スポットニュース
ゴミ焼却施設「豊能郡美化センター」元従業員、ダイオキシン汚染での労災申請、認定されず。
国内最悪レベルの高濃度のダイオキシンが検出されて問題になった大阪府能勢町のゴミ焼却施設「豊能郡美化センター」(現在、解体中)の元従業員2人が、血液から高濃度のダイオキシンが検出されたことから、「これまで重い皮膚病やガンになったのはダイオキシンが原因」として申請に踏みきった労災認定で、大阪市の淀川労働基準監督署は3月15日、労災と認めない決定を申請人側に通知した。
申請していたのは、同センターを退職後、2度のがん手術を受けた男性と、皮膚病に悩む男性で、健康不安が続くため、1月16日に血液100ccを採取して、大阪府枚方市の摂南大学薬学部に分析を依頼した。
血液中に含まれるダイオキシンは通常、脂肪1グラム当たり20ピコグラムが平均的な濃度といわれるが、分析調査では、2人の元従業員はこの7〜9倍の値で、180ピコグラムと136ピコグラムだった。
また、労働省の調査でも、2人の体内からは通常の16〜18倍に上るダイオキシンが検出された。ダイオキシンはガンや皮膚炎を起こすことが分かっていることから、2人は99年3月、労災を申請。しかし、淀川労働基準監督署は「施設内での作業で体内にダイオキシンが蓄積したと認められるが、過去の発症例に比べて濃度が低く、因果関係は認められない」として、労災の認定を却下した。
ダイオキシンをめぐる全国初の労災申請は、原発現場での作業員の被ばくによる労災申請同様、因果関係立証の難しさを示すものとなった。2人は当時の同僚ら4人とともに、健康被害や将来の健康不安を訴え、国や焼却炉メーカーなどに5億3000万円の損害賠償を求める訴訟も起こしている。(2000年)
損害賠償を求める訴訟
元作業員6人は99年12月24日、「行政の対策の遅れが原因で強い健康不安にさらされている」として、国と大阪府、炉を造った三井造船などに計5億3000万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こしている。
提訴した弁護団は「他の原告の多くは現在、具体的な健康被害は確認されていないが、将来の危険は明らかなのに、事実上放置されている。訴訟を通じて問題提起したい」としている。訴えでは、厚生省は1984年に専門家による検討をした段階で、拡散対策を盛り込んだ97年程度の厳しい規制をすべきだったと主張。また、労働省や大阪府の対策も不十分で、焼却炉にも欠陥があったとしている。
施設は現在、解体中。労働省による作業員の血液検査でも通常の27〜40倍のダイオキシンが検出されている。
※「豊能郡美化センター」の高濃度ダイオキシン汚染関連記事:「豊能郡美化センター」の解体作業員の血中から、高濃度のダイオキシンを検出。
※「豊能郡美化センター」関連記事:「豊能郡美化センター」の高濃度ダイオキシン汚染問題で、公害調停が成立。BACK
スポットニュース
法曹界も不正の片棒かつぎ、弁護士が整理屋にセッセと上納金を払う。
多重債務者を相手にした全国最大規模の整理屋組織・大谷グループ(金融会社「イプシロン」)の脱税事件で、所得税法違反容疑で逮捕されたグループ代表らが隠したとされる約6億5600万円の所得は、東京都内の4弁護士が不正な経理操作で上納した金であることが3月2日、東京地検特捜部の調べで分かった。
弁護士らは、グループから多重債務者の紹介を受けた見返りに顧客1人につき12万円余を紹介料として上納。また、多重債務者が返済を完了して弁護士が成功報酬を受け取ると、グループは弁護士に「儲けたのだから支援料を払え」と謝礼の支払いを要求。調べでは、大谷グループは約10人の弁護士と違法に提携していたとされるが、このうち4弁護士が上納金などを支払っていたという。
弁護士は、経理上では「調査費」の名目で上納金を捻出して、グループが設けた架空の調査会社名義の口座にセッセと振り込み、整理屋の不正蓄財を増殖させていた。
また、整理屋は提携先の弁護士に対し、指定した金融会社から紹介された多重債務者以外からは依頼を受けないよう指示し、この見返りとして、弁護士に2000万円以上の年収を保証するほか、多重債務者が支払う弁護士報酬や預かり金を弁護士から徴収し、その大部分を、別の弁護士に事務所の開設費用として貸し付けていたことも判明。ダイレクトメールや電話を使って集める多重債務者は毎月300人近くに上り、大谷グループはこれを弁護士事務所に振り分け、弁護士が勝手に債務整理を手がけ、報酬などを受け取っていないかどうかを確認するため、提携先の弁護士に対しては、毎月、収支を示すデータをファクスで送らせていた。
官僚の不正が次々に表面化するなか、法曹界も例外ではなく汚染されているという一端をのぞかせた。(2000年)
BACK
スポットニュース
大阪高裁、未成年犯罪の実名報道に初判断、少年法より憲法の「表現の自由」を優先。
大阪府堺市で1998年1月、通り魔事件で幼稚園児ら3人を死傷させ、懲役18年の実刑判決を受けた犯行当時19歳の男性(現在21歳)の実名と顔写真が月刊誌に掲載された問題で、男性が「名誉、プライバシーが侵害された」として、『新潮45』の発行元・新潮社と当時の編集長や執筆したライターを相手に、2200万円の損害賠償を求めていた訴訟の控訴審判決が2月29日、大阪高裁であった。
判決で大阪高裁は、記事を不法として同社側に250万円の支払いを命じた一審(大阪地裁)判決を取り消し、「悪質重大な事件で、どんな人物がこの犯罪を犯したのかは社会の正当な関心事であるし、内容は真実であると認められるから違法性はない」などとして男性の請求を棄却した。
その中で裁判長は、「少年法61条は、健全育成という公益目的と更生などの刑事政策的配慮に根ざす規定で、罪を犯した少年に実名で報道されない権利を付与しているわけではない」「仮にそう解する余地があっても、違反者に対する罰則がないことを考えると、少年法61条の規定が表現の自由よりも優先すると解することはできない」と表現。
記事に顔写真が必要だったかは疑問としながらも「表現内容・方法が不当とは言えず、実名報道でその後の更生にどのような支障が発生したか具体的に立証されていないことから、実名報道が男性の権利侵害に至っているとは判断できず損害賠償請求権は認められない」と、少年犯罪での実名報道を禁じた少年法61条より、憲法21条の「表現の自由」を優先させた初の司法判断を示した。しかし、新潮社側が実名掲載した理由について「すべてを事実として書き、少年に自分のしたことを明確に認識させ、 分からせるべきと考えたためだ」などと主張したことに関しては、判決では「その主張には理由がない」と、あっさり退けた。また、表現の自由に関しては「できる限り社会の自主規制にゆだねたもので、出版物の発行者は趣旨を尊重し、良心と良識をもって自己抑制することが必要だ」などと釘を刺した。
罪を犯した未成年者に対して日本では、その更生を重視して審判は一切公開されないなど、一貫して匿名(少年A少女B)で扱われてきた。しかし、未成年者の犯罪は年々増加すると共に凶悪化する傾向にあり、「加害者の人権ばかり守られているのはおかしい」という声も高まりつつある。
そうした心情を背景に、今回の判決に対して「海外では凶悪犯罪の場合は未成年であろうとも実名が世に出されており、それが常識だ。日本もようやくそうなる時を迎えた」という声が聞こえている。しかし一方では「被害者に比べ加害者が不当に保護されているということも理解できるが、凶悪犯罪といえども実名が世に出されるのは現行の少年法の趣旨に反するのではないか」「商業マスコミが表現の自由という権利を得て、さらに興味本位にプライバシーを暴きたてるのを助長するだけではないのか」などの声もあがっている。請求棄却に対して男性側代理人の弁護団は「少年法61条は未成年の実名報道等を禁じている。実名や顔写真を報道される被害実態を全く理解していない判決で納得できない。判決は憲法で保障されているプライバシー権などの解釈を誤っており、少年法61条の解釈・適用にも重大な違反がある。原告本人の意向を聴いたうえで上告したい」と主張していたが、3月3日、大阪高裁の判決を不服として最高裁に上告することを決めた。(2000年)
堺通り魔事件と実名掲載
1998年1月8日早朝、当時19歳のシンナー中毒の男性が、堺市内の路上で通学途中の女子高生徒を包丁で切りつけた後、幼稚園児を刺殺し、母親にも重傷を負わせた事件。
報道機関が匿名報道する中で、『新潮45』98年3月号は「少年法で守られた素顔にあえて踏み込む」として、「ルポルタージュ・幼稚園児・虐殺犯人の起臥(きが)」と題する記事で犯人の生い立ちや家庭環境をルポすると共に、実名と顔写真を掲載した。
一審判決は「実名や写真を掲載する公益上の必要性はなく、掲載は極めて悪質」として新潮社側に賠償を命じていた。BACK
スポットニュース
断罪された薬害エイズ事件、禁固刑の実刑がくだる。
製薬会社の旧ミドリ十字の歴代社長3人を被告とする薬害エイズ事件で大阪地裁は「人命を救うべき製薬会社の責任者が、営業利益を優先して危険性を軽視し、虚偽の安全宣伝も容認した結果、尊い生命を奪い去った。厚生省に過失があるとしても、被告らの自覚と良識を欠いた罪責は軽減できない」として被告3人に対し、業務上過失致死罪で2年〜1年4月の禁固刑の実刑を科した。
同じ罪に問われた元厚生省課長と元帝京大副学長の公判は東京地裁で続いており、今回が薬害エイズの刑事責任追及で最初の判決になった。国内で最初の薬害とされるのは1974年に和解した「サリドマイド禍」の訴訟。その後も薬害訴訟があったが、製薬会社首脳の刑事責任は常にあいまいにされてきただけに、今回の判決は画期的だった。しかし、今回の判決に関して被害者の多くは「軽すぎる」と批判し、「殺人罪の適用を」と声を高める。むしろその声は当然で、「産・官・学」の複合過失とされる薬害エイズは、1800人にもおよぶ感染者を出したばかりか、危険性を十分に認識しながら、エイズウイルス(HIV)に汚染された非加熱血液製剤の販売を続け、回収も怠った結果、1986年4月に製剤を投与された男性はHIVに感染し、死亡。このような悲劇は500人にものぼった。
厚生省は、民事訴訟で被害者と和解した1996年以降、医薬安全局を設置して安全対策を強めてきた。しかし、「産・官・学」の癒着構造と人命無視の体質は改まってはいない。
クロロキンやスモンなど過去の薬害をめぐる民事訴訟の判決は「被害発生を疑わせる危険情報があれば、医学的報告を漫然と待たず、直ちに被害防止の措置を講じるべきだ」と業界や行政に警告した。今回の判決も教訓に満ちたものだが、現実には、血液事業法(仮称)成案のめどが立たないなど、行政の課題は依然多い。
今回の判決は、まずは「産・官・学(医)」のなかの「産(製薬会社)」に対する断罪だった。「産・官・学(医)」あげての薬害根絶策に到達するためにも、「官や学」に対しても今回と同様に厳正な判決が求められている。(2000年)
BACK
スポットニュース
グリコ・森永事件、時効が成立。
バレンタインデーを前にした2000年2月13日、私たちが忘れかけていた「どくいり きけん たべたら死ぬで かい人21面相」の事件がすべて時効になった。
1984年3月にグリコ社長が誘拐されたのを皮切りに「かい人21面相」を名乗るグループが、身代金10億円の要求やグリコ本社放火、森永製菓を狙った毒物混入や丸大食品、ハウス食品、不二家など食品メーカーをターゲットにした脅迫などを執拗に繰り返し、その事件の数は28件にのぼった。
一連の事件のうち既に、身代金目的誘拐事件など24件の時効が成立し、残るは85年2月12日(2件)〜13日(2件)にかけて東京と名古屋で青酸入りチョコレートがばらまかれた殺人未遂事件4件のみとなっていた。犯人グループについて事件当時、警察は「少なくとも3人以上で、大阪府北東部に土地勘があるとみられる」として捜査を実施。しかし犯人グループは、指定した現金持参場所に現れずに企業や警察の動きを牽制したり、警察無線を傍受して捜査網をかいくぐり、からかい、翻弄した挙句に「もうゆるしたる」などとの声明文を出し、始終、マスコミをはじめ一般市民を事件の観客として引き付けるなどして、その事件は「劇場的犯罪」とも称された。
最終時効を前に警視庁は、「一連の事件すべてが2月13日をもって未解決となる。犯人検挙に至らず誠に残念で刑事警察の敗北感はあり、重く受け止めている」と事実上の敗北宣言を行ない、犯人逮捕など事件の解決に至らなかった理由として「犯人グループが用心深くて現場で捕まえられなかった」「広域・連携捜査の認識がなく、関係都府県警の合同捜査がスムーズにいかなかった」「多数の遺留品は大量生産の壁に阻まれ、購入者の特定が難しかった」などの点をあげた。そして、この事件の捜査にかかわった人員は、兵庫、大阪、京都、愛知、滋賀の5府県警と警視庁の約130万人で、捜査対象者は、容疑者情報対象者など合わせて約12万5000人にのぼったことを明らかにした。
その捜査の過程では、84年11月のハウス食品脅迫の際、捜査当局から事情を知らされていない滋賀県警のパトカーが、現金受け渡し場所近くで犯人の車を取り逃がすという事態も起こった。また、このことから、「責任は私にあります」と言い残して焼身自殺した滋賀県警本部長の悲劇もあり、広域捜査の在り方が問われるなどの問題も発生した。
時効成立前の2月10日、事件の発端となったグリコ社長が江崎記念館ホールで会見し、警察の捜査について「この事件で得たことを他のいろんな捜査に生かしてほしい」と述べると共に、自らに関して「こんな事件に巻き込まれるとは予測していなかったが、事件後の対応の大切さを知った」と語った。また犯人グループに対しては「二度と起こしてほしくない。ただそれだけ」と、淡々と語ったが、一連の事件の原因がグリコにあるとする説に関しては「私や会社が事件のきっかけということはありえない」と強く否定。犯人と裏取引したとの推測に対しても「絶対ない。どこに根拠があるのかこちらが聞きたい」と、この時ばかりは語気を強めた。
かい人21面相を追い詰める明智小五郎も大五郎も出現せず、「どくいり きけん たべたら死ぬで」の文句と共に青酸入り菓子がばらまかれた「グリコ・森永事件」は、2月13日午前0時にすべて時効を迎え、迷宮入りした。
民法に規定された損害賠償の請求期限は20年であと5年残っている。(2000年)BACK
スポットニュース
経済的な理由で裁判を起こせない人の弁護士費用などを立て替える「民事法律扶助法案」ができる。
法務省は、経済的な理由で裁判を起こせない人の弁護士費用などを立て替える「民事法律扶助法案」(仮称)をまとめた。
これまで扶助対象者は、寄付金や償還金を主な財源として自主的に運営されてきた法律扶助協会の法律扶助制度などに依存し、国の補助金はごく一部にとどまっていた。法案では、これを国の制度と定め、国庫負担を大幅に増額して制度の拡充を図り、事業を行なう公益法人に対して費用の一部を国が補助するとしている。援助の対象者は当面、3人家族で年収約400万円以下を想定(国内に住む外国人も含む)。民事訴訟や離婚訴訟、行政事件などの手続きをする際に、弁護士への法律相談や訴状の作成などにかかる費用を自己負担できない場合、審査をして裁判費用を貸し付ける。返済が原則だが、生活保護を受けている人は、勝訴で賠償金を得た場合などをのぞいて免除される規定も設けられる予定。
法務省では、「これにより、詐欺事件や離婚・慰謝料請求などで、金銭的余裕がないために泣き寝入りしてきたケースがかなり救済される見通し」という。(2000年)
BACK