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【7月/目次】
▽【
復興担当大臣問題松本龍復興担当大臣、就任早々、智慧のないボンクラぶりで周囲から酷評、結果的に辞任
【6月/目次】
▽【菅政権後の震災復旧復興政策対応菅政権の中枢幹部ら、菅首相が月内に退陣表明することを念頭に調整に入ったが失敗
▽【欧州の脱原発の動き伊、原発に決別 原発再開の是非 国民投票で「原発再開反対派」が圧勝
【5月/目次】
▽【放射性物質の山間地汚染市民 お手柄 福島県山中の雪から放射性物質検出
▽【放射線量の基準対応文科省、児童生徒の許容年間放射線量 1ミリシーベルト以下を目指す
▽【東電の事故対応東電、震災による原発事故発生から70日以上経ってやっと「炉心溶融」を認める
▽【放射線量の基準対応衆院科学技術特別委で放射線医学の専門家ら 政府の被曝基準に対して相次いで批判 
▽【原発立地計画原発に協力的な立場だった山口県知事、上関原発立地の埋め立て免許延長で慎重姿勢に方針転換/周南市議会 上関原発建設中止を求める意見書を全会一致で可決
▽【
福島第一原発半径20キロ圏汚染高放射線量 毎時80マイクロシーベルト超も
▽【
放射性物質汚染神奈川の「足柄茶」が基準値超えセシウム初検出/出荷停止解除後に福島市のカブ基準値超え再検出/福島周辺の各県では汚泥の焼却灰からセシウムの検出が相次ぐ
▽【
使用済み核燃料貯蔵・処分施設と日本極秘に日米、使用済み核燃料貯蔵・処分施設をモンゴルに、昨秋から交渉、と毎日新聞が報じる。
▽【放射性物質汚染旬の山菜から暫定基準値超えの放射性セシウム/浪江町の土壌からは78万ベクレル
▽【
菅政権の原発事故対応菅首相、中部電力浜岡原発の稼動を一時的に休止要請
▽【
放射性物質の海洋汚染福島第一原発沖の海底の土から、通常の100〜1000倍の濃度の放射性物質を検出、原発港湾内の土からは約3万8000倍のセシウム
▽【
放射線量の基準対応ノーベル賞受賞の米医師団 年間20ミリシーベルトを目安として設定した学校放射線基準は「安全ではない」と声明
▽【
菅政権の原発事故対応共同通信社のアンケート、知事の半数超が首相の対応を評価せず批判/全国電話世論調査では、評価せずが7割
【4月/目次】
▽【
菅政権の原発事故対応「場当たり的で受け入れ難い」と菅政権を批判、知恵袋の内閣官房参与、抗議の辞任
▽【東電の原発被曝労働対応東電のずさんな放射線管理、福島原発の被曝測定装置使えず
▽【原発被曝労働と癌発症原発被曝労働者の癌 35年間で10人労災認定 厚労省が初めて公表
▽【福島第一原発汚染文部科学省、事故後1年間の累積の線量推定を発表/ほか
▽【福島第一原発の廃炉東芝、廃炉は約10年で可能との計画書
▽【事実と反した原発推進教育文部科学省と経済産業省、副読本回収
▽【原発推進政治ともたれあい東京電力の役員の大半が自民党に献金
【3月/目次】
▽【東日本大震災巨大地震と大津波 東北地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害 福島原発危機的状況に

【2011.7月/目 次】 ●記 事●

▽【復興担当大臣問題松本龍復興担当大臣、就任早々のボンクラぶりで周囲から酷評、結果的に辞任

復興担当大臣になったばかりの松本龍氏は7月2日、就任後初めて被災地入りしたが、周囲から酷評され、結果的に5日、辞任した。辞任の理由は「個人的な理由なので話せない」とし、復興については「岩手でキックオフして、3日でノーサイドになった。相変わらず嫌いな与野党だが、心を合わせて復興に取り組みたい」と述べた。

 彼は、東日本大震災の復興に取り組む復興相に、防災相と兼務する形で6月27日に就任していた。

 就任当初、今後の自分の姿勢について記者団に「私自身はあまり東京にいることなく、被災地に行き、ご用聞きのように住民の意見を聞いていきたい」と述べたにもかかわらず、3日、宮城県庁を訪れた際には、ご用聞きであるはずの姿勢が「お客さま、松本龍様」に急変。村井知事が出迎えなかったことで顔色が変わったお客さまの松本龍様は、県庁応接室で県知事に対して「いまあとから入ってきたけど、お客さんが来るときは、自分が入ってきてからお客さんを呼べ。いいか? 長幼の序がわかっている自衛隊ならやるぞ。わかった? しっかりやれよ」と、日常生活の一般常識すら分かってない=一般常識は、1)最初にお客を応接室に通す。2)挨拶してお茶を出す。3)そのあとでお迎えする側の本人が応接室に入る。4)まずはお客が頭を下げて「お忙しい折にお邪魔して恐縮です」と謙虚に挨拶する。=この順番と礼儀すら知り得ていないボンクラぶりを発揮。被災地住民のみならず国民を大いに落胆させる滑り出しとなっていた。

 さらに、被災地の復興について、ご用聞きのはずの松本お客さまは「知恵を出したところは助けるけど、知恵を出さないやつは助けない。そのくらいの気持ちを持って」と述べるなど、常に、上から目線に終始する役立たずぶりを如何なく発揮していた。

 また、松本ご用聞きは取材陣に向かっても「今の最後の言葉はオフレコです。いいですか、皆さん。絶対書いたらその社は終わりだから」と発言するなど、随所でボンクラぶりを披露していた。 これを受けてTBC東北放送では、ニュースで「松本龍復興担当大臣が就任後はじめて、今日、宮城県庁を訪れましたが、村井知事が出迎えなかったことに腹を立て、知事を叱責しました」と説明すると共に、ニュースキャスターが「宮城県庁を訪れた松本龍復興担当大臣。村井知事が出迎えなかったことで顔色が変わります」「数分後、笑顔で現れた村井知事が握手を求めようとしますが、これを拒否。応接室に緊張が走ります」と解説して松本お客さまぶりやボンクラぶりを如何なく放送。ストレートニュースの基本に則って 「(村井知事が)先にいるのが筋だよな」や「(水産特区)は県でコンセンサス得ろよ。そうしないと我々何もしないぞ。ちゃんとやれ」「いまあとから入ってきたけど、お客さんが来るときは、自分が入ってきてからお客さんを呼べ。いいか? 長幼の序がわかっている自衛隊ならやるぞ。わかった? しっかりやれよ。今の最後の言葉はオフレコです。いいですか、皆さん。絶対書いたらその社は終わりだから」と言っているシーンをまるごと報じるのであった。

 これらに関して本人は4日、「発言は問題ない」「釈明が必要な内容ではないはずだ」との見解を表明。自身の発言に被災地で反発が広がっていることについては、「言葉足らずだったり、私は九州の人間ですけん、ちょっと語気が荒かったりして、結果として被災者の皆さんを傷つけたということであれば、おわび申し上げたい。私はちょっとB型で短絡的なところがあって、私の本意が伝わらない部分があることはさっき女房からも電話がありましたし、反省しなければならないと思っています。このまま、真っすぐ前を向いて復興にあたっていきます」と述べていた。

 しかし、「このままだ」と困るし、真っすぐに向けない者の口から「真っすぐ」と言われても困るし、「結果として被災者の皆さんを傷つけたということがあれば、おわび申し上げたい」などと言われても、結果として、昔から言われている「馬鹿につける薬はない」困った状態だった。

松本龍プロフィール

福岡県福岡市出身。部落解放の父と呼ばれた松本治一郎の養孫。養祖父の代からの土建屋「松本組」に養われた。中央大法学部政治学科卒。1980年、父松本英一(参議院議員)の秘書となる。

1990年の第39回衆議院議員総選挙に日本社会党から出馬して初当選。以後7回連続当選。現在は福岡県第1区。
1996年、社民党を離党して旧民主党結党に参加。
部落解放同盟副委員長、部落解放同盟の幹部として人権擁護法案を推進、日韓議員連盟常任幹事、国労組合のJR採用差別闘争にも関与。
福岡県内の暴力団との関係が深いとされる。2000年10月17日には松本組を継いだ実弟の自宅玄関ドアに数発の銃弾を撃ち込まれる事件が発生したこともある。自身は顧問を務めるが、松本組の実質的な経営者。
2008年度の国会議員の所得公開では国会議員でトップの8億円超えの所得を得ていた。

 そんな彼には良寛の言葉を捧げよう。そして、被災地に多額の義援金を寄せて、国会議員も今期限りでやめることをおすすめする。

一、口を守れ(言葉を慎め) 二、心を節せよ(心を安定し思いを慎め 三、慚恥(恥じ入ること)を知れ 四、堪忍(堪えるべき時は耐え忍べ) 五、独り住め(独り静かな時を持て) 六、食を節せよ(粗食せよ、大飲大食を避けよ)

生涯 身を立つるにものうく 騰騰として 天真に任す 嚢中 三升の米 炉辺 一束の薪 誰か問わん 迷悟の跡 何ぞ知らん 名利の塵 夜雨 草庵の裡 双脚 等閑に伸ばす

 菅政権が、迅速な復興を最優先に掲げて新設した閣僚だったが、就任わずか9日目に辞任したことで、政権運営が厳しさを増すのは必至の情勢になった。
 野党は首相の任命責任を追及する構えであることから、これがきっかけで、退陣時期を曖昧にして居座りを続ける菅首相に対して印篭が渡せることにでもなれば、松本龍氏の評価は一転して「大絶賛」に変わることになる。

【2011.6月/目 次】 ●記 事●

▽【菅政権後の震災復旧復興政策対応菅政権の中枢幹部ら、菅首相が月内に退陣表明することを念頭に調整に入ったが失敗

菅政権の中枢幹部らは、菅首相が月内に退陣表明することを念頭に7月上旬にも代表選を行なう予定で調整に入っていたが、脆くも失敗した。

 野党側が、菅政権下では公債発行特例法案成立には協力しない構えであることから、会期末を迎える国会では、大幅延長を見送り、いったん国会を閉じてから、新政権を樹立して、未成立の重要法案を処理する方向だった。

 しかし、微塵も退陣する気配のない菅首相は「内閣不信任決議案が衆院本会議で多数の反対で否決された。私に『めどがつくまでしっかりやれ』と議決をいただいたものだ」と居直ると共に「仮設住宅に入った人が生活できるよう、また、がれき処理、原発収束に一定のめどがつくまで、その後の2次、3次処理につなげていくことも含めて、私の大きな責任だ」と居座りを決定。
 衆院本会議で、今国会の会期を8月31日まで70日間延長することが賛成多数で決まった日には、「延長国会で一番やりたいことは」との記者団の質問に対して首相は「復旧・復興と自然エネルギー」と強調。さらには「めどがつくまで」を超えてあつかましくも「燃え尽きるまで」と言ってしまうなど、物事が先に進まないにも拘わらず、むしろ、前のめりするかのように延命に躍起になるのだった。

 非常時であろうが平時であろうが、政党間での対立はあって然るべきだ。しかし、政権政党内そのものの迷走や同一政党内での対立は、政治的には不健全過ぎて頼りにはならない。非常時にも拘わらず、だだっ子のように地位に恋々とする首相、そして稚拙過ぎる政権中枢の幹部連中。そのパッケージは平時にはお似合いで可愛いいが、時は非常時だ。本来すべるき仕事を忘れてしまい、国益を毀損し続ける輩(やから)の動向は、嫌悪しか浮ばず、非常時の日本にとっては、百害あって一利なしになっている。

【関連記事】雑筆帳: 居座って辞めない菅首相

▽【欧州の脱原発への動き伊、原発に決別 原発再開の是非 国民投票で「原発再開反対派」が圧勝

原発再開の是非を問い、6月12〜13日に行なわれたイタリアの国民投票は、50%を超える投票率と90%を超える原発再開反対票のもとで、原発に決別することが確実な情勢になった。
 福島第一原発事故後、原発をめぐる国民投票が行なわれたのは世界で初めてで、イタリアの反原発世論が明確に示された形となった。

 投票終了を待たずに「イタリアはおそらく原発にさよならを言わなければならないし、再生可能なエネルギー分野の開発に取り組む必要があるだろう」と述べていたベルルスコーニ首相は、この結果を受けて13日「政府と議会は国民投票の判断を完全に受け入れる義務がある」との声明を発表した。

 ドイツ、スイスに次いで、イタリアも「原発はノー」の意志が確認されたことから、欧州の各国では今後、脱原発の動きが加速するものと思われる。

 イタリアは旧ソ連のチェルノブイリ原発事故を受けて1987年に国民投票で原発廃止を決定した。しかしエネルギー需要の不安定さなどから、ベルルスコーニ政権は原発再開の方針を表明。2011年1月、憲法裁判所が野党の求めに応じて国民投票実施を認める判断を下していた。

【関連記事】再生エネが原発を逆転のいま、ドイツのメルケル首相、早期に脱原発へ政策転換を表明。脱原発国家リーダーシップ発揮へ。

【2011.5月/目 次】 ●記 事●【最新情報】

▽【放射性物質の山間地汚染市民 お手柄 福島県山中の雪から放射性物質検出

政府のやること成すこと、後手後手で気がまわらない中、山岳愛好家らが中心になって環境保護活動を行なう福島市の市民団体「高山の原生林を守る会」が、山間部での放射能汚染を調査、4月17日〜5月5日に福島市と猪苗代町にまたがる箕輪山など31地点で採取した雪を東大アイソトープ総合センターに依頼して分析した結果、山中の雪から放射性セシウムが検出された。

 5月29日に発表された調査結果では、箕輪山の標高約1338メートル地点で雪1キログラム当たり2968ベクレル、標高1146メートル地点でも1734ベクレルのセシウムが検出された。山頂西側地点では185ベクレルだった。
 このことから同会では「国は率先して山の水や土壌の調査を行なう必要がある」と指摘すると共に「登山者は川の水や山菜を採取しないで」と呼び掛けている。

 このほか、和尚山東斜面の1000メートル地点で1180ベクレル。安達太良山東斜面1530メートル地点で775ベクレル。東吾妻山山頂東側1964メートル地点で406ベクレルなどが検出された。

 これらは、福島第一原発の水素爆発で飛散した放射性物質が降雨で地上に落ちたことが主な原因と見られている。

▽【放射線量の基準対応文科省、児童生徒の許容年間放射線量 1ミリシーベルト以下を目指す

政府が福島第一原発事故の対応で、校庭に対する活動制限や計画的避難区域の基準に採用している「年間20ミリシーベルト」という被曝線量について、国内のみならず世界からも懸念や批判の声があがっている問題で、文部科学省は5月27日、福島県内の児童生徒が今年度に受ける放射線量については、年間1〜20ミリシーベルトとする基準は夏休みまで維持するものの「年間1ミリシーベルト以下を目指す」との目標を発表した。どのような方法で年間1ミリシーベルト以下を目指すのかについては「具体的な取り組みは今後検討する」とした。
 また、県内の国公私立の1762校に対しても積算線量計を提供する。県内全校で教職員が携帯して児童生徒らの受ける放射線量のモニタリングを実施する。

 放射性物質に汚染された校庭などの土壌については、地下に埋めたり、上下を入れ替えるなどするが、その土壌処理の経費は、第一次補正予算を活用し、災害復旧事業として国が負担する。既に低減策をとった学校についても対象になる。

▽【東電の事故対応東電、震災による原発事故発生から70日以上経ってやっと「炉心溶融」を認める

早くから、一般的にメルトダウン(炉心溶融)が起きている可能性が高いと見られていた福島第一原発について、あとだしや修正が癖になっている東電は5月24日になってやっと、福島第一原発1号機に続き2号機、3号機でも炉心溶融が起こったと発表した。
 大部分の核燃料が圧力容器の底部に落下したのは、2号機は原子炉が東日本大震災(3月11日)で自動停止した101時間後、3号機は同60時間後だとした。1号機は、地震発生から15時間後には、核燃料の全量が圧力容器の下に落ち、その約3時間後には格納容器の温度が設計温度を超える300度以上に上昇し、気密性が失なわれて蒸気が漏れたとみられている。

 各号機とも、損傷はもとより不安定な冷却が続いているのが福島第一原発の現状だが、東電は「現在測定されている圧力容器の周囲の温度などから、圧力容器は大きくは壊れていないし、安定した冷却を進めており、今後、放射性物質が大量に外部に放出されるような事態の悪化はない」と他人事のような判断を続けている。

 細野首相補佐官は、1、2、3号機がメルトダウンしていたことについて「こういうことがあり得るのでは、という評価は厳しくしておくべきだった。政府の事故に対する見込みの甘さがあったと反省している」と述べると共に、遅れに遅れた今回の東電の発表について「冷静にデータを分析するのは時間がかかり、やむを得ない面がある」と、見込みの甘さ同様に、反省のない甘い見解を示した。今後の対応については「炉内に燃料が残っているので、しっかり冷却して冷温停止を目指すこと自体は変わりない」とした。

▽【放射線量の基準対応衆院科学技術特別委で放射線医学の専門家ら 政府の被曝基準に対して相次いで批判

政府が福島第一原発事故の対応で、校庭に対する活動制限や計画的避難区域の基準に採用している「年間20ミリシーベルト」という被曝線量について、5月20日にひらかれた衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会では、放射線医学の専門家らから「設定が甘すぎる」「基準の採用はもっと厳密に」「保護者が納得しないのは当然」「年齢による影響の差を考慮しない議論は論外だ」と批判が相次いだ。

 矢ケ崎克馬・琉球大名誉教授は、政府が採用の根拠としている国際放射線防護委員会(ICRP)の基準については「内部被曝を考慮していない」と指摘すると共に「欧州は内部被曝を考慮した別の基準を採用しており、外部被曝だけで年間20ミリシーベルトというのは、とんでもない数字だ」と批判した。
 また、武田邦彦・中部大教授は「20ミリシーベルトで発癌のリスクが高まるのは明らかなのだから、保護者が納得しないのは当然だ」とし、校庭だけでなく通学路などを除染する必要性を強調した。

 国の原子力安全委員会では「発癌に与える影響は小さい」と20ミリシーベルトという基準の妥当性を主張しているが、これに対して、崎山比早子・元放射線医学総合研究所主任研究官は「子どもの方が放射線感受性が強く寿命も長い。年齢による影響の差を考慮しない議論は論外だ」ときっぱり反論するなど、放射線医学の専門家らは総じて政府のゆるい対応を批判的にみていることが鮮明になった。

▽【原発立地計画原発に協力的な立場だった山口県知事、上関原発立地の埋め立て免許延長で慎重姿勢に方針転換/周南市議会 上関原発建設中止を求める意見書を全会一致で可決

中国電力が山口県上関町に計画中の上関原発について、二井関成山口県知事は、福島第一原発事故により国の原子炉設置許可の見通しが不透明となったため、立地予定地の公有水面埋め立て免許の延長を当面、認めない方向で検討に入った。6月の県議会で最終判断を表明する。
 山口県は海面の埋め立て免許を08年10月に許可した。中国電は09年10月に着工したが、反対派の抗議活動でほとんど工事が進んでいない。免許期限は「着工から3年」で12年10月まで。完成には免許延長が必須のため、中国電が延長申請すれば原発に協力的な立場の県知事は免許延長するものと見られていた。

 しかし、福島原発事故により原発を取り巻く状況は大きく一変。事故後の会見でも知事は「これだけの事故が起きたわけですから、原子炉設置許可が出る前に埋立てをしていていいのかどうか。はっきり言うと、埋立てをしたけれども、許可が出なかったと、そういうことがあったらどういうことなのか」と語り、原子力発電所における公有水面埋立法の運用手続きにも問題があるとの見解を示していた。

 免許失効してのちの再免許は、原発に関する国の新たな安全指針が策定された段階で判断する意向だが、原発立地は現実的には困難な状況だ。原発事故後、中国電は山口県からの要請を受けて工事を一時停止している。

 上関原発は、瀬戸内海に面した海域約14ヘクタールを埋め立て、陸上部を含む33ヘクタールを造成して原発2基を造る計画だが、推進と反対で地域を二分する運動が30年以上続けられている。

これまで原発問題では長年、傍観者的な姿勢でいた山口県周南市議会が5月27日、上関原発建設中止を求める意見書を全会一致で可決した。福島原発事故に刺激されての動きだが、県が埋め立て免許を出した2008年10月以降、上関原発建設中止を求める意見書は県内の議会では初めて。

 意見書は二井関成山口県知事あてで、周南市は一部が予定地から30キロ圏に入っていることから「風向きによっては全市が影響を受ける」「避難区域となった場合、石油化学コンビナートの工場群が全面停止という事態になる」と指摘すると共に、国に対して「原発の新増設計画の凍結」「原発に代わる新エネルギービジョンの早急な策定」「既設原発の安全管理や事故が起きたときの対処法の確立」を求めることも要望している。


▽【福島第一原発半径20キロ圏汚染高放射線量 毎時80マイクロシーベルト超も

文部科学省は5月16日、福島第一原発から半径20キロ圏内で13日に測定した放射線量を発表した。原発の西南西約3キロの福島県大熊町小入野で毎時84.6マイクロシーベルト、大熊町夫沢で毎時63.8マイクロシーベルトを観測、高い放射線量が続いている。
 13日の測定は50カ所。ほかの地点でも、高いところで39.4マイクロシーベルトが測定された。

▽【放射性物質汚染神奈川の「足柄茶」が基準値超えセシウム初検出/出荷停止解除後に福島市のカブ基準値超え再検出/福島周辺の各県では汚泥の焼却灰からセシウムの検出が相次ぐ

神奈川県は5月11日、南足柄市で9日に採取した「足柄茶」の生葉から、暫定基準値を超える1キログラム当たり550〜570ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。同県産の農産物が暫定基準値を超えたのは初めて。2回の検査を民間の分析機関に依頼し、1回目は放射性セシウム550ベクレル、2回目は570ベクレルを検出した。

 さらに11日に採取した生葉から、小田原市では1キログラム当たり780ベクレル、愛川町では670ベクレル、清川村では740ベクレルの放射性セシウムが検出された。

 足柄茶の生葉は県内17市町村で生産しており、今年収穫された足柄茶は、6日に出荷が始まったばかり。県は今年産の茶の出荷自粛と自主回収を呼び掛けた。
 
生産地は福島第一原発から約300キロ弱離れており、しかも、大気中の放射性物質の濃度が下がる中での検出。県は「茶からなぜ検出されたのか専門家の意見を聞いて原因を調べたい」としている。

 政府が出荷を制限していないため、生産者が出荷自粛したが、政府は、出荷制限の基準を生茶葉1キログラムあたり500ベクレルを超えるセシウムが検出された場合とする方針を固めた。
 厚労省が茶葉500ベクレルでの規制、農水省が茶飲料200ベクレルでの規制を主張し、調整が続いていた。セシウムは茶飲料にすると生茶葉の段階から6分の1以上に薄まるとされ、農水省は「お茶は飲むときに薄まるもので、茶葉の段階で規制するのは非合理」と主張。厚労省は「薄まるといっても、規制値を超えた茶葉が流通することに消費者の理解が得られない」としていた。
 厚労省は生茶葉を乾燥させた「荒茶」についても500ベクレルを上回れば制限すべきだと主張しているが、加工前の荒茶の場合、加工後の生茶葉と比べて約5倍の放射性物質が検出される。このため、生産者側から荒茶の規制値には反発の声が上がっており、荒茶については検討が続いている。

厚生労働省は5月10日、出荷停止をいったん解除した福島市のカブから暫定基準値を超える放射性セシウムを再び検出したと発表した。5月4日に出荷停止を解除したばかりだった。
 福島県のカブについては、須賀川市で3月21日、830ベクレルのセシウムが検出されたため、県全域を対象に出荷停止した。その後、検査結果が3週連続で基準値を下回ったとして出荷停止が解除された。その矢先、福島市で5月9日に採取されたカブから、基準値(1キログラム当たり500ベクレル)を超える570ベクレルを検出した。

また、茨城、群馬、栃木、新潟の各県の下水処理施設で採取した汚泥や汚泥を燃焼させた焼却灰から放射性セシウムの検出が相次いでいる。
 栃木県宇都宮市の下水道資源化工場の焼却灰で1キログラム当たり3万2000ベクレル、茨城県ひたちなか市の那珂久慈浄化センターの焼却灰からは1万7020ベクレルが検出された。群馬県桐生市の桐生水質浄化センターでは410ベクレル。新潟県新潟市の新潟浄化センターで46ベクレル。
 汚泥や焼却灰などに放射性物質の基準値がないため、4県は国に対し、基準値や安全な処理方法の指針を早急に示すよう要望している。

▽【使用済み核燃料貯蔵・処分施設と日本極秘に日米、使用済み核燃料貯蔵・処分施設をモンゴルに、昨秋から交渉、と毎日新聞が報じる。

毎日新聞の取材で、経済産業省が昨年秋から米エネルギー省と共同で、使用済み核燃料などの世界初の国際的な貯蔵・処分施設をモンゴルに建設する計画を極秘に進めていたことがわかった。
 毎日新聞によると、3カ国交渉は昨年9月下旬、ポネマン米エネルギー省副長官が主導して始まり、経産省、モンゴル外務省が担当。核廃棄物の国内処分地選定の見通しが立たない日米と、技術支援で核燃料加工施設や原発を建設したいモンゴルの思惑が一致した、としている。

 3カ国交渉の段階で計画が表面化すれば、核廃棄物輸送の通過国となりうる中国やロシアなどの干渉やモンゴル国民の反発も予想されることから、交渉は極秘に進められ、2011年2月、ワシントンで3カ国が包括的な外交文書への署名にこぎつける予定だった。しかし、直前に計画を知らされた日本外務省が「政府内での調整がまったく進んでいない」と反発し、署名は延期された。その後に東日本大震災が発生し、署名などの日取りは未定になっているという。

▽【放射性物質汚染旬の山菜から暫定基準値超えの放射性セシウム/浪江町の土壌からは78万ベクレル

厚生労働省は5月6日、福島県いわき市など6市町村で2〜3日に採取されたタケノコから暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されたと発表した。
 福島県が4月末に行なった緊急時モニタリング検査で、暫定基準値の1キロあたり500ベクレルに対して福島市のコゴミから770ベクレル、いわき市のタケノコから650ベクレルの放射性セシウムを検出したことから、需要が増えるタケノコについて、地点を増やして測定した。

 新たに規制値を超えたのは伊達市の1820ベクレルのほか、天栄村で1040ベクレル、相馬市で920ベクレル、三春町で580ベクレル、平田村で510ベクレル。いわき市でも1170ベクレルを再び検出した。

 福島県はすでに出荷自粛を農家に要請しているが、今回新たに検出された5市町村に対してもJAなど関係団体を通じて出荷停止を要請した。

 南相馬市などで9日に採取したタケノコから最大で2400ベクレルを検出したことから、南相馬市、本宮市、桑折町、国見町、川俣町、西郷村のタケノコについても出荷停止の処置がとられた。

文部科学省は5月7日、福島第一原発周辺の土壌に含まれる放射性物質の調査で、原発の北西24キロの福島県浪江町で5月6日に採取した土1キログラム当たり、セシウム134とセシウム137を合計で78万ベクレル検出したと発表した。セシウム134(半減期約2年)が35万ベクレル、セシウム137(半減期約30年)が43万ベクレル。原発の半径20キロ圏外の土壌調査では最高値となった。

▽【菅政権の原発事故対応菅首相、中部電力浜岡原発の稼動を一時的に休止要請

菅直人首相は5月6日、稼働中の中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)4、5号機の休止と定期検査中の3号機の運転再開の見合わせを中部電力に要請した。中部電力が受け入れると、浜岡原発はすべての原子炉が一時停止することになる。運転を終えた1、2号機は廃炉になることが既に決まっている。
 中部電力の電力供給量は最大約3100万キロワット程度で、夏のピーク時の需要量は約2700万キロワット程度。浜岡原発3、4、5号機の発電出力の合計約360万キロワットが無くても、火力発電を稼動させれば電力不足は避けられる。

 停止要請の理由として首相は「文部科学省の想定では、30年以内にマグニチュード(M)8.0程度の東海地震が発生する可能性が87%と極めて高い」ことを挙げた。そして、東海地震の震源域に入っている浜岡原発は、地震や津波への備えが現状では不十分なので、新たな防潮堤など巨大地震や津波を想定した対策が実行されるまで運転を見合わせて欲しい、との考えを示した。原子力安全・保安院では、対策が講じられるまでの浜岡原発の停止期間は2年程度とみている。

 この判断に対して、静岡県の川勝知事は「英断に敬意を表する」と評価、危険性を訴えてきた市民団体などからも「当然だ」とする声が上がった。
 その一方で、政府内で十分に検討された形跡がなく、むしろ要請前に情報が漏れて抵抗の余地を与えることを警戒したかのように首相会見の40分前に突如、海江田経済産業相から中部電力水野社長に停止要請の電話が入るというほど唐突だったことから、浜岡原発の全面停止要請の措置に踏み切ったのは「東日本大震災での福島第一原発事故の対応等の不備で失墜した政権の信頼回復につなげる狙いがあるからだ」との見方がある他、「26、27日にフランスで開かれる主要国首脳会議(G8サミット)を前にしての苦肉の策だ」「一貫性がなく、またもや場当たり的だし、今後の原発政策全体をどうするのかも示されてはいない」と、訝る声もでている。

 中部電力は5月7日午後の臨時取締役会では、すべての原子炉を停止するかどうかの結論を出さず判断を持ち越し、9日午後の臨時取締役会で要請受入を決めた。

▽【放射性物質の海洋汚染福島第一原発沖の海底の土から、通常の100〜1000倍の濃度の放射性物質を検出、原発港湾内の土からは約3万8000倍のセシウム

東電は、福島第一原発の北約15キロの福島県南相馬市小高区と、南約20キロの同県楢葉町方面の岩沢海岸の沖合3キロで、深さ20〜30メートルの海底の土から、放射性ヨウ素が1キログラム当たり98〜190ベクレル、セシウムが1キログラム当たり1300〜1400ベクレルを検出したと発表した。

 東電では、放射性物質は空気中に放出されたものが海に落ちたか、汚染水として流れて海底に沈んだとみており、高い濃度の汚染に関して「環境への影響は、2地点の周辺も含め、魚介類を採取してさらに調査分析したい」としている。
 事故後に東電が海底の土を分析したのは初めてで4月29日に採取して調べた。

 また、通常の濃度の約3万8000倍に当たる1キログラム当たり8万7000ベクレルのセシウム137が第一原発1号機と5号機の間に面した港湾内の海底の土から検出された。セシウム134が同9万ベクレル、とヨウ素131が同5万2000ベクレル。

 一方、文部科学省も同日、第一原発の南約50キロ地点の沖合約10キロ、深さ117メートルの海底から土を採取して分析したが、放射性物質は検出されなかった。

▽【放射線量の基準対応ノーベル賞受賞の米医師団 年間20ミリシーベルトを目安として設定した学校放射線基準は「安全ではない」と声明

福島第一原発事故による放射性物質飛散、蓄積の対応で政府が、福島県内の小中学校などの屋外活動制限の可否に関する放射線量の基準を年間20ミリシーベルトを目安として設定したことに対し、1985年にノーベル平和賞を受賞した「核戦争防止国際医師の会」の米国内組織「PSR・社会的責任のための医師の会」(本部ワシントン)が「年間20ミリシーベルトは、子供の発がんリスクを200人に1人増加させ、このレベルでの被曝が2年間続く場合、子供へのリスクは100人に1人となる」「子供の発がんリスクを高めるもので、このレベルの被曝を安全とみなすことはできない」との声明を発表した。
 米科学アカデミーの研究報告書を基にして「放射線に安全なレベルはなく、子供や胎児はさらに影響を受けやすい」と指摘すると共に、声明で「子供への放射線許容量を年間20ミリシーベルトに引き上げたのは不当なことだ」と批判した。

 内閣官房参与を辞任した小佐古敏荘・東大教授(放射線安全学)は「子どもの被曝量はせいぜい年間5ミリ・シーベルトにとどめるべきだ」としている。

▽【菅政権の原発事故対応共同通信社のアンケート、知事の半数超が首相の対応を評価せず批判/全国電話世論調査では、評価せずが7割

福島第一原発事故への菅直人首相の対応について、全国の半数を超える25都府県の知事が評価していないことが4月29日、共同通信社のアンケートで分かった。調査は4月中下旬に震災や原発対応について実施した。「災害対応などのため、現時点で回答できる状況ではない」とした福島以外の46都道府県が答えた。
 福島第一原発事故への対応は30都府県が評価しないと回答。今後の原発の在り方では、11府県が新設や増設の凍結、縮小を求めた。
 原発対応を評価しない30都府県の理由は「レベル7への引き上げ時期などで的確さを欠いた」(秋田)など、政府による情報発信の不十分さに集中した。大分は「悪い情報ほど迅速に発表すべきだ」と苦言を呈した。
 原発や関連施設の新・増設を求められた場合の対応については9府県が「基本的に認めない」、5県が「一切認めない」とした。原発の在り方について、凍結や縮小を選択しなかった都道府県では安全基準の見直しや国民的議論を求める意見が目立った。

 また、同社が29、30両日に実施した全国電話世論調査によると、東日本大震災や福島第一原発事故での菅直人首相のリーダーシップについて「発揮していない」とする回答が76%に達した。原発事故への政府対応を「評価していない」とする回答は70.6%。被災地支援への取り組みに関しては「評価していない」とする回答は52.3%と半数を超えた。菅首相の交代時期について「直ちに退陣すべきだ」は23.6%で、前回の13.8%から退陣論が拡大した。

 鳩山由紀夫前首相は、民主党の小沢一郎元代表と会い、首相の原発事故への対応については「国民は菅さんじゃダメだという思いで一致している」と批判する一方で、倒閣への動きには「党が分裂するようなことについては冷静に考えてほしい」とブレーキをかけた。
 小沢氏はこの後、衆参若手と会い、与野党で倒閣の動きが進まないことに不満をぶちまけた。

【2011.4月/目 次】 ●記 事●

▽【菅政権の原発事故対応「場当たり的で受け入れ難い」と菅政権を批判、知恵袋の内閣官房参与、抗議の辞任

福島第一原発事故の政府対応を「場当たり的で受け入れ難い」として、内閣官房参与・小佐古敏荘・東大教授(放射線安全学)は4月29日、菅直人首相あての辞表を首相官邸に出した。
 小佐古氏は、特に小中学校などの屋外活動を制限する限界放射線量を年間20ミリシーベルトに決めたことに関して、文部科学省が示した被曝線量基準は「高い数値で、国際的な常識ではなく、行政の都合で決めている。通常の放射線防護基準に近い数値で運用すべき」と述べ、厳格化するよう求めた。
 「年間20ミリシーベルト近い被曝をする人は放射線業務従事者でも極めて少ない。この数値を乳児、幼児、小学生に求めることは学問上の見地からのみならず、私のヒューマニズムからしても受け入れがたい」と政府がすすめる福島第一原発事故対応を批判すると共に「容認すれば私の学者生命は終わり。自分の子どもをそういう目に遭わせるのは絶対に嫌だ」として抗議の辞任をした。

 文科省は「余裕を持って決めた基準で、実際に年間20ミリシーベルトを被曝することはない」としているが、他の放射線の専門家からも異論が出ているほか、日本弁護士連合会も「子どもを大人と同様に扱うべきでない」として反対声明を出している。

 小佐古氏は、放射性物質の拡散を予測する緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による公表が4月下旬までに2回しか行なわれなかったことも問題視。また急遽、原発作業員の緊急時被曝線量限度を年100ミリシーベルトから年250ミリシーベルトに引き上げたことにも触れて「今のやり方は、東京で数字をぼっと決めてやっている」「政府や原子力安全委は法律や指針などを軽視し、もぐらたたき的、場当たり的な政策決定をして手続きを無視している」と批判した。

 小佐古氏は3月16日に参与に就任。放射線安全学などが専門で放射線に関して「知恵袋」として首相への助言を求められていたが「私がやってきたことからは外れているので、これ以上とどまっている理由はあまりない」として、4月30日付の辞表を提出した。

▽【東電の原発被曝労働対応東電のずさんな放射線管理、福島原発の被曝測定装置使えず

東電福島第一原発で、被曝した作業員の体内に沈着した放射性物質を検出するために全身を一度で計測する装置「ホールボディーカウンター」が、原発内の空気の放射線量が高すぎて測定できない状態になっていることが分かった。

 東電によると、第一原発には計4台のホールボディーカウンターがあったが、3月11日の東日本大震災後、津波や外部電源喪失で使えなくなった。その後、外部電源が3月下旬までにつながり、電力供給が可能になった。しかし、原発内の空気の放射線量が上昇し、内部被曝によるものか、外部の放射線の影響によるものかが区別できなくなった。
 実際の測定には使えないため作業に伴なう被曝線量が100ミリシーベルトを超えた東電社員ら27人は福島県いわき市の同社施設まで移動し、日本原子力研究開発機構の協力で設置された装置で測定を受けた。

 東電のずさんな放射線管理をめぐっては、3号機タービン建屋で作業員3人が被曝した当日、現場の放射線量が測定されていなかったことや、作業員の人数に対し線量計が不足していたことが判明しているほか、対策拠点の「免震重要棟」に滞在していた作業員が浴びた放射線量についても、個人の線量を毎日は記録していなかったことが分かっている。

▽【原発被曝労働と癌発症原発被曝労働者の癌 35年間で10人労災認定 厚労省が初めて公表

厚生労働省は4月27日、原発被曝労働者のうち、癌になった人に対して、35年で10人が累積被曝線量などに基づき労災認定されていたことを明らかにした。福島第一原発の事故を受け、初めて労災の認定状況を公表した。

 1976年度以降、労災認定された10人のうち6人が白血病。累積被曝線量は129.8〜5.2ミリシーベルトだった。10人のうち2人が多発性骨髄腫。それぞれ70.0、65.0ミリシーベルトだった。10人のうち2人が悪性リンパ腫。それぞれ99.8、78.9ミリシーベルトだった。
 福島第一原発の事故対応の作業で相当量の被曝をしている人がいることから、厚労省では「労災認定は今後、増える」とみている。

▽【福島第一原発汚染文部科学省、事故後1年間の累積の線量推定を発表

文部科学省は4月26日、福島第一原発から放出される放射性物質による周辺の汚染状況を予測したデータを公表した。現在の水準で放出が続いた場合、来年3月11日までの1年間の予想累積線量は、計画的避難区域にある原発の北西24キロの福島県浪江町赤宇木椚平で235.4ミリシーベルトにのぼるとしている。福島市や南相馬市でも10ミリシーベルトを超えると推定している。一般人の被曝の年間限度量は1ミリシーベルト。
 計算には、文科省が日常的なモニタリングを実施している2138カ所の測定地点のデータを使った。3月12日から4月21日までの実測値の累積線量に、4月22日の線量が来年3月11日まで続くと仮定しての累積線量を加えて推計した。各地点では、1日のうち8時間を屋外、16時間は木造家屋の中で過ごすと仮定した。木造家屋は屋外に比べて被曝量が4割程度低いという前提を立てた。
 その結果、原発の北西方向を中心に累積線量が高くなるとの予想が出た。政府が指定している「計画的避難区域」では浪江町、飯舘村、川俣町などの10地点で20ミリシーベルトを超えると推測。現在は指定されていない原発の北西48キロ地点の伊達市霊山町で年間21.2ミリシーベルトと予測している。
 今後、データや気象条件を更新し、月2回の頻度で公表する予定。
 「環境モニタリング強化計画」として原子力安全委員会や経済産業省原子力安全・保安院とともに実施するもので、現在の放射性物質の分布を示す「線量測定マップ」、事故後1年間の累積の線量を推定する「積算線量推定マップ」、土壌表層の放射性物質の蓄積状況を把握する「土壌濃度マップ」の3種類。計画では、原発から半径20キロ圏内の航空機での測定、海域における放射性物質の拡散予測の継続、水産資源調査も実施する。事故の全体像を把握し、「計画的避難区域」などの状況評価や解除時期の検討などに役立てる、としている。

▽【福島第一原発汚染文部科学省、150地点で3月末以降に測定した1時間当たりの放射線量を初めて公表

文部科学省は、福島第一原発から1〜21キロ離れた150地点で3月末以降に測定した1時間当たりの放射線量を公表した。
 測定は、3月30日〜4月2日と4月18〜19日の2回に分け、文科省と東京電力などが実施した。公表が大幅に遅れた理由を、文科省では「官邸の指示で出せなかった」としている。
 原発から2〜3キロ地点の福島県大熊町の4カ所で毎時100マイクロシーベルトを超えた。最も高かったのは原発の西北西約2キロの大熊町夫沢で4月2日に観測した毎時124マイクロシーベルトだった。
 20キロ圏内の住民の一時帰宅について、毎時200マイクロシーベルトを目安としているが、今回の測定結果では、これを超えた場所はなかった。

▽【福島第一原発汚染東電、流出した高濃度放射能汚染水推計を発表

東京電力は4月初めに福島第一原発2号機の取水口付近から海に流出しているのが発見された高濃度の放射性物質を含む汚染水の総量は520トンで、含まれる放射性物質は法定の濃度限度の2万倍にあたる5000テラベクレル(1テラベクレルは1兆ベクレル)にのぼるとの推計を4月21日、発表した。
 流出した放射性物質の量は、意図的に海に放出した低濃度汚染水に含まれていた量の3万倍近くにおよぶ。大気中には37万〜63万テラベクレルが放出されたと推定されている。
 意図的に4月4日〜10日に海に放出した低濃度汚染水計1万393トンには放射性物質の総量が約1500億ベクレル含まれていた。

 東電は4月15日になってやっと、2号機と3号機の取水口近くの海中3カ所に、放射性物質を吸着する性質があるとされる鉱物ゼオライト100キロが入った土のう3袋を投入した。放射性セシウムなどを含む汚染水の海への拡散を防ぐのが狙いだが、既に大量の放射性物質は海に広がっている。

▽【福島第一原発汚染米エネルギー省、積算線量予測図を発表

米エネルギー省は、福島第一原発の周辺地域に1年間とどまった場合、原発から北西方向に40〜50キロにわたり、積算線量が20ミリシーベルトを超える恐れがあるとする予測図を発表した。予測は、人が屋内にいても被ばく量は減少しないと仮定して計算したとする一方、この予測は「控えめなもの」としている。
 文部科学省のデータによると、同原発から北西約30キロに位置する福島県浪江町赤宇木手七郎で、3月23日〜4月19日の積算ですでに18・94ミリシーベルトの積算線量を測定している。原子力安全委員会による3月12日〜4月5日の推計積算値は浪江町赤宇木椚平で34ミリシーベルトになっている。一般人の年間被曝線量限度は1ミリシーベルト。
 政府は、積算線量が20ミリシーベルトに達する恐れがある地域を「計画的避難区域」に指定する。

▽【福島第一原発汚染原子力安全委員会、放射線量の推計積算値を発表

原子力安全委員会は、福島県内の53地点について、3月12日〜4月5日の大気中の放射線量の推計積算値を発表した。毎日8時間屋外にいた場合、福島第一原発から24キロ北西に位置する浪江町赤宇木椚平で、最大の34ミリシーベルトに達していた。
 安全委によると、現時点の線量が続くと仮定した場合、椚平では東日本大震災発生から1年が経過する2012年3月11日には313.9ミリシーベルトに達すると推計。健康に影響を与える可能性が高まるとされる100ミリシーベルトを上回ることになる。
 ただ、安全委は放射性物質は今後、時間の経過とともに減少するほか、雨などで地表から洗い流されることでも減るとしている。
 4月5日までの推計積算値は、浪江町の他の6地点で1.7〜20.3ミリシーベルト(2012年3月11日時点では13.0〜154.8ミリシーベルト)、飯舘村の6カ所は1.5〜11.1ミリシーベルト(同15.3〜91.1ミリシーベルト)、福島市の3カ所は0.4〜2.1ミリシーベルト。
 1年間の推計積算値は計12カ所で、20ミリシーベルトを上回ったため、安全委は政府原子力災害対策本部に対し、こうした地域を計画的避難区域に指定するよう求めた。現在の屋内退避区域のうち、緊急時避難準備区域に移行する地域について、安全委は「引き続き自主的避難が求められる。子ども、妊婦、入院患者などは区域内に入らないよう強く求められる」との見解を示した。

▽【福島第一原発の廃炉東芝、廃炉は約10年で可能との計画書

福島第一原発の原子炉などを製造した東芝が、これまでの原発の廃炉よりも期間を短くすることが可能だとする同原発の約10年での廃炉案を東京電力と経済産業省に提出していたことが4月8日、明らかになった。
 計画は、米スリーマイルアイランド(TMI)原発事故の廃炉作業の経験をもつ米ウェスチングハウス・エレクトリック(WH/現在は東芝子会社)などとともに作成。東芝は、TMIでは廃炉まで約14年かかったが、WHの経験を生かすことで、期間短縮ができるとしている。
 計画では、福島第一原発の1号機から4号機の原子炉圧力容器にある燃料棒や貯蔵プールの使用済み核燃料を取り出し、設備の撤去作業や土壌改良などを行なうのに約10年がかかるとしている。
 国内では、中部電力の浜岡原発1、2号機が廃炉作業に入っており、2036年度の終了を見込んでいる。国内の商用原発として、初めて廃炉作業に入った茨城県の日本原子力発電東海発電所では1998年の営業運転終了後2021年までかけて段階的に進めている。
 廃炉は、燃料を取り出し、放射線量の低減を待つ。この間、発電機など汚染の少ない設備を先に解体、最後に原子炉の鋼鉄容器などを切断し地下深くに埋める。しかし、原子炉や建屋が破損した福島第一原発の例では、こうした通常の手順通りに解体するのは不可能で、汚染低減作業に非常に手間がかかることもあり、廃炉は恐らく20〜30年では終わらない、との見方もある。

▽【事実と反した原発推進教育文部科学省と経済産業省、副読本回収

文部科学省と経済産業省が作製して全国の小中学校などに約3万部を配布した原子力発電に関する小中学生向けの副読本『わくわく原子力ランド』と『チャレンジ!原子力ワールド』に「大きな地震や津波にも耐えられる」「放射性物質がもれないようしっかり守られている」などの表現が見つかり、高木義明文科相は4月15日、「事実と反した記載がある」として内容を見直すと共に回収する考えを示した。
 文科省関連の財団法人「日本原子力文化振興財団」のホームページでもこれを公開していたが、4月13日に取りやめた。副読本は2008年に改訂された新学習指導要領で原子力が重視されたため作られた。

▽【原発推進政治ともたれあい東京電力の役員の大半が自民党に献金

東京電力の役員の大半が自民党の政治資金団体「国民政治協会」に対し、2007年から3年間で計1703万円の政治献金をしていたことが明らかになった。組織ぐるみの献金で、これまで原子力政策を推進してきた自民党と東電との「もたれ合い体質」の片りんがみてとれる。
 現在、閲覧可能な政治資金収支報告書07〜09年分では、国民政治協会の収支報告書だけでも、東電役員は、07年は42人が543万円、08年は50人が591万円、09年は47人が569万円をそれぞれ献金した。
 献金額は職位ごとにほぼ横並びで、勝俣恒久会長と清水正孝社長が30万円、6人の副社長は全員が24万円、9人の常務は1人を除き12万円だった。
 役員の献金は07年以前も行なわれており、官報によると、勝俣会長に関しては社長に就任した02年以降は毎年30万円献金していた。09年分の献金は12月に集中しており、同年8月の衆院選で敗れ、野党に転落した後も自民党への資金提供が続いていた。一方、民主党の政治資金団体「国民改革協議会」の収支報告書には、役員からの献金はなかった。
 政治資金団体は、政党が1団体に限り届け出ることができ、企業・団体献金の受け取りも認められている。国民政治協会事務局は「純粋な個人献金として受け取り、収支報告書に記載している。企業献金との認識はない」としている。 

 ちなみに、社外取締役を除く東電取締役の報酬総額は6億9800万円。取締役の数は19人で単純に割ると1人約3670万円。会長や社長は年報酬が1億に近い。

【2011.3月/目 次】 ●記 事●

▽【東日本大震災巨大地震と大津波 東北地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害 福島原発危機的状況に

2011年3月11日14時46分18秒(日本時間)、東北地方太平洋沖で巨大地震が発生した。日本の観測史上最大のマグニチュード9.0を記録。この地震により、波高10メートル以上、最大遡上高38.0メートルにものぼる大津波が発生、東北地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害をもたらした。
 また、巨大地震と大津波で東電福島原発では、原子炉の稼動は緊急停止したものの、炉心を冷やす緊急炉心冷却システム(ECCS)が動かなくなり、原子炉内の水位が低下、これにより炉心溶融(メルトダウン)の可能性も否めない極めて危険な状態に陥った。

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