スポットニュース


最高裁大法廷、宅地並み課税の農地賃料、 増税分の負担を理由に地主が借地農家に対して増額請求するのはダメ ! の初判断。

 市街化区域にある農地への課税の増額を理由に、地主が農地を貸している農家への賃料(小作料)を値上げできるかどうかが争われた2件の訴訟の上告審判決で最高裁大法廷は3月28日、「耕作者の地位の安定を図る農地法の趣旨から、賃料は農地からの収益を基準に決定すべきで、地主が増税分の負担を理由に小作料の増額を請求することはできない」との判断を示し、借地農家側勝訴の判決を下した。

 固定資産税や都市計画税が宅地並みに課税される市街化区域内の農地では、賃料(小作料)よりも地主が納める税金のほうが上回る「逆ざや」の現象が発生しており、地主側は「不合理だ」と主張すると共に「小作農家は農地法による保護を乱用している」と指摘していた。

 これに対し最高裁大法廷は、「地主は宅地の転用などで不利益を解消することが出来るが、小作農には負担を解消する方法がなく、課税額を賃料に転嫁すると著しい不利益を与える」と述べ、税の増額分は地主が負担すべきだとした。

 また、争点にもなった小作料の変更理由を定めた農地法23条1項「増額が認められるのは、農産物の価格や生産費の上昇、その他の経済事情の変動」の解釈で「その他の経済事情の変動」に課税増額が含まれるかどうかについては「固定資産額の増加は経済事情の変動に当たらない」との初判断を示した。

 2件の訴訟は、京都市西京区と奈良県天理市の農地をめぐり、賃料増額の確認や地代の確定に関して争われたもので、京都市の小作農家が起こした農地地代確定訴訟では、小作農家が賃料年額1万9000円との確認を求めた。京都地裁は「年間約39万円」と認定し小作農家側が敗訴したが、大阪高裁では逆転勝訴となっていた。一方、奈良県の地主が賃料増額確認を求めた訴訟では、地主が奈良地裁で敗訴したが、大阪高裁では逆転勝訴となっていた。

 小作農家への課税額転嫁で下級審の判断が分かれたため、今回の上告審で大法廷が統一した判断を示すことになった。同様の訴訟は、1989年にも最高裁大法廷に審理がまわされたケースがあったが、その時は、和解が成立して、今回のような判決に至らなかった。(01・3/28)

BACK


スポットニュース


自主米入札、改正JAS法による表示がらみで魚沼産コシ史上最高値。

 米の入札価格が低迷するなか、品薄感のある新潟県魚沼産コシヒカリが前回をさらに7366円も上回る3万5889円(60キロ)で落札された。

 需要期を迎えての活発な買い意欲だが、その背景には、改正JAS法による表示が4月から開始される事情がある。

 これまで人気の魚沼コシは、生産量よりはるかに多い販売量があった。要は「ニセ表示」の魚沼米の氾濫によるもので、流通や小売が、中身の定かではないものを「魚沼米」として販売する傾向が強かった。
 しかし、表示販売の厳格性を求めた4月からの改正JAS法で、卸や小売がウソ表示をして販売することが難しくなった。これを目前に控えて、2月入札で手当て出来なかった卸などが、「何がなんでも」と買い意欲を高めた。そのため、2月23日に行なわれた第8回の自主米入札で、前回を5325円上回る2万8523円(60キロ)になった新潟県魚沼産コシヒカリは、3月27日の第9回の自主米入札でさらに上昇。入札がはじまって以来、史上最高値をつけた。

 他の銘柄はほとんど横ばいで推移し、60キロ当たりの加重平均価格は1万6000円台を回復したものの、前回より60円しか上がらなかった。しかし、大幅に下落する銘柄もなく、下落は一服して下げ止まり感も漂わせた。(01・3/27)

「稲作やお米関連のミニ知識」にお米に関する解説記事があります。

※番外ニュース(ウソの表示販売の「罪と罰」、入札で魚沼米、天井知らずの高騰)

BACK


スポットニュース


EU域内の口蹄疫拡大で農水省、EU産豚肉などを全面的に輸入停止措置。

 ヨーロッッパで口蹄疫が拡大していることから農水省は、EU域内産の豚肉と羊肉や各加工品の輸入を3月24日から全面的に停止した。

 この措置に反発しているEUは「行き過ぎ」として、近く日本に緊急協議を申し入れる。

 イギリス国内の食肉処理場で、口蹄疫に感染した豚28頭が2月21日に確認されたのを皮切りに、欧州の畜産業界は、狂牛病に続いての受難で、弱り目にたたり目の状態が続いている。

 日本は、昨年のイギリス国内での豚コレラの流行でイギリス産豚肉の輸入を禁止、また、狂牛病対策として今年1月からは、フランスを含むEUからの牛肉などの輸入を全面禁止している。また、3月4日にベルギーおよびフランス、5日にデンマークでも口蹄疫感染の情報が飛び交ったのを受けてこれらの国からの豚肉に対しては一時的に輸入停止措置を取っていた。その後、ベルギー産やデンマーク産については、両国から「口蹄疫ではない」との確認情報が寄せられたので3月13日に輸入停止を解除していたが、「国内への口蹄疫侵入を防止するため」としてEU域内産の豚肉と羊肉や各加工品の輸入停止に踏み切った。 

 イギリスでの発生件数は増加の一途をたどり、3月上旬に100件を突破して以来、現在までに感染地点は500を超えた。そしてこの口蹄疫は、欧州大陸〜南米にも飛び火し、世界的規模で拡大する様相も見せ始めている。

 口蹄疫は、すべての家畜の疾病の中で最も恐れられている猛烈な伝染病で、牛、豚、羊など偶蹄(ぐうてい)類のひづめや口に病変を起こし、死亡率も高い。症状としては、ひづめや口に水泡が出来て高熱が出る。これに感染すると、豚の約60%、牛の約10%が発病して死亡する、といわれている。
 ただし人には感染せず、感染した肉を食べても人体への影響はないが、口蹄疫のウイルスは人に付いて移動するため、人を牛、豚、羊に近付けないことが予防の第一とされている。
 口蹄疫の最大の特徴は感染の速さで、一般的な対策としては感染の可能性がある地域内の偶蹄類をすべて殺す処置が取られる。

 日本では現在、口蹄疫は発生していないが、2000年春に宮崎県と北海道で92年ぶりに発生し、農場の家畜を処分。6月に安全宣言を出した。

 日本がEUから輸入している豚肉は2000年実績で27万4000トンで、輸入全体の42%を占め、国内消費の約18%。(01・3/24)

BACK


スポットニュース


どんぶり勘定の単位農協、経営破たん、農協元組合長で現町長、不正融資で逮捕。

 広島県八千代町の竹岡正秀町長が八千代町農協の組合長時代に2000万円を不正融資していたとして、広島県警は2月20日、竹岡町長と融資を受けた会社役員らを背任の疑いで逮捕した。

 八千代町農協は、理事会のチェック機能などが麻痺していることから99年度末の貸出残高99億円のうち48億円が不良債権化し、このうち25億円以上が回収不能で、2000年9月に経営破綻した。

 2月18日、八千代町農協側が組合員に対して債務超過に陥ったことに関する役職員の経営責任を示す説明会では、竹岡町長が組合長だった1987年から12年間にわたって融資限度額を超えたり、大口融資を審査する理事会が開かれていなかったことなどが判明。同農協は「町長(元組合長)に20億2500万円の損害賠償を請求する」とした。
 組合員利益を守るのが基本の農協だが、組合員の出資金も原則、25%減額される。

 このことから説明会では、ずさんな実態が明らかになった農協に対して組合員(農家)から「組合長が最も悪いのは分かるが、見過ごした役員も悪い、役員全体の責任だ」「町長はやめろ」の声があがったが、竹岡町長(元組合長)は「やめると返済に差し障る」などと横柄に答えた、という。

 今回の逮捕者は、町長(八千代町農協元組合長)、八千代町農協参事、融資を受けた結婚相談所会社役員と会社員の4人。
 逮捕容疑は、会社役員らが担保にした土地や建物には、別の金融機関などの抵当権が設定されていたのにもかかわらず元組合長が参事と共謀して2000万円を不正に貸し付け、同農協に損害を与えた疑いだが、これまでも同人に対して、内規で定められている同一 貸付先に対する融資限度額を超す2億円以上の融資を行なっていることから、広島県警は、同農協などの家宅捜索で押収した資料の分析を急ぎ、不正融資の動機や他の融資の実態も調べる。
(01・2/21)

BACK


スポットニュース


農産物輸入が増加の一途、2000年の貿易統計。

 財務省がまとめた2000年の貿易統計で農産物輸入が増加の一途をたどっていることが改めて確認された。

 セーフガードの要求が高まっている野菜は過去最高の281万トンで、うち生鮮野菜は92万トンと、生鮮野菜輸入100万トン時代が間近になった。
 生鮮野菜のなかでも特にシイタケ、ショウガ、ネギが40%近く増えて、中国からの輸入が急増した。

 果実類も増加の一途で、前年比10・9%増の188万トンと、果実輸入200万トン時代が近付いた。
 食肉は、牛肉が約72万トン、豚肉が約65万トン、ブロイラー(鶏肉)が約56万トンと、それぞれ2〜8%増加し、これもまた200万トン時代が目前に迫った。

 なかには前年より輸入が減っているものもあり、ブロッコリーは13%減の約8万トン、カボチャは14%減の約13万トンで、アメリカ産の不作が影響した。

 急速に輸入が増えはじめたのは1998年以降で、その年の国内産の高値野菜から、外食産業を中心に商社などが安いアジア諸国からの輸入に転じたことも一因になっている。(01・2/20)

●中国産野菜の日本への輸入が急増している問題で、両国政府間の初の事務レベル協議が2月20日、北京で行なわれた。
 日本側は、日本の生産農家に及ぼす影響などをセーフガード(緊急輸入制限)の発動を前提に調査中だと伝えた。これに対して中国側は「一方的な貿易制限には反対だ」と発動を自制するよう要求した。

 今後協議を継続するが、国内では生産農家の訴えにより、全国で約800弱の市町村議会が政府にセーフガード発動を求める決議を採択している。

BACK


スポットニュース


狂牛病の侵入防止対策で牛肉加工食品も輸入禁止へ。

 厚生労働省は2月3日、狂牛病に感染した牛の肉や臓器、牛肉加工品なども法的に禁止できるよう、食品衛生法を一部改正することを決めた。

 食品衛生法では、特定の疾病にかかった疑いのある家畜の肉や骨、臓器などの輸入、販売を禁じているが、これまで狂牛病に関する規定がなく、輸入自粛などを行政指導するしかなかった。施行規則で、新たに狂牛病を追加する。

 家畜伝染病予防法に基づいて農水省が1月、国内への「狂牛病」の侵入を防ぐために、EU(欧州連合)加盟国およびスイス、リヒテンシュタインの17カ国からの牛肉や加工品、精液、牛骨粉などの動物性飼料などの輸入を1月から全面的に禁止したが、牛を原料とする加工食品などが含まれていないため、牛肉加工品も輸入禁止にする。補助食品など原料が高度に加工された食品は対象外だが、輸入自粛を行政指導する。(01・2/5)

狂牛病:正式な病名は「牛海綿状脳症」。異常プリオン(たんぱく質)が病原体で、主に飼料を通じて伝染。感染した牛は、脳がスポンジ状になって神経マヒ症状を起こして死ぬ。
 1986年にイギリスで見つかったのが最初で、その後、感染した牛の遺骨が飼料に混入し、その飼料を再び牛が食べる食物連鎖で蔓延していった。
 96年、イギリス政府が人間にも感染することを認めたことでパニックにもなった。
 ヤコブ病との関連性も高く、イギリスで77人、フランスで2人が死亡している。

EUの動向:EUの首脳会議は2000年12月7日、「狂牛病」への対策として、感染源と見られる動物性飼料を無期限で使用禁止とすることを決めている。
 動物性飼料の代わりには、たんぱく質の補給源として主に大豆が利用されることになるが、EUの大豆自給率は4%のため、輸入に頼らざるを得ないのが実情。しかも輸入大豆は、そのほとんどをアメリカ産に依存しているため、EUが規制している遺伝子組み換え大豆との関係をどうするかなど、新たな課題が持ちあがっており、今後、EUは、飼料をめぐって苦しい選択を強いられそうだ。

 EU内の牛肉市場は消費量が30%近くに落ち込んでいるが感染源のひとつとされる脊椎組織が肉に付着する恐れの大きい「スペアリブ」「Tボーンステーキ」など肉付き牛肉も全面的に販売禁止することが決められた。これによりさらなる消費量の減少が予測されている。

ブラジル産牛肉も危ない?:アメリカとカナダおよびメキシコは2月2日に「ブラジルの狂牛病対策が不十分」として、ブラジルの一部牛肉製品(缶入り牛肉)の輸入禁止を決めている。

 日本はブラジルから「コンビーフ」などの缶詰を輸入しており、その量は総輸入量の約半分。年間量にすると約600トン強がブラジル産だが、輸入禁止には至っていない。

BACK


スポットニュース


米の精米表示での不正、相変わらず。

 米の安売りが続くなか、販売用の米袋に「新米・魚沼コシヒカリ」「新潟コシヒカリ」などと書いていながらも、中身はまったくのデタラメで、古米や別もので袋詰されて売られるケースも多いのが現状だが、食糧庁は1月25日、精米表示に関する流通業者への立ち入り検査結果を発表した。

 検査は2000年10月〜12月にかけて行なわれたもので、検査対象は1万6468件にのぼった。うち精米年月日の漏れ、産地・産年・品種のウソ、商標ナシなど、基本的な不正表示が3022件もあった。

 表示と中身が一致しないデタラメが確定できたのは5件で、2件については「極めて悪質」として業務改善命令を出した。(01・1/26)

BACK


スポットニュース


有明海の海苔不作が深刻化、諌早湾干拓の影響を指摘する声が高まる。

 海苔生産の内、全国の生産量の4割を占める九州有明海での海苔の不作が深刻になっている。
 漁業関係者らは「諌早湾干拓での堤防締め切りが原因で環境が激変、植物プランクトンの大量発生や藻の多発などで生産量が大幅に減少した」と指摘すると共に、「生産量が前年比64パーセントに落ち込んでいるばかりか、色落ち被害(海苔が黄土色になる)など状況は深刻だ」「海苔以外にタイラギなどの漁も不振で、海の生産構造が変化しているのではないか」として農水省に対策を求めている。

 これを受けて水産庁は1月18日、対策本部を設置。また現地連絡会議も開き、全域の環境調査をして海苔の不作原因のみならず有明海全体の現状を探り、対策を講じることを決めた。
 現地連絡会議では、水産庁と福岡、佐賀、長崎、熊本の有明海沿岸の4県が合同で、有明海全体をとらえた調査を進める。

 漁業関係者らは「因果関係を含め調査も大事だが、今年9月の漁期までに有効な対策がなければ廃業するしかないという現実も深刻だ」として、今後、魚連を軸に、諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の常時開放や諫早湾干拓工事の中止などを求め、抗議行動を取ることを決めた。

 「排水門開放に応じなければ、今後も抗議活動を継続する」としている漁業者らに対し、これまでかたくなに「排水門開放はできない」としてきた農水省だが、今回ばかりはそうもいかないようだ。

 自社の特徴として、すべてに有明海産を使用する「手巻きおにぎり」のコンビにチェーン店や煎餅店、贈答用高級海苔の販売会社などもこの状況を深刻に受け止めているが、「耐えるしかない」「様子を見たい」としている。問屋が在庫を持っているため、すぐに小売価格にはね返ることはないが、今後、高級海苔を中心に値上がりする可能性は大。(01・1/19)

●その後の動向は「地域動向ニュース」記事:「農水省の対応に怒った有明海の漁民、諫早湾干拓事業の中止を求めて座り込み、そして農水省に直談判」を参照のこと。

※諌早湾干拓については、バックナンバー記事「揺れる諌早湾干拓」があります。

BACK


スポットニュース


どうなる? 21世紀の「農・食・医」、そして今どきの農村政策。

医の分野
 1978年の国際保健会議を境に、大きく国際的医療の流れが変わったにもかかわらず、日本の医療の分野はかなり立ち遅れている。
 その会議では、健康な世界を実現するためには、科学技術を基礎とした近代医療だけでなく、健康に役立つものであれば、各民族に伝わる伝承医学も活用しようということが決められている。東洋医療や民間医療等が近代医療と同等の立場から「代替医療」と呼ばれるようになり、公的な代替医療の研究機関がすでに各国で設置されるなど、医療の多極化時代は、早くからがはじまっている。
 また近年、WHO(世界保健機構)では「健康」の定義として、肉体的、精神的、社会的、に加えて、新たにSpiritual=霊性な健康が加えられた。世界はこのような時代に入っている。 

 日本でもようやく最近になって「代替医療」という言葉を見たり、聞いたりするようになったが、第一回日本代替医療学会が開かれたのは平成10年11月。国際的医療の流れからは、かなり遅れての「代替医療」の登場だ。
 医療費30兆円、このままいけば医療費で日本の経済も破綻しかねない。医療中心の保健政策を改めるため、自己責任型の健康政策にシフトせざるを得なくなるのは必至だ。
 「医師」という名で法律に守られた医療のあり方、医療産業と病院のあり方も、やまぬ医療過誤に象徴されるように限界が見えている。
 最近では、近代医療では治らないので自然療法に変えたという話もよく聞くようになった。ちょっと前までは、そんなことを口にすれば怪訝な顔をしてみられたものだ。しかし今は、興味ある顔付きで自然療法の話に聞き入る人も増えてきた。こんなことからも21世紀は、日本でも「代替医療」の研究がますます活発になることは間違いないだろう。同時に国民の医療を選ぶ選択肢が制度的にも拡大されることになるだろう。

食の分野
 食の分野は、医の分野と切り離す訳にはいかない。
 例えば、癌についていえば、食事と癌発生に関する研究論文を検討した結果として1997年に、アメリカの癌研究財団・世界ガン研究基金では、「穀類(未精白)菜食のすすめ」や「脂肪食の制限」「肉食の制限」を勧告している。その確実な結果は、未だ出ないにしても、それを実践した場合、癌の死亡率、発生率、共に減少傾向を示しているというデータが出始めている。

 日本の場合、旧厚生省などは「伝統食の見直し」は策定しているものの、「肉を減らしましょう」とは勧告しない。食事だけで癌になるものではないが、分かっているところだけでも食事による癌対策を施し、これ以上乗り遅れない為にも、「分かっていても勧告できない」という官庁の姿勢を自らが改める必要がありそうだ。
 また、ケミカル食品、遺伝子組み換え食品が氾濫する中、「選ぶ」という行為ひとつにしても、食とからだの関係を考える人と、だだ食欲にまかせてモノとして食を捉える人との差は、ますます大きくなっていきそうだ。
 伝統食の普及に関しては、女性のあり様が大きく影響するだろう。男女共同参画社会基本法が誕生したことだし、そろそろ女性本来のちからを発揮してもらいたいものだが、現行の男女共同参画のとらえ方ではその期待も2001年は薄いだろう。

農の分野
 いのちの源を担う農業は今、いうまでもなく厳しい環境に立たされている。市場開放により海外からの農産物輸入は増加の一途を辿り、日本の農産物は市場競争力を失い、瀕死の重傷だという。
 しかし、どっこい、これからの世紀は「農業」が重要なキーポイントを握り、未来永劫、最も必要な産業、あるいは人間の基本的な営みとして改めて認識され直されることは確実だ。

 とはいえ、これまでの農業を取り巻いていたあらゆるシステムとメカニズムの範疇で進む限り、農業の未来は暗いのもまた確実。
 これまでの縛りを取り払い、「農の空間」に潜在するありとあらゆる可能性を追及していく方向が見い出せれば、農業および農は、ダイナミックにこれからの世紀を担っていくだろう。

 その一端に気付いた人たちのおおらかな取り組みが拡大することで、これまでの農業を取り巻いていたあらゆるシステムとメカニズムは、前世紀の遺物として自然と要を成さなくなり、農を基軸にした生きとし生けるもののたちの営みにより、新しい視座が提示されていくだろう。(01・1/7)

今どきの農村政策

省益固執で綱引き

 「農村の地域づくりを担うのは国土保全や建設行政の重要な課題だ」とする国土交通省と「農村整備事業は農業政策の要を担うわがほうが主管官庁だ」とする農林水産省が、農村政策の主権をめぐって綱引きを始めている。

 省庁再編をにらんだ農水省が、これまで国土庁の手にあった農村整備事業を自らの縄張りに一本化しようと2000年12月に「明日のふるさと21」をまとめると、国土交通省が発足早々、旧国土庁や旧建設省が掲げてきたこれまでの「農村整備事業計画」をベースにした農山漁村地域振興に関する提言をまとめ、引継ぎをアピールするなど、早くも「農村振興」を名目にした「公共事業」での利権争いが表面化してきた。

 都市の過密化と農村の過疎化が問題になる中、国土庁は1974年に発足。以後、地方振興局に農村整備課を設置し、国土交通省に統合されるまでの26年間、「快適な農山漁村環境の向上」を旗印に、農村地域の整備事業を施策してきた。また、建設省も道路などいわゆる条件不立地に対する社会資本整備を担ってきたこともあり、国土交通省とすれば、今後もこれら一連の整備事業を握っておきたいところだ。

 一方、農水省とすれば、国土庁が統廃合されたのを機に省内に農村振興局を新設したこともあって、今後は既得権益として農村整備事業を自らの手中に確実におさめたいところだ。

農村の活性化策

 「環境に優れた地域社会」「真に豊かさを感じられる地域」「個性豊かな多様性のある地域」などなど、国土交通省や農水省がこれからの政策として掲げる農山漁村活性化のベースとなるイメージは、基本的には同じだ。

 例えば空間整備。国土交通省の旧建設省部門が、地域社会が元気を取り戻す起爆剤にと、全国で体験学習ができる環境護岸の整備として、河原で歴史や自然の体験学習ができる 「水辺の学校(楽校・がっこう)」づくりを進めれば、農水省が都市住民を呼び込むことで地域の活性化を図ろうと、圃場整備を利用した宅地化、市民農園や水辺空間の整備など、いわゆる「グリーン・ツーリズム」の推進を行なうといったあんばいだ。また、「グリーン・ツーリズム」路線上では、それに環境省(旧環境庁)が加わり、地域環境を改めて見直す基盤整備として、地域独自の風土や自然環境保全の取り組みとして「エコミュージアム」づくりを進め、環境教育や地域活性化対策に取り組むなど、省庁間での競争も激しい。

 農村地域とすれば、双方が公共事業の施策競争をすればするだけ社会資本の整備が進むこともあり、この既得権益争いを歓迎したいところだ。
 だが、旧態依然としたいわゆる箱物づくりや、行政伝統の土建利権的な公共事業の押し付け、融通性のない決められた補助事業のノルマ的な消化にもつながりかねず、しかもその結果として、「個性豊かな多様性のある地域」づくりの実現とはほど遠い、パターン化された画一化路線上で地域が踊らせられかねないため、「地域住民・国民利益優先や省庁のスリム化をうたった再編ならば、まずは省益に固執するのだけはやめてもらいたいものだ」の声もあがっている。

 また、「生産」というのもをベースにした活性化策は、戦後農政が一貫して掲げ、補助事業とからめてありとあらゆる誘導政策を行なってきた農地の流動化促進で、一言でいえば「地域条件にあった土地利用や農地利用をすすめるために農地を集約(農地の利用集積)する」というもの。
 個性豊かな多様性のある地域、という文言を掲げながらも、実は、政策の現実というものは、「集約・集積」に象徴されるように、いわば強制的な「画一化」路線をまっしぐらに進もうというものだ。
 そして、手法とすれば、地域社会の掲げる構想に順応するというよりも、唯一の切り札としてきた「目の前にカネをぶら下げて喰いつかせて従わせる」という「先に補助金ありき」の粘着停滞型の典型ともいえるようなもので、中央集権体質に染まりきった施策が傲慢な手法とセットにして用意される。
(01・1/30)

BACK


スポットニュース


21世紀最初の売買となる卸売市場の「初市」硬調のスタート、どうなる? 今年の国内産農産物動向。

卸売市場の「初市」硬調のスタート

 1月5日、全国各地で21世紀最初の売買となる「初市」があった。
 超低空飛行を続けている農水産物の価格は、気前のよいご祝儀相場とまではいかないまでも、冷え込んだ景気に喝を入れたいという市場の思いが込められたのか、久しぶりに少し高め傾向で売買が成立した。

 東京・築地市場の水産部での初セリでは、青森県大間沖の津軽海峡で水揚げされた一本釣りの202キロの本マグロが1キロ当たり10万円、総額2020万円の超高値で競り落とされ、単価、総額とも過去最高値を5年ぶりに更新した。
 東京の大田市場や大阪の中央市場での青果では、寒さによ生育遅れが影響してか、全体的に入荷量が少なく、その分、引き合いが強くなり、久々に活気あるセリになった。なかでも葉物類や果物類が好値で取り引きされ、硬調のスタートとなった。

(01・1/6)

どうなる? 今年の国内産農産物動向

 米の動向としては、低価格を記録した1999年産米の平均価格からさらに1000円近くも下落している。
 今後の2000年産自主流通米は、計画外米流通が一段落すると共に、緊急総合米対策の名の下に24万トンを完全に市場から隔離する県別配分の「特別調整保管」が実施されることや、4月から改正JAS法の適用を受ける「精米表示」も加わり、卸や小売の自主流通米に対する需要が増すことが予測されることなどから、取引価格の下落状況が一旦はおさまる、との見方もある。
 しかし、一時的には流通の現場で手当てする動きが出るにせよ、米の取引価格がこれを境に上昇傾向に転じる可能性は低く、米の低価格傾向に歯止めをかける決定的な要素にはなりそうにもないのが現実だ。
 実際には、市場では過剰感が支配的だし、消費者の米離れは依然続いている。また、景気の悪さも影響して、消費者の低価格指向は根強い。

 野菜の動向としては、米同様に近年の低価格には歯止めがかかっていない。その最も大きな要因は、輸入野菜の増加といわれ、商社や外食産業およびスーパーなどの買い付け情況も、依然として低価格農産物の流通に目が向いており、特に韓国や中国からの野菜は国産の半値以下で市場に出回っていることなどから、見通しは決して明るくない。

 果物の動向としては、牛肉・オレンジなどの輸入自由化で国内農産物として最も早い時期に影響を受けたが、近年は平均的に安定している。輸入果実とのすみ分けも出来つつあり、品質を大切にしていけば十分に成立する可能性は高い。

 花卉の動向としては、一時のブーム的な盛り上がりはないが、堅調な推移だ。果物のように味覚を楽しむものではないが、視覚やその場を楽しむものとして需要は確実にある。

 畜産の動向としては、低価格指向が続いているのに加え、健康の観点からの「肉離れ」も徐々に表面化し始めた。飼育方法も効率化を追求するあまりに、安全性から次第に遠ざかっているのが現実だ。安かろう悪かろう不味(まず)かろうの悪循環も手伝い、見通しは決して明るいとは言えない。

近年の農産物販売価格:2000年の農産物全体の販売価格は前年比5・3%ダウン。1995年頃からだと12・5%ダウンしている計算になる。

BACK