スポットニュース
人権監視団体アムネスティ・インターナショナル、初の成田空港内入管施設調査で失望感を表明。
外国人の人権に対する配慮が希薄な日本だが、アムネスティ・インターナショナルが12月22日、成田空港内にある東京入管成田空港支局の上陸防止施設を視察し、失望感を表明した。
ロンドンに本部をおく国際的な人権監視団体アムネスティが日本の入管施設を視察したのは初めてで、今回の視察は、アムネスティが「拷問廃止キャンペーン」として世界的に行なっている調査の一環として日本への入国を拒否された外国人の人権状況を調査した。
東京入管成田空港支局で上陸防止施設の実態などについて説明を受けた後、旅客ターミナルビル内にある施設の内部を見て回ったが、視察後、調査官は「施設全体を見せてほしいとの要望に対し、女性用3人部屋の1部屋しか許可されないなど不十分な対応で失望している」と感想を述べ、「窓もない小部屋に押し込められるばかりか、外部との連絡もままならないなど、人権侵害の恐れが高いとされ続けているわれわれの懸念を、今回の調査では、解消することはできなかった」と述べた。
アムネスティは「入国を拒否され、成田空港の上陸防止施設に収容された外国人が、日常的に、入管職員や民間警備会社の警備員から暴行や脅かしを受けるなどの人権侵害が横行している」と指摘している。アムネスティは、来春までに調査結果をまとめ、日本政府に改善勧告したいとしている。(2000年)
スポットニュース
強い毒性を持つPCB使用の蛍光灯について交換処理促進を閣議決定。
発がん性などの強い毒性を持つPCB(ポリ塩化ビフェニール)が、PCBを絶縁油として含む蛍光灯の安定器(コンデンサー)の破裂で飛び散る事故が相次いでいることから、政府は11月28日、PCBを使用している古い蛍光灯などの照明器具を、国が所管するすべての公共施設で2001年度末をめどに交換することを決めた。また、地方自治体や民間企業などが管理する施設についても交換を要請する。
PCBは1972年に製造中止になり、現在はPCBを使った蛍光灯も製造されていない。しかし、製造が中止されるまで2000万個近くが製造されたことから、今も公共施設などで使用中のものが相当数あるとみられている。
メーカー団体が1997年に「長期使用で破損する可能性がある」として交換を促した経緯もあるが、今春行なった文部省調査では329市町村が「使用中の学校がある」と回答するなど、交換は進んでいないのが現状。政府は、交換および処理を促進させるために、高圧のトランス類やノーカーボン紙などPCBが含まれる製品も対象にしたPCB廃棄物の処理促進を図る新法を、次の通常国会へ提出する予定だ。(2000年)
スポットニュース
永住外国人地方選挙権付与法案、やっと審議入りするも成立は困難?
同じ市町村に3カ月以上住む永住外国人に地方議員と首長の選挙権を認める、などとする永住外国人地方選挙権付与法案が11月15日、衆院政治倫理確立・公選法改正特別委員会で提案理由説明が行なわれ、やっと審議入りした。
この法案は、99年に民主、公明、共産案などが国会に提出されて同委員会で審議されたが、今年6月の衆院解散であえなく廃案になった。
今回は、公明・保守両党と民主党がこの法案を提出、「地方のことはその地域に住む住民が決定するのが望ましく、日本国民とともに地域コミュニティーを形成している永住外国人の意見を反映できるよう、選挙に関しては限りなく日本人に近い扱いがなされる必要がある」などと提案理由が説明され、審議入りすることで与野党が合意した。しかし、公明党が早期成立を求めているものの、自民党内には賛否両論があり、異論が根強い。また、国会の会期末が12月1日に迫っているという日程上の問題もあり、今国会での成立は難しい情勢で、再び先送りされそうだ。(2000年)
スポットニュース
全国の児童相談所に寄せられた児童虐待の相談が急増。
児童虐待が問題になっている中、全国の児童相談所が1999年度中に受けた児童虐待に関する相談や通報は前年度よりも1・7倍近く増加し、1万1631件に上ったことが、厚生省のまとめで分かった。
虐待の内容は「身体的虐待」が最も多く、5973件で全体の51・3%。次いで「保護の怠慢、拒否」が3441件、「心理的虐待」1627件、「性的虐待」590件の順。虐待したのは、母親が60・3%と多いのが目立った。虐待を受けた児童を年齢別でみると、零歳から小学校就学前が半数を占め、虐待の対象が低年齢に広がっていることを浮き彫りにした。
虐待がはなはだしく、子供の安全が確保できないと判断し、親権者の意に反して相談所が家庭裁判所に何らかの処分を求め、子供を児童福祉施設に入れるなども88件にのぼり、昨年を49件上回った。相談の処理は、養護施設などに入所させたケースが17・9%で、児童福祉士などが面接指導で対応したケースが72・9%だった。虐待を発見した場合、児童相談所への通報を義務づけることなどを柱とした児童虐待防止法が近く施行されるが、相談件数は、家族からが22・4%と一番多く、次いで「近隣、知人から」が14・4%と前年度と比べ件数は2・7倍に増え、虐待を知った人が通報しなければならないという意識が浸透したことがうかがわれた。(2000年)
スポットニュース
労働基準監督署、福島原発での作業員の急性骨髄性白血病死を被ばくによる労災と認定。
原発内での作業による放射線被ばくが過去から問題になっているが、福島県富岡労働基準監督署は10月24日、東京電力福島第1原発(双葉町、大熊町)と同第2原発(富岡町、楢葉町)で下請け作業員として働き、 急性骨髄性白血病で死亡した当時47歳の男性作業員の遺族が 昨年12月に認定申請していた労災について、原発内での作業による放射線被ばくが発病の原因と判断し、労災認定した。
被ばく死として労災認定された作業員は、1988年から死亡直前までの11年間、主に炉心の近くで溶接工としての作業をしていた。その間の被ばく線量は計74・9ミリシーベルトで、国の認定基準を20ミリシーベルト近く上回り、1999年11月に急性骨髄性白血病で死亡した。
労働省によると、原発など核施設での放射線被ばくで労災認定されたのはこれで8人目だという。(2000年)
スポットニュース
根腐れKSD、会員を勝手に党員名簿に載せて自民党に1億円超えの献金。
前理事長の不正融資による背任容疑で東京地検特捜部の家宅捜索を受けた労働省所管の財団法人「KSD中小企業経営者福祉事業団」が、会員多数を本人の了承なしに自民党員にし、年間1億円以上の党費を肩代わりしていたことが新たに分かった。
KSDの政治団体とされる「豊明会中小企業政治連盟」(豊政連)は1990(平成2)年に設立されたが、ここがKSDの会員名簿を基に党員名簿を作り、会員本人の承諾を得ないまま自民党員としていた。その数は9万人に達しており、党費は年間1億円をゆうに超えていた。
政治献金が禁止されている公益法人が、関連団体経由で政界に金を流すというのはよくある話だが、補助金を受ける法人が、傘下の任意団体に補助金を支出し、さらにそこから自らの政治団体に資金を流し、それが政界に渡るというオソマツ極まりない構図をつくっていた。
古関前理事長は10月7日、KSDの理事長と豊明会の会長を辞任。また、KSDは「政治活動などが批判を受け た」として豊政連と豊明会の解散を決めると共に、会員宛に「お詫び」を郵送した。(2000年)BACK
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少年犯罪の捜査や処分強化へ。
少年犯罪が拡大し、社会問題化している状況に対応して、法務省と最高検は、刑事裁判を求める重大事件以外は「警察や家裁任せ」というものから、来年度から検察官が直接関与して取り調べる事件を大幅に増やす方針を決めた。
少年犯罪のなかで、来年度から検察官が直接取り調べることになるのは、殺人、傷害致死、強盗、婦女暴行、逮捕監禁致死などの事件で、少年容疑者本人の調べのほか、その保護者や事件の被害者、参考人らからも事情聴取する方針。
少年事件の大半は、事件後には保護観察や施設での更生などの対応で処理されてきた。検察の統計年報によると、地検が警察から送検を受けるなどした少年事件の容疑者は1999年で約28万人で、家裁に送致した27万7046人のうち、1万169人を家裁が「刑事処分相当」として検察官に逆送致するにとどまっている。今後は、少年審判の事実認定が十分ではないとの指摘も多いことから、警察と家裁任せの姿勢を改め、被害者の立場も尊重した捜査に取り組むという。少年審判見直しのための少年法改正や被害者保護も視野に入れた措置で、従来の非行少年の更生に重点を置いてきた少年事件に対する取り組みが時代の変容と共に変る。(2000年)
※少年法改正案が今国会で成立する。
少年犯罪の刑事処分の適用年齢を「16歳以上」から「14歳以上」に引き下げることなどを柱に、「16歳以上が故意犯罪で人を死亡させた場合は、刑事裁判にかけることを原則化する」「18歳未満であれば死刑相当の罪でも7年経過後に仮出獄できる現行規定を10年以後とする」「少年審判に当たる家庭裁判所は被害者や遺族の意見を聞き、 審判結果を通知し、記録の閲覧やコピーを認める」などを内容としている。
このほか、一般の刑事裁判に比べ家裁は、事実認定能力が劣っているとの指摘があることから、裁判官3人による合議制の導入、重大犯罪への検察官の関与、観護措置(身柄拘束)期間を現行の2倍の最長8週間とするなどの規定を加えた。さらに、家裁は保護者への訓戒や指導を行なうことができるとしている。
スポットニュース
ビキニ水爆実験で被ばくした第五福竜丸元乗組員の病床からの訴えが叶い、船員保険の再適用申請、認める裁決。
1954年、マーシャル諸島ビキニ環礁でのアメリカの水爆実験で「死の灰」を被った日本の遠洋マグロ漁船856隻。その被災船のひとつ第五福龍丸の元乗組員、小塚博さん(69歳/静岡県相良町在住)が、「C型肝炎に感染したのは被ばく治療の際の輸血が原因で、職務上の災害にあたる」として、船員保険の給付を求めている問題で、国の社会保険審査会は8月4日までに、給付を認めなかった静岡県の社会保険審査会側の処分を取り消し、小塚さんの訴えを認める裁決を出した。
被災当時、第五福龍丸の乗組員23人は全員が被ばくしたことから急性放射能症となり、国立病院で輸血を受けた。小塚さんは、10年前から体のだるさや食欲不振に襲われ、C型肝炎と診断されたため、「被ばく治療の際の輸血が原因で、職務上の災害にあたる」として1998年に治療費給付を静岡県に申請。しかし、県の社会保険審査は「輸血が原因と推定せざるを得ない」と小塚さんの主張を認めながらも、被ばく治療後に、いったん仕事に復帰したことなどを理由に「社会通念上の治癒にあたる」として小塚さんの申請を認めず、治療費給付を退けた。
第五福龍丸の乗組員はすでに11人が死亡しているが、今も小塚さんと同様に肝炎に感染し、苦しんでいる元乗組員がいることから、小塚さんは、国の社会保険審査会に審理を請求し、公開審理の陳述で自らの思いを訴えることに執念を燃やした。
国の社会保険審査会は5月25日、厚生省で公開審理を実施したが、小塚さん自身の病状が悪化し、病床から離れられなくなったために、同じ乗組員で共に被ばくした大石又七さん(66歳/東京都大田区在住)や代理人の弁護士、医師らに自分の思いを託した。5月25日の審理では、小塚さん側の弁護士や医師が「被ばく治療後に、いったん仕事に復帰したことなどを理由に社会通念上の治癒にあたるとした社会的治癒の考え方は、感染から発症まで長期間にわたるC型肝炎を念頭に置いていない」「元乗組員はほとんど同じように肝炎になっており、輸血が原因と推定せざるを得ないのにもかかわらず、給付を認めないという行政判断は不可解」と批判。
肝癌になり、治療で一命をとりとめた第五福龍丸元乗組員の大石さんは、肝炎と被ばく治療との因果関係に疑問を呈する国側に対し、「死んでいった仲間も声にならない声で訴えていた。現実に何人も同じ経過をたどっている事実を無視するのか」と怒りをぶつけるように陳述した。これらの状況を考慮に入れ、社会保険審査会は「被ばく治療によりC型肝炎に感染したことは否定できない」としたうえで、「感染から発症まで長期間にわたるC型肝炎の特性などを考慮すると、治癒したとはいえない」と裁定、小塚さん側の訴えを認めた。(2000年)
スポットニュース
薬害エイズ事件で検察、帝京大元副学長・安部英被告に対して禁固3年を求刑。
エイズウイルスが混入した非加熱血液製剤の投与により多くの血友病患者らがHIVに感染、死亡した「薬害エイズ事件」で、業務上過失致死罪に問われた帝京大元副学長・安部英被告(84歳)に対する論告求刑公判が7月26日、東京地裁であった。
検察側は「血友病患者の生命の安全を最優先して非加熱製剤の使用を中止すべきだったのに、被告自身のメンツや製薬会社の損害などにこだわり、それを怠った。また、患者の生命を軽視した被告の一方的な過失によって被害者が死亡したにもかかわらず、被告は謝罪も反省もしておらず、医師としての責任感、良心の一片も見いだし得ない」などとして、安部英被告に対し、禁固3年を求刑した。
9月13日に弁護側の最終弁論が行なわれ、年度内にも判決が言い渡される見通し。同じ罪に問われた元厚生省課長の公判は東京地裁で続いている。
製薬会社の旧ミドリ十字の歴代社長3人を被告とする判決では、大阪地裁が2月24日、「人命を救 うべき製薬会社の責任者が、営業利益を優先して危険性を軽視し、虚偽の安全宣伝も容認した結果、尊い生命を奪い去った。厚生省に過失があるとしても、被告らの自覚と良識を欠いた罪責は軽減できない」として被告3人に対し、業務上過失致死罪で2年〜1年4月の禁固刑の実刑を科している。
「産・官・学」の複合過失とされる薬害エイズは、1800人にもおよぶ感染者を出したばかりか、危険性を十分に認識しながら、エイズウイルス(HIV)に汚染された非加熱血液製剤の販売および投与を続けた結果、1986年4月に製剤を投与された男性はHIVに感染し、死亡。このような悲劇は500人にものぼった。厚生省は、民事訴訟で被害者と和解した1996年以降、医薬安全局を設置して安全対策を強めてきたが、「産・官・学」の癒着構造と人命無視の体質は改まってはいない。
「産・官・学(医)」あげての薬害根絶策に到達するためにも、「官や学」に対しても「産」と同様、もしくはそれ以上に厳正な判決が求められている。(2000年)
スポットニュース
三菱自動車工業、悪質な「リコール隠し」発覚で謝罪、約61万台の回収・修理を正式に届け出。
ユーザーからのクレーム関連書類について運輸省に報告する義務を放棄して一部は隠ぺいして処理したとして、運輸省の特別監査を受けた三菱自動車工業は7月26日、運輸省にリコールなどの届け出をするとともに謝罪。リコールや改善対策など17車種約61万台を無償で回収・修理する。
運輸省令の保安基準に適合していない「リコール」の対象は約53万台。基準は満たしているが安全上の問題がある「改善対策」の対象が約3400台など。三菱自動車工業の「リコール隠し」や「クレーム報告書」については「運輸省の定期検査の際に提出するものとそうでないものを二重に電算処理している」との匿名の情報が運輸省に6月上旬、寄せられた。このため7月上旬、東京都港区の同社本社や販売会社などの特別監査を実施したところ、本社の男子ロッカー室などに商品情報連絡書やクレーム対策会議一覧表などの書類が隠されているのが見つかった。そのなかには、定期検査した際に提出を受けた資料とは別のものがあり、本来ならリコール(回収、無償修理)などを実施すべき案件が14件もあり、中には、欠陥によりエンジンが停止したり、車両火災が発生するものもあった。
三菱自動車工業は7月18日になって、リコールや改善対策などに該当するものが「ランサー」「ギャラン」「パジェロ」「RVR」など14車種70万台近くにのぼることを運輸省に報告。また、「クレーム処理に甘さがあった」と釈明すると共に「品質問題調査委員会」を設置して社内調査を進める、とした。
運輸省は、「リコール隠し」や道路運送車両法違反(虚偽報告)の疑いもあるとみて、全容を解明したうえ、「リコール制度に対する信頼を著しく失墜しかねない悪質な行為」として、同社を厳しく処分する方針を示した。同省によると、隠されていたクレーム案件中、リコール対象に該当する主なものは「ボルト折損などによりエンジン停止(ランサー、生産台数約15万台)」「緩衝装置の欠陥で走行不能(ギャランなど、生産台数約13万5000台)」「ブレーキホース亀裂による油漏れ(パジェロ、生産台数約約2000台)」「エンジンオイル漏れでの車両火災(RVRなど、生産台数約3万9000台)」などだった。(2000年)
スポットニュース
警視庁公安部、原子炉等規制法違反容疑のモナザイト保管・無届け移動・放射能汚染の一連の事件での立件を見送る。
警視庁公安部は7月7日、原子炉等規制法違反容疑で捜査していた文部省所管の財団法人「日本母性文化協会」(設立許可取り消し)元理事長が放射性物質のモナザイトを保管していた問題での立件を見送った。
警視庁公安部では「原子炉等規制法違反の疑いが濃厚」として、理事長ら関係者から事情を聴くなどして調べていたが、モナザイト鉱石の所有者が原子炉等規制法違反で立件されると、ずさんな管理を行なっている実態を知りながらそれを放置していた科技庁の責任も厳しく問われるたため、それを回避しようとしてか、科技庁が、今回の一連の問題に関しては「譲渡や運搬については原子炉等規制法の対象外」として「違反に当たらない」と結論付けたことから、立件を断念した。
原子炉等規制法では、核物質の取り扱いを定めており、モナザイトなど核原料物質を使用する場合は届け出が義務づけられている。所有者が、届け出をしない場合や、届け出後に科技庁の指導に従わなかった場合、科技庁は警察に告発し、罰金50万円以下の罰則を科すことができる。
しかし、その科技庁側が「単なる保管は使用にはあたらない」「譲渡や運搬については対象外」としたことから、原子炉等規制法違反での立件が不可能になった。今回の例は、最終的には「核物質の譲渡、保管に関しては一切規制がない」ということを示す形となったが、科技庁では「法改正は現段階では考えていない」としている。(2000年)
鉱物「モナザイト」保管で広がった波紋と危険。
首相官邸のほか複数の中央省庁に放射性物質を含む鉱物「モナザイト」の粉末が相次いで郵送された事件で、その粉末と一緒に送られた文書に文部省所管の財団法人名が記され、この財団の理事長(84歳)がモナザイト約50トンを販売目的で所有していた疑いのあることが判明。また、科学技術庁が昨年11月には既に、財団理事長が埼玉県熊谷市の倉庫にモナザイトを保管していることを把握しながらも、今回の事件が起きるまで、詳しい分析や調査などをしていなかったことも6月13日に分かった。科技庁によると、昨年11月、東京都青梅市の建築業者から要請を受け、文部省所管の財団法人「日本母性文化協会」の理事長から「建設費の担保として預かった」という約20キロのモナザイトを分析、この時点で、原子炉等規制法により届け出が必要なレベルの放射能濃度や放射性物質量を測定し、財団理事長の関係者を通じ、熊谷市の倉庫に約1トンのモナザイトが保管されていることを確認していたという。
しかし、科技庁は、倉庫奥に移すことなどを「行政指導した」だけで、財団理事長がほかにも10数トンのモナザイトを保管していることが分かったにもかかわらず、その他の保管先などを把握せず、結局、事件になるまで対策を先送りしていた。この結果、今回の事件の調査で、保管場所として確認した長野県辰野町や埼玉県大宮市の現場からは、自然界で測定される量の数1000〜数100倍の放射線量が測定され、現在ではパソコンショップになっている敷地にばらまかれていた埼玉県大宮市大成町では、店内や倉庫で、自然界で測定される量の400倍〜600倍以上の放射線量にあたる41〜62マイクロ・シーベルト(毎時)を検出し、その場に1日いると、一般人の年間線量限度の1ミリシーベルトを超える線量で被ばくする最悪の状況になっていた。ちなみに周辺住民への環境影響を検討する基準数値とされるのは10マイクロシーベルト(毎時)。
このため、科技庁は店舗側に、店舗内への立ち入りを制限もしくは立ち入り禁止にするように指導。また、このパソコンショップの敷地については「鉱石を早急に回収する必要がある」とし、回収の作業計画や資金分担について自治体などとも協議すると共に、知らないうちに被ばくしたとみられる従業員の健康管理や対策についても検討することを決めた。警視庁公安部の調べによると、財団理事長は亡くなった兄とともに鉱物関係を取り扱う貿易会社を経営。約30年前に温泉の原料としてモナザイトを含む鉱物約150トンをタイから輸入、この鉱物からモナザイト約50トンを国内で抽出した。残った一部の不純物の多い鉱物約50トンについては、「トロン温泉など温泉用(トリウム元素が放出するエネルギーを『トロン』と呼び、鉱石のモナザイトがこれを多く含むトロン温泉の効用は、これによるイオン化作用)として販売した」という。
郵送された文書に「新潟港より船にて北朝鮮にウラン物質を密売している。核ミサイルに使用、取引量は70トン」などと書かれていた件については「取引先が北朝鮮とわかって商談を中止した」と説明したという。
また、所在不明のモナザイト約20トンのうち半分近くを三重県鳥羽市の関係業者に売ったとも供述。さらに、岐阜県土岐市駄知町の工業窯炉メーカー「高砂工業」2階の研究室内や千葉県佐原市内の市議宅の納屋からも、これらのモナザイトが見つかった。
警視庁公安部は6月17日、粉末状のモナザイトが入った封筒を省庁などに送った東京都中野区の42歳の解体業者を郵便法違反の疑いで逮捕。郵便法一四条で、危険性のあるもの(爆発物や毒物、病原体など)の郵送を禁止しており、74ベクレル以上の放射性物質も対象となる。送付されたモナザイトはこの基準を超えていた。違反者は50万円以下の罰金。
調べに対し、容疑者は「北朝鮮への売却話の利害で仲間割れしていた」などと供述したいうもの。
スポットニュース
東京地検特捜部、中尾栄一元建設相を受託収賄容疑で逮捕、閣僚経験者を含む複数の自民党議員に対する疑惑も浮上。
東京地検特捜部は6月30日、中尾栄一元建設相が大臣在任中に、建設省発注工事の指名業者選定に便宜を図るように要請され、石橋産業のグループ会社「若築建設」から現金や小切手など3000万円を受け取っていたとして、受託収賄容疑で逮捕、中尾元建設相の都内や甲府市内の自宅、政治資金管理団体の事務所などを捜索した。
今回、特捜部が逮捕に踏み切ったのは、イトマン事件の許永中被告(公判中)らが石油卸会社「石橋産業」から額面約180億円の約束手形をだまし取ったとする詐欺事件を捜査している過程で、許永中被告の「政界工作資金」などの問題が浮上し、関連証言で汚職事件が判明したため。許被告がらみの詐欺事件では98年1月、中尾元建設相の元公設秘書が石橋産業の関連不動産会社社長から3000万円を受け取っていた疑惑が発覚していたが、うやむやになっていた。
調べによると、96年1月から11月まで大臣を務めた中尾元建設相は、許被告の仲介で石橋産業の石橋浩会長らと都内の料亭で会い、建設省発注工事の受注実績を増やせるよう指名競争参加業者に選定してもらいたいと要請され、報酬として96年10月、元公設秘書が東京都港区内で若築建設側から現金2000万円と額面1000万円の小切手を受け取り、中尾元建設相は同省幹部に便宜を図るように働き掛けたというもの。贈賄側は容疑を認めている。
総選挙公示日あたりに現金授受があったことから、特捜部は、この資金は中尾元建設相の選挙資金に使われた可能性が高いとみている。また、特捜部の調べでは、許永中がらみの政界工作で閣僚経験者を含む複数の政治家の名前が浮上している模様で、それらの政治家に対しても数億円の金銭授受が行なわれた、との見方も強まっている。
贈賄側の若築建設の石橋浩元会長は、許永中被告から、政界工作資金や財界交流資金などとして10億円を受け取り、それを96年中にほぼ全額使ったという話もでていることから、東京地検特捜部は、資金の流れの解明も急いでいる。
また、地検特捜部の調べでは、現金授受の額はさらに膨らむとみられている。大臣在任中の汚職事件で政治家が逮捕されたのは、92年の共和汚職の阿部文男元北海道開発庁長官以来8年ぶりだが、建設相がらみでは、94年、中村喜四郎元建設相が埼玉土曜会事件をめぐる斡旋収賄罪で逮捕・起訴された事件がある。
中尾元建設相は1967年の総選挙で山梨県から出馬し初当選、自民党入りした。87年、竹下内閣時に経済企画庁長官として初入閣。90年、通産相、96年、橋本内閣時に建設相などを務めたが、6月25日の衆院選では落選した。(2000年)
●若築建設から政治献金を受けている国会議員は、政治資金収支報告書によると、自民党の亀井静香政調会長、虎島和夫現防衛庁長官、関谷勝嗣元建設相、江藤隆美元建設相、三塚博元運輸相、二階俊博元運輸相、亀井善之元運輸相、山中貞則元通産相、西岡武夫元文相、愛知和男元防衛庁長官、田名部匡省元農相、小沢一郎自由党党首ら。
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スポットニュース
20年を経て「ベビーホテル」問題、再び。
神奈川県大和市のベビーホテル経営者が幼児を暴行してせっかん死させた事件を受けて、厚生省は、全国約800カ所のベビーホテルをはじめ全国8600カ所の無認可の託児所や保育所すべてに対し、児童福祉法に基づく立ち入り調査を実施するよう、都道府県などに指示した。
ベビーホテルの問題は1980年代にTBSのニュース番組「テレポート6」の追跡報道で社会問題になった。それをきっかけに行政指導が始まり、一時は改善が進んだが、その後は時代の流れの谷間に埋もれて劣悪な環境が指摘され続けながらも大きく表面に出ることはなかった。
「事件にならないと動かない」のは警察だけではなく省庁も同じという現状を象徴するかのように、ベビーホテル経営者が幼児を暴行してせっかん死させる事件が起きたことから、今回の調査実施が決められ、悪質な場合は事業停止命令などを出すことも含めて厳しく対応する方針が出された。
1980年代にも「ベビーホテル急増の背景には、働く女性が増えた一方で、認可保育所では夜間、休日の長時間保育をほとんど受けられないという事情がある」とされたが、ほぼ20年が経過しても同様の分析がなされるだけで、保育所の充実は一向に進んではいない。(2000年)
ベビーホテル
無認可の保育所で、時間単位あるいは宿泊を伴って子どもを預かる施設。厚生省の調べでは、全国に1999年4月1日現在で838カ所あるとされている。80年代に社会問題化して以降、指導基準もつくられ「保育従事者が少なくとも2人配置。その3分の1以上は保育士か看護婦の資格が必要」「子どもの年齢や発達に応じた対応や遊びをさせる」といったや保育内容が指導された。指導基準に適合していないベビーホテルは口頭や文書による指導をするとされているが、事業停止命令などはこれまでになく、実際には野放し状態に近い。児童福祉施設での体罰
児童福祉施設で体罰が行なわれていることも明るみに出ているが、厚生省の調査で、全国625の児童福祉施設のうち、子どもへの虐待を禁止する「懲戒権の乱用禁止規定」を設けている施設は3割で、約7割の施設がこれに対応していないことが分かっている。
厚生省は98年から、子どもの権利を守るため、児童福祉施設が守るべき最低基準に「身体的苦痛を与え、人格を辱める等その権限を乱用してはならない」との懲戒権の乱用禁止を定め、それぞれの施設にも同様の規定を設けるように指導している。
厚生省の調査によると、全国に553ある児童養護施設のうち、69%が懲戒権の乱用禁止を施設の規定に設けておらず、子どもの権利擁護について施設内で研修をしていない所も92施設(約15%)あった。子どもが意見を言える機会を確保している所は580施設で、全く確保していない所が45施設(約7%)あった。