「地デジの準備はいかがですか」「2011年に今のアナログテレビは使えなくなります」。
半ば脅迫的にも見える地デジがらみのテレビCMは、至って評判が悪い。にもかかわらず、それをタレ流す放送局に、その自覚があるのか、と言えば「ノー」だ。
「国民のことを考えない施策に乗っかったテレビなど、もう見なくていいという気になる」。これは、一部の極端な見解ではなく、平均的な認識だろう。
2月に発表された総務省の最新の調査では、地上デジタル放送の世帯普及率は目標を下回り、49%と、半数に届いていなかった。実際の数は「調査数値は話し半分」だから30%弱。まだ国民所帯の70%は「地デジの準備はしてませ〜ん」のであろう。
「私がデジタルにしない理由」について普及サイドでは「告知不足」「まだ時間がある」「不況だから」「費用負担が嫌」「機器がまだ高い」「ギリギリまで待てば安くなる」等々に落ち着かせたいのだろうが、実際は違うようだ。
「私がデジタルにしない側の本音の理由」は「画質の向上やインタラクティブサービスよりも、番組そのもが大問題だ。安価なスタジオトーク、似たようなバラエティー、定番の出演者群、どこの局も同じ切り口と同じ視点と同じ内容のニュース、どこからか持ってきたような他人任せの安易な情報、埋め合わせ番組やヤラセ・偽装・インチキの氾濫など、内容や製作意識の改善に力を注ぐべきではないのか」というのが実際のところだ。
「画質がきれいですよ〜」「データ放送などができるんですよ〜」「多チャンネル化が進みますよ〜」。デジタル化のメリットを言われても、「今のままでも満足で〜す」「そんな機能は使いませ〜ん」「チャンネルが増えても観たいものは増えませ〜ん」と言い返されればおしまいだ。
テレビの“デジタル難民”になるのをいくら心配されても、「難民で結構。面白くないテレビをわざわざ機器買い替えまでして観たくはない」という声を、真摯に受け止めるのが、局側に求められる最重要課題だろう。
選択肢として、テレビ地上波の完全デジタル化を契機に、テレビを家庭から無くする、という判断があるのを忘れてはいけない。無理矢理の国策には「ノー」と言える権利もある。
テレビを観なくてもデジタルの大先輩格であるネットに繋げば、テレビよりも有用な情報が多いのが現実だ。これからの時代、若者の車離れ現象と同様に、人間のテレビ離れが起きても何ら不思議ではないのである。
民放経営も危うくなってきたことだし、テレビ地上波の完全デジタル化は、テレビ局自らが前向きな再編を考える絶好の機会を得たといえるのかも知れない。アナログからデジタルへ周波を変えるだけのテレビ局の姿勢がこのまま続けば、自らが墓穴を掘っていくに違いない。
家庭からテレビが消える。そのほうが今のままだと、健全な環境と言えるのかも知れない。
地デジのメーンキャラクター、こけた。
冒頭のセリフ「地デジの準備はいかがですか」で知られる好感度なスター・草なぎ剛(SMAP、ジャニーズ事務所)が、好感とは真逆の泥酔失態=酔っぱらって全裸で公園でひとりで騒ぐなどして、公然わいせつ容疑で警視庁に現行犯逮捕され、翌日釈放された。
「デジタル放送推進協会」はデジタル化を推進しているNHKと民放全局に対して「地デジの準備はいかがですか」などのCM+広報放送を中止するよう要請。総務省は地デジ推進用に彼を起用したポスター5万枚、チラシ60万枚、パンフレット40万部を製作していたが、差し替えざるを得なくなった。
テレビ界で人気を博するスターが自爆し、テレビ界がおしすすめる「地デジ」キャンペーンがコケる。
皮肉な話だが「地デジの準備はいかがですか」の今後と、安易な人気タレントやスター依存症候群から依然として脱却できないままでいるテレビ界という「虚構の世界」の今後を暗示しているかのようでもある。
しかし、上記の事柄を度外視すれば、30歳過ぎの酒好きなオバカさんがやってしまったことだ。失態ではあるが、たまには馬鹿やっちゃった〜もいい。酒は呑んでものまれるな、ではあるが、酒好きなオバカさんは酒に失礼なくらいに何度でも、酒のうえでの失態を繰り返す。
総務相「最低の人間としか思えない」発言を撤回。
鳩山邦夫総務相は逮捕された草なぎ剛について「最低の人間と言ったのは言い過ぎた。取り消して率直に反省する。人間は人間を評価できない」と発言を撤回した。逮捕時に「最低の人間としか思えない」と強い口調で非難したが、総務省や鳩山事務所に「言い過ぎだ」など抗議の電話が相次いだ。
総務相は「地デジ推進への期待が大きかっただけに失望も巨大だった」と弁明。キャラクター降板については「やむを得ず選び直すことになる」と述べた。
チデジカ?シカ??鹿??? さむ〜すぎる案もこれからを暗示。
メーンキャラクター降板の代理に日本民間放送連盟は4月47日、シカをモチーフにした「地デジカ」をキャラクターに決定したと発表した。まったく意味不明とその場しのぎ+安上がりのぬいぐるみ(着ぐるみ?)のシカの登場には、これからの地デジの行方を暗示しているようで、失望と失笑と落胆の空気感が漂った。しかし、ちゃっかり者の大手マスコミは広報部隊の本領発揮で「受信アンテナ風のツノを持ち、2年後のアナログ放送停止を注意喚起するため黄色い服を着用した地デジカ」と、これこそ「ちょうちん記事の典型例」で対応した。5月から民放各社の地デジCMに登場する。
何のメッセージ性もない代理キャラクター「地デジカ」が登場。ぬいぐるみは、酒に酔って公園で大声をはりあげたりはしないだろうが、着ぐるみの中にいる人については酒好きか否かは分からない。このその場しのぎこそが民放の文化レベルなのか?