狂った羅針盤、ジャンクな政治で難破し続けるポンコツ船日本丸。
小泉、安倍、福田、麻生。この四馬鹿政治で日本丸は遂にポンコツになったようだ。
ジャンクな政治の糸口を作ったのが小泉純一郎だったのは、今では言うまでもないことだが、それと同時に今に至れば、有権者の多くが、2005年9月の「集団ヒステリーにも似た錯乱状態下での小泉選び」の誤りを痛いほど自覚しているのも確かなことだ。
確かに、あの当時の衆院選結果は小泉元首相が持ったスター性があればこそのものだった。郵政選挙で有権者の多くは、古い体質の政治との決別を夢にまで見て支持率を上げた。マスコミや多くの有権者に幻想を抱かせた小泉の作戦は間違いなく勝った。
しかし現実の日本は、その小泉政治の弊害に直撃されて青息吐息になり、国民からの信任を得ずにリリーフにあがった安倍、福田、麻生のさらなる腑甲斐無さで、ジャンクな政治は救いようもない状態になっていった。そして今、国じゅうがため息だらけの状態だ。
ジャンク品
(Junk)
そのまま使える見込みがないほど故障・損耗して、製品としての利用価値を失っているが、一般的にはまだ有用な製品。
ジャンクフード(junk food)
カロリーは高いが、他の栄養素であるビタミンやミネラルや食物繊維があまり含まれない食品のこと。
ジャンク債
一般に投資対象として不適格な債券のことで、格付け機関の格付けがBB
(S&P)、Ba(Moody's)以下の債券を指す。
ジャンクメール
ひとの迷惑も省みずメールを無差別に大量配信するゴミメール。 |
ジャンク政治の口火をきったのが小泉であるにもかかわらず、今もって小泉幻想に軸足を置いている人もいるにはいる。その人たちのためにも、彼の失政の象徴例を挙げておこう。郵政民営化に焦点があたり気味だが、「失われた10年」がさらに延長して「失われた20年」になろうとしている今、構造改革という耳障りのいい言葉で押し進められた小泉政治を少し、整理しておく必要があるようだ。
地方が悲鳴をあげる結果となったのは、小泉政治の緊縮財政だった。
緊縮財政=無駄な支出を抑える=のには誰も異論を挟む余地はなかった。しかし、緊縮財政という政策は言葉を換えれば「財政政策をとらない」という政策でもあった。財政政策をとらないで「歳出カット」「金融緩和」「景気浮揚」という名の金融政策に走ったのが小泉政治(むしろ竹中平蔵策と言えるのかも知れないが)だった。そしてその失政(財政政策抜きの金融政策)は、「日本が犯した重大な政策ミス」として世界が悪例の象徴として挙げるまでに至った。
その金融政策の失敗の流れを大つまみにザクっと整理すると以下のようなる。
1)デフレ不況にもかかわらず歳出を絞った(財政政策をとらなかった)。
2)資産デフレが起こった。
3)金融機関が危うくなった。
4)助けるために日銀金利を下げて金融機関をカネでジャブジャブにした。
5)金融機関はなんとか生き延びたが、外資がタダ同然の資金を借りて、日本資産をディスカウントして買った。
6)投機市場に資金が大量に流れた。
7)「日本の資金」の目減りが起きた。
8)日本のシステムが崩れはじめた。 |
シンプルに言えば、金融政策と「弱肉強食」「適者生存」「優勝劣敗」などという生物界の進化論意識を、人の道を知らぬまま人間界に得意げに持ち込んで国の運営を行なったばかりに、格差社会が定着し、取り返しがつかない状態一歩手前に陥った、ということだろう。
その足腰が弱まった日本経済は、アメリカのサブプライムローン問題が引き金になった金融危機で、株価の下落に始まる資産の下落、企業経営の危機、失業率の上昇、輸出産業の凋落、GDPの下落、などなど、一気に急坂を転げ落ちるまでに至ったのはいうまでもない。
小泉自身の姿勢実態を分かりやすく象徴するのが首相官邸ホームページだった。人気がありアクセスが増えた、という小泉政権の5年間で運営された首相官邸ホームページだが、それに約10億円、メールマガジンに約8億円を平気で使っていたのだから、彼の構造改革意識はたいしたものだった。
麻生では次の選挙は戦えない。それは小泉が言うまでもなく自民党全体の認識だろう。だが、よほどの馬鹿でない限り、有権者の中には小泉劇場の再演を見て心踊らせる者は、一部の人間を除いてもう殆どいない。
一部の人間とは誰か。
商業マスコミがネタとして騒ぐのは世の常で、それは仕方のないことだが、それ以外に、まだ小泉幻想を抱く者たちがいる。
その筆頭が、奥田碩(トヨタ相談役・元経団連会長)だろう。
彼は、「顧問に小泉元首相を据えるためだ」と意気まいて新シンクタンク「国際公共政策研究センター」 を創設するほどだから、小泉への傾倒度は強い。
その彼は「顧問に小泉元首相を据える」シンクタンク設立のため、トヨタ+経団連の看板を盾に各社トップを口説いて回った。そして、歴代経団連会長を輩出した企業、東電、新日鉄、トヨタ、キヤノンの4社には、各1億円ずつを、副会長を輩出した企業を中心にして約40社には2000万円ずつを寄付させ、都合12〜18億円をかき集めた。
そして、「小泉シンクタンク」は、東京・日本橋の三井本館に事務局を置き、2008年から任意団体としての活動を始めるに至った。2月の小泉のロシア訪問も、この小泉シンクタンク「国際公共政策研究センター」としての仕事の一環として行なわれたものだ。ちなみに小泉の年間顧問料は6000万円をこえるといわれる。
「国際公共政策研究センター」設立時の主だったメンバー
会長・奥田碩(トヨタ自動車相談役)、理事長・田中直毅(エコノミスト)、顧問・小泉純一郎(元首相)
理事・三村明夫(新日鉄会長)、勝俣恒久(東京電力会長)、内田恒二(キヤノン社長)、古川一夫(日立製作所社長)、佃和夫(三菱重工会長)、西尾進路(新日本石油社長)、西田厚聰(東芝社長)、大坪文雄(パナソニック社長)、畔柳信雄(三菱東京UFJ銀行会長)、小島順彦(三菱商事社長)、山元峯生(全日空社長)、米倉弘昌(住友化学社長)、和田紀夫(NTT会長)、亀井淳(イトーヨーカ堂社長)、岩沙弘道(三井不動産社長)、江頭敏明(三井住友海上火災社長) |
奥田が小泉のために熱を入れるのには理由があった。
■理由、其の一■5 年半の政権担当中に米国のブッシュ(当時大統領)との間で「愛犬ポチ」と称されたように絶対的な信頼関係を確立した小泉は、日本が、経済低迷していた2003年から04年にかけて35兆円もの巨額な為替介入で円高ドル安の進行を遅らせて輸出企業を下支えしていた時期に、日米首脳会談で米国からの強い要請である自衛隊海外派兵や郵政民営化を頑固に押し進めることなどとの引き替えに、ブッシュの口から「米国は強いドルを望む」と言わせることに成功した。
米国を最大の消費地とするトヨタを筆頭にした輸出産業の活動に対して、米産業界からどんなに批判が起ころうとも、日米経済摩擦には発展させない約束をブッシュから取り付けたのである。
その成果に喜んだ奥田は当時、経団連会長として、また経済財政諮問会議の一員として、郵政民営化をはじめとする小泉構造改革の旗を振り続けた。
■理由、其の二■そして小泉は、大手企業とりわけ製造業への人件費削減に寄与する「製造業への派遣の解禁」を盛り込んだ労働者派遣法改正(2004年施行)を強行採決し、製造業を中心とする財界のために大きく貢献した。それを受けて経団連が、派遣を正当化するための演出で、派遣会社グッドウイルを称えることまでやってのけたのは記憶に新しい。人件費を低く抑えるばかりか、企業の都合でいつでも解雇できる派遣は、経団連側にとっては称えて余りあるものだった。
※結果、10万人単位の非正規雇用労働者が「解雇」され、放り出された。不安定な非正規雇用労働者の雇用形態、低所得、保障の欠如、これが労働者派遣法改正だった。派遣法は企業の経営者利益を守る一方で、労働を劣悪な状況にまで追い込んだ。
加えて、竹中平蔵(当時・総務相)が特別顧問におさまる人材派遣会社パソナは、銀行の金庫室だった大手町のビル内地下2階に農場を作り、発光ダイオード(LED)などの人工照明で稲や野菜、花など約100種類を栽培し、農業分野の規制緩和に先駆けた試みとして小泉と共に話題づくりに勤しんだ。しかし、「新たな就農への道」「農業危機を救う」などと小泉がぶち上げるなど、2005年に鳴りものいりでオープンした太陽の当たらない農作物工場は、2009年4月であっさり閉鎖が決まった。「ビル側との交渉で賃料増に応じられなかったため」が表向きの理由だが、自然の摂理に逆行する地下農場は、永続性という農業の基本すら分かっておらず、結局は使い物にならなかった。
■理由、其の三■05年の「郵政選挙」では、それまで民主党の独断場だった愛知県を中心にトヨタがなりふり構わぬ小泉自民党支援にも動いた。政界と経済界のトップに君臨していた当時、二人は『最強タッグ』だった。
■理由、其の四■しかし、トップを退くと誰も最強だとは思わないのが浮世というものだ。握った権力は寝てみた夢の握り物のようなものに変わる。にもかかわらず、一線を退いても一度見た甘い夢や権力という蜜の味は忘れることが出来ない。二人はいつまでも最強のタッグだと思い込みたいのか、これまでに築き上げたギブ・アンド・テークの絆を、シンクタンク創設を通じて引き続き堅持し始めた。
財界お抱えのシンクタンクを基盤にして、いわゆるフィクサーを演じたい欲が小泉にはある。政界での駒は、さしずめ「小泉チルドレンンたち」と家業として世襲で議員を引継ぐ息子か。
彼等彼女等を便利に使い、財界との連携プレーを仕掛ける。理屈に感情をそそぎ込むか又は感情に理屈の枠を張るかどっちか分からないが、とにかく自己都合の筋道を付けないと承知しないし、筋道を自分で引くとその筋道を生かさなくってはおれないように振るまう。そんな改築後の劇場で開幕される小泉芝居はもうウケない。勿論、ロビー活動的な任意団体を「シンクタンク」と称すること自体、滑稽極まりないのは他でもない。
「先の自民大勝は誰のおかげだ」と恩着せがましく言いたがる小泉には、これからの活動を有効に機能させる能力がないことが見て取れる。むしろ出来ることと言えば、欲と固執で陥ってしまう罠にみんなを引っぱり込むことくらいかも知れない。
「(麻生首相に対して)怒るというより、笑っちゃうくらい、あきれている」「(定額給付金の財源に関する法案を)3分の2を使ってでも成立させなければならないとは思えない」。
遅きに失した小泉の麻生批判は、的だけは得ていた。そこまでは良かった。しかし、よせばいいのに男をさげてしまう気持ちを抑えきれなくなったらしい。
女々しくも「先の自民大勝は誰のおかげだと思っているのだ」と言いたくなったようで「(衆議院議席の)3分の2が使える今の議席数が何によってもたらされたものであるのかをよく考えてほしい」とまで言い放った。
発言がブレる麻生に対して、今回の小泉発言はピントがボケた。例えは悪いが、さしずめ麻生が「目糞」なら小泉は「鼻糞」の、どっちもどっち、というのが有権者の正直な見方だろう。勿論、民主党の小沢も「同じ穴のムジナ」なのではあるが。
海外のメディアは「なぜ、世界第2の経済大国に無能な指導者しか生まれないのか」と哀れみの声をあげる。それと共に「日本のポンコツ政治の病根は、ひどい政治家を国会に送り続けている日本の有権者にもある」と指摘し続けていることも、有権者一人ひとりが自分の問題として改めて受け止める必要がありそうだ。
保守的な国・ニッポン。どうしようもなく保守を愛する国民性は疑う余地もない。自民も民主も保守には変わりないのだから、どっちもどっちならば、醜聞で賑わおうとも、この際だから、一度、民主党に政権をとらせてみるのも悪くはない。
【記:2009.3.4 沢渡一平(Ippei
Sawatari)】
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