページへのアクセスは、
58800でした。

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●だんご三兄弟の勢い●

 当初の思いとは隔世の感があるほど、火が付いたらまさに止まらない状況に「だんご」の世界は突入した。

 最初のコトの起こりとはまったく無関係に、だんご三兄弟は、別の勢いに乗って「どうにも止まらない」状態にもなった。「刷り込み現象」に端を発しようが発しまいが、そんな些末なことは既にどうでもいいかのように、「だんご」は、話題という別のレールに乗り移り、怪進撃を開始した。

 話題が話題を呼び、新しいマーケットをつくり、便乗商法も何も、まさに「なんでもあり」の「乗った者勝ち状態」に完全に移行した(ブームが去ると共に最もそれらは陳腐化するものではあるが)。その間、わずかに10日程度である。まさに怒涛の猛スピードで、このキャラクターは世のスターダムにのし上がりつつある。否、のし上がった。

 まさに日々流れ、状況は動く、という典型を「だんご三兄弟」は提示しているかのようだ。そして私たちも、当初感じた奇妙さをどこかに持ちながらも、ほんの数日でブームと化し、まったく別の領域に突入した「だんご現象」を前に、唖然として「語るべきものはもう失せてしまっている」ことを痛感するのである。他人事ながら勢いとは、まさにすごいものだ。

 しかし、加えてまた思うには、勢いに乗った「だんご現象」は意外とシラケる瞬間も早く、勢いに乗るスピードと同じように空しく色あせる日が訪れるのも近いということである。

 どうでもいいことだが、これもまた他人事ながらも、そう感じる私たちが、どこか変なのだろうか?

(1999年3月17日)

※その後、すさまじい攻撃を受け、アクセス過多で、このページをサーバから外さざるを得なくなりました。が、『勢いに乗った「だんご現象」は意外とシラケる瞬間も早く、勢いに乗るスピードと同じように空しく色あせる日が訪れるのも近いということである』と記したとおり、あとは皆様ご存知の経過をたどりました。ヨカッタヨカッタ。

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