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米の販売量と消費量、若干、上向き?依然として低迷?

 田植えも終り、米の生育と共に米の売れ行きが気になるところだが、食糧庁が2000年6月19日に発表した5月の米販売や米消費量によると、米販売は前年同月期よりも9万トン上回り、米消費は前年同月期より0・4%増えた。前年を上回ったのは実に49カ月ぶり。

 自主流通米の販売量は3月から若干、上向きはじめ、30万トン台を維持しているが、前年より2万4000トン下回っており、依然として低迷は続いている。99年11月からの2000米穀年度の累計は5月までで195万トン。

 一方、政府米の販売数量は少なく、1万8000トンで前年同月より3万トン下回った。累計は5月までで11万4000トンと、前年同期よりも17万5000トンも下回った。

 ちなみに政府米の買い入れ数量は、政府米の販売実績数量から25万トンを引いた量になることから、このまま推移すると、2000年度の買い入れは「ナシ」ということもありそう?

※関連記事「低迷するお米の販売量と消費量、お米の味ランキングでランク落ちも増加」

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調理の際の塩ビ製手袋使用はダメよ!と、厚生省が自粛要請。

 調理の際に塩化ビニール製手袋を使っていることから、コンビニやスーパーなどの市販の弁当、外食レストランの定食や病院食などで、環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)の一つ、フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)が高濃度で見つかった調査結果を受けて、厚生省は2000年6月14日、スーパー、コンビニ、外食レストラン、弁当チェーンなど関係業界団体に、調理の際の塩ビ製手袋使用を自粛するよう要請すると共に、食品衛生法に基づく規格基準に、調理などに対し、DEHPを使った塩ビ手袋の使用を禁止する項目を盛り込むことも決めた。

 DEHPは、塩ビ樹脂を軟らかくする添加物で、動物実験では精巣への毒性が報告されていることから、環境ホルモンの一つに指定されている。しかし、使用は禁止されておらず、最近では逆にO─157騒動以降、その対策として調理現場で使い捨ての塩ビ製手袋が便利さも手伝って大量に使われるようになった。

 厚生省は、「一生食べ続けても健康に影響がない量」の耐容1日摂取量(TDI)を、DEHPで体重50キロの人に対して、2000〜7000マイクログラム(1マイクロは100万分の1)と設定しているが、国立医薬品食品衛生研究所などの研究班が、昨年8月〜12月にかけて、コンビニやスーパーなどの市販の弁当、外食レストランの定食や病院食などを調査した結果、最高濃度の弁当からは1食で4300マイクログラムを検出、病院食でも、朝昼夕3食の合計で最大2500マイクログラムに達する例があり、DEHPを検出した弁当などは、そのすべてでDEHPを含む塩ビ製手袋が調理や盛り付けなどで使われていたことが判明した。

 また、弁当を詰める実験を行なったところ、使う前と後では、塩ビ製手袋を使って弁当を詰めると米飯で54倍、焼きうどんで51倍のDEHPが検出された。そして、消毒アルコールや高温の揚げ油を使うと、さらに検出量が跳ね上がることも確認できた。
 これらことから、塩ビ製手袋を使うと耐容1日摂取量(TDI)を超えるおそれがあるとして、使用を禁止するよう要請した。また、文部省も、全国約1万7000の学校給食調理場などに対して塩ビ製手袋を使用しないよう都道府県を通じて通知した。

 これらの動きを受けて、塩ビ製手袋の製造メーカーや販売メーカーなど各社は、DEHPを含む塩ビ手袋の製造、販売を中止することを決めた。

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改正JAS法施行。

 遺伝子組み換え食品の表示や有機農産物加工食品の認定・表示、生鮮食品の原産国表示の義務化などを盛り込んだ「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」(改正JAS法)が2000年6月10日、施行された。

 違反した業者には、業者・企業名の公表や最大50万円の罰金が科せられる。
 すべての生鮮食品に対する原産国表示は2000年7月1日からスタート、有機農産物は2001年4月から表示規制をはじめる。遺伝子組み換え食品の表示は2002年4月から義務化する。

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改正JAS法と「有機JASマーク」表示と有機農産物の国際基準


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牛の口蹄疫感染、事実上の終息宣言、感染ルートは依然、未解明。

 2000年5月11日に北海道本別町の肥育農家で2頭の牛が家畜の伝染病「口蹄(こうてい)疫」に感染しているのが発見された問題で、道や農水省などは2000年6月9日、「感染の広がりはみられない」として家畜の移動制限を解除し、安全宣言をした。

 これまで防疫対策本部などでは、発生農場で一緒に飼われていた705頭を殺処分したほか、発生農場から半径10キロ圏内の家畜の移動を制限するなど、139戸の畜産農家を対象に防疫対策を進めてきたが、移動はじめ人工受精などの制限は全面解除された。
 92年ぶりに発生した国内での牛の口蹄疫は、3月25日に宮崎県で確認されて以来、約2カ月半も「非常事態」が続いていたが、今回の制限解除で事実上の終息宣言になると、全国の関係者はみている。

 北海道で発見された口蹄疫は、ウイルス検査の結果、宮崎県で確認されたウイルスと同一とみられているが、発生経路や原因は未解明のままで、風評被害などでのイメージダウンも大きく、農家や関係者の不安は依然として強い。

 このことから農水省などでは今後、安全PRに努めると共に、国際的に「清浄国」として認められるために、全国的な家畜の血清検査を行ない、清浄化の確認作業をすすめる、としている。また、発生経路や原因を解明するために感染源のひとつとして疑いの強い輸入飼料の疫学検査も続ける。

口蹄疫関連のこれまでの記事

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米代金約15億円未収訴訟は「だまされた農協が悪い」の判決。

 1998年10月、自主流通米の販売代金約15億円が支払われないとして、福島県白河農協が食品会社「加ト吉」(本社香川県)を相手に、未収金の支払いを求めて起こした提訴の判決が2000年5月25日、福島地裁白河支部で言い渡され、白河支部は白河農協側の過失を指摘し、加ト吉に支払い義務はないとして農協側の訴えを棄却した。

 白河農協と加ト吉との間での自主流通米の売買契約は1996年年9月に締結され、実際の米取引は宇都宮市の米卸会社「ライスショップ」に対して行なわれた。取引の形態は、加ト吉が農協から自主流通米を購入した形にして、加ト吉は宇都宮市の米卸会社「ライスショップ」にその米を転売するという「右左(うさ)取引」と呼ばれるものだった。
 この取引はまず、値段や数量などの取引条件を農協と米卸で話し合い、加ト吉がその内容を了承する。その後、米卸が農協に米を発注し、米は農協が米卸に直接搬送。農協は請求書を加ト吉に送付、加ト吉は、農協からの請求書と米卸に搬入された米の数量を確認し、農協に代金を支払う。それと共に、加ト吉は、米卸に対して手数料を上乗せした代金を請求し、加ト吉が利ざやを得る。米卸は農協からの米入庫日と加ト吉への代金支払日の差を利用して、運転資金のやりくりを行なうという仕組みだ。

 取引当初は順調に推移したが、翌年には農協に対して加ト吉からの支払いが行なわれなくなり、3月から10月までの未収金は14億7000万円程度に膨らんだ。加ト吉が支払いを止めたのは、加ト吉と米卸会社との間で設定されていた「売掛金の限度枠」があったからで、その時点で、米卸が加ト吉に支払うべき売掛金、つまり債務残高は10億円以上にのぼり、その限度枠を超えていた。

 しかし、米卸は農協側に対して偽造した加ト吉の債務残高証明書を提示、売掛金の限度枠も超えておらず、順調であることを装った。

 裁判官は、こうした複雑な取引形態を米卸会社との間で行なった白河農協に対し「加ト吉に何の確認もせずに、取引にかかわった米卸会社にだまされる形で卸会社に米を出庫し続けたのは、農協幹部らの過失で、その責任は重大」とし、加ト吉には未収金の支払い義務はないとした。

 米代金約15億円、いわば組合員の出資金でもあり、田んぼにはいつくばって得る農家の収入。それが、米卸会社の詐欺的手法で未収金になり、だまされた側の農協は、いらだたしさをつのらせて1998年5月から加ト吉を相手に「払う義務がある」「払う義務も責任もない」の口頭弁論合戦を実施。平行線の弁論は15回にもおよび約2年を費やしたが、「だまされた農協が悪い」とのむなしい裁定がくだった。

 白河農協側は「極めて不当で承服しがたい判決だ」とし、控訴する。

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受精卵クローン牛、食肉市場で初表示の上場取引。

 東京都中央卸売食肉市場で2000年5月22日、受精卵クローン牛の和牛が「クローン表示」されて初取引されたことが東京都の発表で分かった。

 上場されたのは宮城県産の雄牛で、肉質の等級はA3。都内の仲卸がキロ1415円で小売販売用に購入した。

 試験的に肥育された受精卵クローン牛に関しては99年4月、表示のないまま市場に出回っていたことが表面化して問題になり、消費者から疑問の声が上がった。これに対して農水省は、あくまでも「表示の必要はない」と主張していたが、その姿勢が消費者の反発をまねいたため、試験的に一般牛と区分流通させて販売する方針を打ち出し、99年9月、新潟県産の受精卵クローン牛(黒毛和種とホルスタイン種の交雑種)一頭の肉(約352キロ)をクローン牛肉と表示して試験的に販売。その後、全国9カ所の小売店で計18頭分を販売するとともに受精卵クローン牛が生まれる仕組みや安全性などを説明したパンフレットを配布し、安全に対するPRを行なっていた。

 今回の取引は、その騒動以来初めての「クローン表示」での上場で、食肉市場では「国が安全性を認めている以上、特別扱いはせず、他と同様の取引を行なった」としている。

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非遺伝子組み換え大豆、初の上場取引で基準価格を下回る。

 遺伝子組み換え食品に対する拒否感が広がるなか、東京穀物商品取引所の先物取引市場で2000年5月18日、世界で初めて非組み換え大豆が上場された。

 高値の取引が一部で予想されていたが、非組み換え大豆は、受け渡しが最も近い12月限に対しては基準価格の1トン2万9400円を1020円下回る1トン2万8380円だった。これは一般大豆と比較すると約2580円高。
 2001年2月限分の非組み換え大豆は2万8240円、同4月限分は2万8480円でいずれも基準価格を下回った。

大豆の流通
 現在、日本では、大豆消費量約500万トンのうち95%以上が輸入されている。その輸入量の約80%近くがアメリカからの輸入で、アメリカで生産される大豆の半数以上が遺伝子組み換え大豆で占められている。このため、消費者の間では非組み換えの大豆を求める声が強まっていた。また、2001年4月からは組み換え食品の表示が義務化されることから、これに対応して国内の食品メーカーなども昨年から非組み換え大豆の争奪戦を繰り広げ、在庫がだぶつき気味になっていた。

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公取委、農業土木事業談合事件で北海道庁を断罪、北海道内の業者297社に対し、排除勧告。

 公正取引委員会は2000年5月15日、北海道庁が発注した上川支庁内の農業土木事業指名競争入札の談合事件で、業界ぐるみの談合が恒常的に行なわれていたとして、北海道内の業者297社に対し、排除勧告を行なった。また、これまで談合を主導してきた旭川農業土木協会、旭川測量設計業協会、北海道庁に対し、入札制度の抜本的改善を求める要請文を手渡し、再発防止を行政指導した。
 公取委が「官製談合」を断罪したのは全国で初めてで、一度に297社もの企業が排除勧告されたのも初めて。

 調べによると、道庁が発注した上川支庁内の農業土木事業指名競争入札で、1996年10月から99年10月までの3年間にわたって受注総額約600億円規模のかんがい排水整備事業や畑地帯整備事業などの農業土木工事と、測量、地質調査などを、道庁が主導して業者ごとの年間受注目標額をまとめ、業者に天下ったOBなどを通して業者に予定価格を教えるなど、入札前に落札業者を決める「本命割り付け」を行ない、旭川農業土木協会と旭川測量設計業協会を通じて業者間で談合させていた。
 業者は、まとめられた年間受注目標額の「割り付け表」をもとに、自らが落札できるよう他の指名業者と調整。業界団体に天下った道OBが業者と道庁とのパイプ役になり、道は天下りを受け入れた業者を優先して割り付けていた。これらの行為は、今回の事件にとどまらず20年以上前から恒常的に繰り返されていた。

 さらに、これらの業者に加えて、道庁が資本金の約40%を出資し、元副知事が理事長、元農政部次長が常務として天下る財団法人「北海道農業開発公社」に対しては、競争入札ではなく随意契約の形で優先的に昨年までの3年間に工事総額100億円超えという全業者の中で最高額の農業土木事業(草地開発、耕地整備など)を割り当てていたことも、公取委の調査で明らかになった。

 道は今後、賞罰委員会を開いて関係職員の処分を検討するが、公取委が押収した資料などでこの他、道選出国会議員や道議が特定業者が落札できるよう道に働きかけたり、堀達也知事も談合に関わり、業者から政治献金を受けていたことも分かっているため、今後も波紋を呼びそうだ。

 農業土木工事をめぐる談合事件で、堀達也知事は、公正取引委員会から排除勧告を受けた業者からの献金計1540万円を5月中に業者に返還することを決めた。

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農産物輸入、毎月のように増加傾向。

 野菜の輸入量が増加の一途をたどっているが、2000年4月26日に大蔵省が公表した3月の貿易統計によると、生鮮野菜の輸入量は、前年同月に比べて20%増、今年の1月と比べると約60%の増加で、12万トン強になった。

 野菜のなかでも輸入依存がほぼ定着しているネギやシイタケなどは、ネギが前年同月の約75%増で生シイタケにいたっては前年同月の2倍に増えた。また、タマネギも前年同月の約50%増で、国産の品薄感を象徴する輸入状況になっている。

 果実は前年同月に比べて6%増だったが、食肉の輸入は、前年同月に比べて約25%増えた。
 4月以降の関税の引き下げに伴い、食肉は今後もっと輸入量が増える傾向にあり、農産物の輸入依存は止まりそうにはなさそうだ。

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ダイオキシン汚染騒動のベルギー産畜産物、輸入制限解除。

 99年6月、ダイオキシンを含む機械油が飼料用油脂に混入し、鶏肉、鶏卵などから発がん性の高い高濃度のダイオキシンが検出されて騒動が広がったベルギー産畜産物に関して、EU(欧州連合)が「ベルギー国内にある鶏肉や豚肉などの在庫調査がすべて完了したため、制限規制を解除する」ことを決めたことを受けて、厚生省は2000年4月25日、ベルギー産畜産物の輸入制限を解除した。

 国内では99年11月から、ベルギー産畜産物の輸入に関しては、ベルギー政府発行の安全証明書の確認を義務付けていた。今後は、安全証明書がなくても輸入が認められる。

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※昨年の関連記事「ベルギー産の鶏肉や鶏卵のダイオキシン汚染、波紋が広がる」


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米麦などの農産物検査を民間移行する改正農産物検査法が成立。

 これまで食糧庁など国が行なっていた米、麦、豆などの農産物検査を、2001年産から5年間で段階的に民間に移行する改正農産物検査法が、2000年4月21日の衆院本会議で可決、成立した。

 これからは、検査技能や農産物知識を持つ専門の検査員や計測器など所定の機械器具設備があれば、農産物検査にどこの民間機関も登録制で参入できる。
 しかしながら、実際に農産物検査を行なう民間機関は、専門の検査技能が必要なため、当面は農協機関や穀物検定協会などの組織に限られる模様で、ケースによれば、専門の検査部門が、食糧庁などからの天下りの受け皿として拡大する可能性もありそうだ。

 検査手数料は、これまで食糧庁などは米で60キロ当たり50円を設定していたが、今後は、国への届け出制で、民間機関が自主的に決めることができる。

 改正農産物検査法では、不正な検査を防ぐための担保措置が取られていないが、農水省では「不適切な検査が行なわれた場合は改善命令や業務停止命令をだし、適切に指導監督する」としている。

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新規就農者の確保および拡大のための優遇融資制度、就農促進法が成立。

 新規就農者の確保および拡大のための優遇融資制度「青年就農促進法」が2000年4月12日、国会で可決、成立した。

 食料・農業・農村基本計画で「新規就農者を毎年、1万3000人程度確保し、担い手の育成を推進する」という目標を立てたことに基づき、就農者確保のための優遇策として、農業信用基金協会の債務補償で就農資金を特別融資する。

 18歳以上40歳未満は経営開始初年度に設備資金などの目的で2800万円まで、40歳以上55歳未満(知事認定で65歳未満まで可能)は1800万円まで、無担保・無保証で無利子の融資が受けられる。

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JA合併の達成率低迷、構想数に届かず。

 2000年度末までをめどにJA(農協)が推進している農協合併だが、当初予定より大幅に遅れ、2000年4月1日現在での合併状況は、目標構想数524の3倍近い全国で1411農協あることが、JA全中(全国農協中央会)のまとめて分かった。

 香川県では県内45農協のうち43農協が合併して組合員数14万人、貯金総額1兆2260億円という巨大合併農協が4月1日に誕生したが、山形県酒田市の庄内経済連のように、庄内1農協の実現が現実的には無理になり、全農(全国農業協同組合連合会)に統合するなど、歪んだ合併統合の姿も見られるようになってきた。

 農協の合併統合推進の旗を振る農水省は、この遅れに対しては、未合併JAに対して合併を促進するように都道府県などに異例の通達まで出して指導要請しているが、合併のメリットよりも組織保身の色合いが濃い現在の合併の理屈や、これらの影響による今後のデメリットを懸念して合併を敬遠する単位農協も多く、合併協議が決裂するケースも目だってきているのが現状だ。

 今後のJA全中の方針としては、地域農協の合併を推進し、47都道府県単位の農協中央会についても合併農協などへの一部機能の移管などで合理化し、中央組織と地域農協の二段階に組織再編したい意向だが、「人・もの・カネ・価値観・方法論」などの集積を狙った農協合併および統合は、紆余曲折しそうで、なかなかすんなりとはいかないようだ。
 そのため今後は、参加JAの合議制を重視したこれまでの合併手法を見直し、経営基盤が脆弱な単位農協に対しては、吸収合併の手法を用いて、商法上で認められている総会などの承認の省略などで半ば強制的に合併を推進する考えのようだ。

※関連項目として「農協の実相」の記事があります。

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補助金がらみの汚職事件で逮捕の農水省中堅キャリア官僚を東京地検が収賄罪で起訴。

 農水省の汚職事件で、東京地検は2000年4月14日、収賄の容疑で逮捕の元農産園芸局総務課調査官で北海道農政部次長として出向していた事務系中堅キャリア(44歳)を起訴すると共に、香川県の四国大川農協組合長と同農協参事補を贈賄罪で起訴した。

 起訴状などによると、農水省の中堅キャリアは、複数の農業構造改善事業にからんむ補助金の交付先の決定で四国大川農協の計画する施設建設に対して便宜を図り、その見返りに東京都内の高級クラブや現在の勤務地である札幌などでの個人的な飲食費を、97年7月から99年10月ごろまでの間に24回にわたって計190万円を同農協につけ回した、というもの。

 また、96年9月から97年4月までの間にも約90万円分の飲食代金を付け回したとして同地検では追起訴した。

 97年4月から北海道農政部次長として出向中だった容疑者は、95年9月から北海道に出向する97年3月まで農産園芸局の総務課調査官を務めたが、入省間もない頃に四国大川農協がある香川県内の自治体・長尾町にも2年間勤務し、四国大川農協幹部とはその頃に接点ができた。以降、本省の構造改善局や畜産局、農産園芸局など複数の部署を経ながら、キャリア組として、 何かと補助事業にからんで同農協に対して便宜を図っていた。

 四国大川農協は、ライスセンターの建設を96年ごろ計画、農産園芸局の補助金1億4800万円を受け、98年6月に総額約3億6000万円をかけて完成させたが、贈賄の容疑で逮捕、起訴された四国大川農協の組合長ら2人は、「大型冷蔵施設建設計画やライスセンター(米穀の乾燥調製施設)建設をめぐる補助金の交付などで大変に世話になったため」と、賄賂を贈ったことを認めている。

 北海道の堀達也知事はこの事件を受けて「当面は農水省から次長を迎えることは白紙に戻したい」と述べ、農水省出向者の農政部次長への受け入れを当面中止する考えを明らかにしている。
 現在、道庁の農政部次長は3人体制で、1人は1973年以来9代連続で同省キャリアが就任しており、事実上の出向ポストの定位置となっていた。

 農業構造改善事業をめぐる業者との癒着のうわさが絶えなかったため、農水省では 昨年、調査委員会を設置して内部調査を実施したが、ノンキャリアに不祥事の責任を押し付け、キャリア組に責任が及ぶのを避けてきた。しかし、今回表面化した事件により、業者からの過剰接待疑惑で大量の処分者を出した農水省の不祥事は、構造改善局の元課長補佐が収賄容疑で逮捕、起訴から、新たに現職の出世街道を歩むキャリア官僚の逮捕、起訴へと発展。同省の根腐れを象徴するものとなった。

 職員の接待問題を調査していた農水省は6月30日、贈賄側の四国大川農協の幹部と会食やゴルフを行なっていたとして、新たにキャリア官僚1人を含む6人を処分。昨年1月から調査している職員の癒着問題での処分者は延べ26人になっている。

※これを機に把握しておいた方が何かと都合のいい事柄として「農政の実態」の記事があります。
農水省構造改善局汚職事件関連記事

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10年後の食料自給率の目標値を45%とするなどの「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定。

 食糧自給率を現在の40%から2010年度に45%に引き上げることを柱にしたが「食料・農業・農村基本計画」が2000年3月24日、閣議決定された。

 農水省は、食料自給率の目標値などを議論する「食料・農業・農村政策審議会」の企画部会で、2010年までにカロリーベース(供給熱量)で45%、将来的には50%以上を目指すとの原案を提示していた。

 原案は、実現可能性を重視して目標値を低めに抑えたい農水省側と、努力目標として理想的な数値を掲げるべきだとする農協など生産者団体や農林議員側との折衷案となった。

 生産数量や品目の数値設定では、米2・4%増、大豆56・3%増、小麦40・4%増を示しているが、拡大目標での自給率設定では「単なる絵に描いた餅」になる可能性が高く、実現不可能なため、「カロリーベースでの自給率」の設定になった。
 しかしカロリベースであろうとなかろうと、自給率の現実は、農産物輸入にはさらに拍車がかかり、大蔵省が2月25日に発表した2000年1月の貿易統計でも野菜の輸入量は毎年、増加傾向で、生鮮野菜の輸入量は前年よりも24%増え、果実も前年より39%増え、食肉では豚肉が約50%増えるなど、依然として農産物全般での輸入依存傾向は強まっている。
 また、農地の荒廃や農業後継者の不足、農業者の高齢化など、農業を取り巻く現実は厳しい。

 農水省では「目標値そのものに意味があるわけではない」とし、「生産、消費の両面での課題を設定し、それらを解決できれば結果的にぎりぎりの数字として45%程度は達成し得るのではないか」との認識を示しているが、それに関しても「それは当然で、それが出来れば悩みはないが、それが出来ないのが現実」と、早くも農業や消費の現場では、冷ややかな意見が出始めている。

 農水省は、小麦や大豆など品目ごとに生産努力目標と消費目標を積み上げてカロリーベースや金額ベースの総合自給率を設定したり、消費面でも、食生活の改善で減少傾向の続く米の消費回復を促し、増加傾向にある肉類の消費減少を図る、という方針を掲げているが、さて、この台本、うまくいくか否か?

 計画を実行するため、首相を本部長とし、農水相、厚相、文相らで構成する「食料・農業・農村政策推進本部」も発足させる。

 農政に従わない農家や地域には見境もなくペナルティーや圧力を課す行政当局だが、この自給率が達成できなかった際の農水省自体の責任やペナルティーについて農相は「今から言われても困る」と言っている、とか。

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