スポットニュース


ダイオキシン汚染対策で国の責任を問い、大阪府能勢町のゴミ焼却施設での元作業員6人が提訴。

 国内最悪レベルの高濃度のダイオキシンが検出された大阪府能勢町のゴミ焼却施設「豊能郡美化センター」の問題で、そこに勤務し、血液から高濃度のダイオキシンが検出された元作業員6人が99年12月24日、「行政の対策の遅れが原因で強い健康不安にさらされている」として、国と大阪府、炉を造った三井造船などに計5億3000万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。
 ダイオキシン対策で国の責任を問う本格的な提訴は初めて。

 ダイオキシン汚染問題では、元従業員男性2人の血液から、高濃度のダイオキシンが検出されたこと(血液中に含まれるダイオキシンは通常、脂肪1グラム当たり20ピコグラムが平均的な濃度といわれるが、採取した血液100ccの分析調査では、2人はこの7〜9倍の値で、180ピコグラムと136ピコグラムだった)が明らかになっている。今回の原告にもなっているこの2人は、ダイオキシンの影響でがんや皮膚病になったとして、労災も申請している。
 提訴した弁護団は「他の原告の多くは現在、具体的な健康被害は確認されていないが、将来の危険は明らかなのに、事実上放置されている。訴訟を通じて問題提起したい」としている。

 訴えでは、厚生省は1984年に専門家による検討をした段階で、拡散対策を盛り込んだ97年程度の厳しい規制をすべきだったと主張。また、労働省や大阪府の対策も不十分で、焼却炉にも欠陥があったとしている。

 施設は現在、解体中で、住民が被害対策を求めた公害調停や三井造船などの責任を問う住民訴訟は係争中。労働省による作業員の血液検査でも通常の27〜40倍のダイオキシンが検出されている。(1999年)

BACK


スポットニュース


新築住宅には、やはり身体に悪影響をおよぼす「揮発性有機物質が大氾濫」の実態が、厚生省調査で判明。

 住宅の建材などから発生する化学物質が引き起こす頭痛やめまい、吐き気などの症状「シックハウス症候群」が問題視されている中、厚生省は、初めて実施した居住環境中にある揮発性有機化合物の実態調査の結果を99年12月14日に公表した。
 これは1997年度と1998年度の2年間で実施したもので、主に調査では、「シックハウス症候群」「化学物質過敏症」との関連が指摘されている化学物質44種類についてマンションを含む全国の住宅合計385戸を対象に室内外で測定、健康に関するアンケートも実施した。

 室内濃度の最大値が高かったのは、接着剤などに含まれ中枢神経系に影響のあるトルエン、家庭用防虫剤に含まれ鼻の粘膜組織変化を引き起こすパラジクロロベンゼン、塗料などに含まれ神経作用のあるキシレン、溶剤に含まれ肝臓障害などを起こすクロロホルムなどで、クロロホルム、トルエン、キシレンは、WHO(世界保健機関)のガイドライン値を上回って検出された。特にクロロホルムは1997年度の調査で28%も超過、中にはガイドライン値の約120倍が検出された住宅もあった。
 厚生省が耐容平均気中濃度を定めているパラジクロロベンゼンは両年度とも5%前後上回る事例があった。
 また、築後3カ月までの新築住宅と中古住宅では、トルエンの室内濃度平均値が6倍を上回る例があるなど、一部の物質で新築住宅が高濃度の傾向にある実態が浮き彫りになった。

 全般的に室外に比べ室内濃度が高く、健康アンケートでは合計28人が目やのどの痛み、頭痛などを訴えていた。

 現在、厚生省が室内濃度指針値を示しているのは接着剤に含まれるホルムアルデヒドだけだが、多くの物質で 高濃度が検出された実態を重視した同省は、WHOガイドライン値が決まっている物質を中心に少なくとも9種類についてリスク評価を行ない、2000年春にも室内濃度指針値を設定して建築業界に対し、化学物質氾濫抑止の取り組みを促す方針だ。

 「シックハウス症候群」は、和製英語として日本で名付けられたが、これは、1980年代に欧米で問題化した「シックビル症候群」のような症状が、日本では一般住宅でもみられることから、称されるようになった。現在は特に、合板の接着剤に使用するホルムアルデヒドによる健康被害が問題になっており、壁紙の接着剤やフローリング床のワックス、防腐・防虫剤などに含まれる揮発性の高い有機化合物が主な原因とされている。(1999年)

BACK


スポットニュース


リサイクル法、紙とプラスチックの容器包装「識別表示」を義務付けしても、ペットボトルの回収が限界の現実。

 通産省・産業構造審議会の廃棄物・リサイクル部会は、2000年4月からの容器包装リサイクル法の完全実施に伴ない、新たにリサイクル(分別収集・再商品化)の対象となる紙とプラスチックの容器包装について、分別収集・再商品化の一層の促進を図るために、消費者にひと目で分かる識別マークを表示するよう製造業者に義務付ける方針を決めた。

 次期通常国会で再生資源利用促進法(リサイクル法)を改正し、2〜3年後の実施を目指しながら材質表示に自主的に取り組むよう促す。
 容器包装リサイクル法では、家庭などから出される一般家庭ゴミの低減と資源再利用のため、事業者による再商品化の仕組みを定めた。ガラス製容器やペットボトル、アルミ・スチール缶ですでにリサイクル表示は実施されているが、新たにデパートの包装紙、スーパーの買い物袋、菓子箱など、紙製容器包装全般と、生鮮食料品のトレーのようなプラスチック製容器包装を対象とする。

 飲料用紙パック製容器、段ボールなどは、すでに独自の回収方法が実施されているので除外する。輸入製品や多重包装のカップめんなどに関しても今後、専門部会を開設して、マークなど具体的なデザインを含め、来春までにとりまとめる。

 リサイクル義務はこれまで大企業に限られたが、2000年4月から実施される容器包装リサイクル法で、その義務は中小企業にも広がる。

 しかし、ペットボトルのリサイクルで、メーカーが再商品化を委託している「日本容器包装リサイクル協会」は、自治体の回収量に対してメーカー側の処理能力が不足して再商品化が追いつかずにいるとして、自治体に対し、来年度は申込量から一律約14%カットした量しか引き受けないと通知。リサイクル法が出来たからと言って、スムーズに物事が進むことはないという現実を、覗かせている。

 ちなみにペットボトルのリサイクルが始まった1997年度の回収量は、全国で約2万1000トンだったが、その後、分別回収が進むに連れて増加した。今年度は6万2000トンになる見込みだが、再商品化するのは5万7000トンが限度で、一部の自治体では、協会に引き取りを断られるケースも出ているという。
 来年度に関しては、自治体から寄せられた申込量は約8万4200トンだが、国が見込んだ再商品化の量は7万2700トンであることから自治体の申し込みから一律に約14%をカットした。

 通産省は「処理能力によって受け入れ量が決まるのはやむを得ない」としているが、リサイクル意識の高まりに比例して処理量も増える、しかし再商品化の量には限界がある、という基本的な問題は、意外と厄介な課題のようだ。(1999年)

BACK


スポットニュース


競売物件の占有屋対策で最高裁が初判断。

 不動産などを「担保」として差し出して融資を受けた側が、返済不能あるいは破産になり、その処理策として競売物件にした、あるいはなったにもかかわらず、「占有屋」と称されるブローカーなどが不法に居座って、物件の買い手がなかなかつかないという事態が多発している中、最高裁大法廷は99年11月24日、「不法占拠者に対して抵当権者は、物件の所有者に代わって妨害を排除できる」という初めての判断を下した。

 これは、土地・建物の所有者に代わって金融機関などの抵当権者が、競売不動産になった土地や建物を不法占拠している者に明け渡しを求めることができるのかどうかが争われた訴訟の上告審判決で示されたもので、「抵当権者には不法占拠者を排除できる権限はない」 とした1991年の最高裁判例を変更し、「不法占拠によって競売不動産の売却価格が下がるおそれがあるような場合には、抵当権が侵害されたと評価できるため、抵当権者は物件の所有者に代わって妨害を排除できる」とする判断を示した。
 今回の訴訟で大法廷(裁判長・山口繁長官)は、抵当権そのものに関しては「不動産の交換価値から他の債権者に優先して弁済を受ける権利であり、抵当権者は原則として、不動産の使用について干渉できない」との原則を確認した上で、「抵当不動産に第三者が不法占拠していることが抵当権の侵害にあたるか」については、「競売手続きの進行が害されて適正な価格よりも売却価格が下がるおそれがあるような場合は、抵当権に対する侵害と評価できる」と指摘。「抵当権者は、価格が下がった状態を是正するために、所有者に代わって妨害を排除できる」とした。また、「抵当権者が直接、占有の排除を求めることが可能かどうか」については、「不法占拠により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられているような場合には、抵当権に基づく妨害排除も許される」と述べた。

 今回の訴訟で明け渡しを求めていたのは、愛知県日進市の不動産に抵当権を設定して所有者に2800万円を融資した国民生活金融公庫(旧国民金融公庫)で、返済が滞ったため1993年に競売しようとしたが、債権者にまた貸しされ、夫婦が入居して担保不動産に居座ったため買い受け人が現われなかった。一、二審ともに占有者に立ち退きを命じた判決を下したが、占有者側が最高裁に上告していた。
 上告していた占有者側は91年の最高裁判例に基づき「抵当権は所有権と異なり、物件がどう使われるかには干渉できず、占有者がいるからといって抵当権が侵害されたとはいえない。抵当権侵害を理由に明け渡しを請求することは理屈に合わ
ない」と主張すると共に、民事執行法が96年に改正され、競売を申し立てようとする場合には立ち退きが事実上認められるようになったことを挙げ「債権回収妨害に対抗するために判例を変更する必要はもはやない」と指摘していたが、問題の不動産は、上告中に競売が済み、占有者も退去したため、上告審では「法律論」だけで争われる形となっていた。

 この初判断は、社会問題化する「占有屋ブローカー」対策や多くの競売障壁を抱える金融機関に関しては吉報のようだが、競売不動産になった建物などで今も明け渡しを拒否し、再建を目指して自らの意志で努力している人たちにとっては凶報のようだ。(1999年)

BACK


スポットニュース


幼児虐待の調査で「虐待死」の実態が浮きぼりに。

 熊本大学の教授らを中心とする厚生省の研究班が、全国の法医学研究室が担当した法医解剖例から「虐待死」とみられる18歳未満の子どもについて実態調査をしたところ、1992年から96年までの5年間に、虐待で死亡した子どもが全国で245人にのぼったことが判明した。
 そのうち、身体的虐待が195件で79.6%占めた。食事を与えなかったり放置したりするなどの無視行為のネグレクトは28件(11.4%)、車内放置は22件(9%)だった。

 平均すると1年間に約40人が身体的虐待、約10人がネグレクトと車内放置でそれぞれ死亡。死因では、頭部外傷が46.1%と最も多く、窒息死(17.6%)、熱中症(8.2%)、全身衰弱(6.9%)、腹部外傷(6.5%)、外傷性ショック(5.7%)と続いた。
 年齢的には、身体的虐待の場合は、4人に1人が零歳児で、3歳以下が4分の3を占めた。ネグレクトは半分を零歳児が占め、車内放置による零歳児の死亡は7割弱にのぼった。
虐待をした者は、実母が最も多く25.7%、続いて実父(12.7%)、義父(7.8%)、実父母(4.9%)の順。祖父母による身体的虐待で死亡した子どもも5人いた。

 また厚生省の調べでは、児童相談所が把握した昨年度の幼児・児童の虐待死は41人にのぼり、うち8人は児童相談所が関与しながらも亡くなっていたことも分かった。
 民間団体などの調べでは、無理心中や発作的殺人も含めると98年の1年間で虐待死は131人にのぼっている。
(1999年)

BACK


スポットニュース


戦後最悪の愚策「地域振興券」、やはり経済効果は無かった。

 「戦後最悪の愚策」と批判されながらも「消費活性化のための切り札だ」と7000億円の予算で政府が配布した「地域振興券」について、中小企業の8割以上が「効果はなかった」と実感していることが、全信連総研が発表したアンケート結果で明らかになった。
 全国の信用金庫が99年6月初めに1万6000社を対象に聞き取り調査を実施し、1万4071社から回答を得て、7月8日、全信連総研が発表した。
 全国の中小企業の5割以上が「売り上げに影響がない」と答え、3割近くが「ほとんど影響がない」と答え、地域振興券の経済効果の実態は、予想通りほとんど無いに等しい結果になった。
 ちなみに地域振興券について「効果が大いにあった」と答えたのは0・7%だった。経済全体への影響をめぐる回答でも「個人消費を刺激して景気を上向かせる」は1・7%だった。
(1999年)

BACK


スポットニュース


引火事故多発。使い終わったスプレー缶、ゴミに出す時は「穴を開ける?開けない?」あなたならどうする?

 ゴミに出すため、使い終わったスプレー缶の穴を開けている最中に引火事故になり、やけどをするケースが増えている。環境対策で、スプレー缶の噴射剤がフロンガスから引火しやすいLPG(液化石油ガス)に切り替わったことが主因で、台所などで穴を開けた時に噴き出したガスが、近くのコンロの火や湯沸器のタネ火などに引火。主婦らがやけどをして入院する事故が増えている。
 全国の自治体では、残留ガスによるゴミ収集車の引火事故防止のため「使い終わったスプレー缶をゴミに出す時は、穴を開けて」と指導しているのが主流。そうした中で東京都など首都圏では「中身を使い切り、穴を開けずに捨てて」と方針転換する自治体も出てきた。

 東京消防庁によると、スプレー缶や携帯用ガスボンベの引火事故は「穴開き」「穴なし」にかかわらず、LPG缶が普及し始めた1989年頃からだと現在は30倍の120件強。穴開け時の引火事故は過去5年で43件だが「通報のない潜在的な事故は多いはず」とみる。

 LPGのスプレー缶への使用は、オゾン層破壊の原因といわれるフロンガス廃止に伴なって10年程前から解禁された。そして今やスプレー缶の8割がLPGなど可燃性ガスになっている。しかし、それにつれてスプレー缶の穴を開けている最中での引火事故が増加傾向に。スプレー缶は極力使わないに限るが、使った際には、穴を開けるか、開けないで出すか? 今後、自治体や家庭などでも論議を呼びそう?(1999年)

BACK