ASEAN首脳会議、
東南アジア諸国連合が原発導入するには
国際的に最高度の安全基準を適用すると声明。

 インドネシアのジャカルタで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議は5月8日、原子力の安全性に関する地域協力などを討議し、2日間の日程を終え閉幕した。
 会議の議長声明案では、福島第一原発事故を受け、原子力関連施設の事故が国境を越えて影響をもたらす可能性を指摘。
 原発導入に当たっては「ASEANは国際的に最高度の安全基準を適用する」という方針を打ち出した。

 首脳会議は、2015年のASEAN共同体の創設後、ASEANとして国際的な問題について2022年までをめどに共通の見解で対応することや、紛争解決や危機管理能力の強化のため「ASEAN平和・和解研究所」を設立するとの共同声明を採択した。

 民政移管を果たしたミャンマーが2014年にラオスに代わり前倒しでASEAN議長国を務めたいと要請したことに関しては、要請そのものは承諾に至ったが、議長国就任の正式決定は見送った。

 国境未画定地域を巡り対立して交戦状態に入っているタイとカンボジアの国境紛争に於いては、両国に平和的解決を要請、議長国インドネシアの仲介努力への支持を表明した。
 カンボジア側の「領土を侵犯するタイには平和的に紛争を解決する意思がない」「インドネシアはまず停戦監視団を派遣すべきだ」との主張に対して、タイ側が「紛争を起こす意図はない」「まず、2国間の国防相レベルで話し合うべき問題だ」と反論するなど、両国の溝は埋まっていない。

 加盟国が中国と南沙諸島などの領有権を争う南シナ海問題では、ASEANと中国が02年に署名した「行動宣言」の実効性を高めるため、法的拘束力のある「行動規範」に格上げする協議を、ガイドライン策定に向けて開始するとの決意を示した。
 中国側は当事者2国間での解決を主張し、ASEANが協力して中国と交渉する仕組み作りを拒絶し続けている。

○南沙諸島(スプラトリー諸島)と周辺海域○
 中国は南沙諸島(スプラトリー諸島)と周辺海域については「中国は議論の余地のない主権を有している」との立場をとっている。

 最近になりベトナムが、同諸島を選挙区とする国会議員選挙と地方議会選挙を実施したことについて中国外交部は「いかなる国家も、南沙諸島について一方的に行動すれば、中国の主権の侵犯となり、非合法かつ無効だ。中国と東南アジア諸国連合=ASEAN諸国=が合意した南海各方行為宣言(南シナ海各方面行動宣言)の精神にも違反する」と非難している。

 南シナ海各方面行動宣言は、領有権を巡る争いがある同海域と諸島について武力衝突などを防止する目的で結ばれた。中国、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの各外相が署名している。

 南沙諸島はサンフランシスコ講和条約で日本が領有権を放棄した後、70年代に海底油田が確認されると、フィリピン、ベトナム、中国が領有権の主張を本格化させ、緊張が高まった。1988年には、中国が同諸島の島に観測用建造物を建設したことがきっかけで中国軍とベトナム海軍が交戦し、激戦になったこともある。

■東南アジア諸国連合(ASEAN)■ 
 経済面、文化面、科学技術面、行政面でも協力体制を築いていこうとの思いで、1967年にタイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポールの5カ国でアジアの地域協力機構として発足した。
 その後1984年にブルネイ、1995年にベトナム、1997年にラオス、ミャンマー、1999年にはカンボジアが参加し、東南アジア10カ国で構成する大きな組織に発展した。東ティモールが加盟すると、ASEANは東南アジアに首都を置く全11カ国を迎えて地域共同体として完成する。本部はインドネシアのジャカルタに所在。

 ASEAN諸国の域内人口は約5億7700万人(2008年統計)で、欧州連合 (EU) や北米自由貿易協定 (NAFTA) より多い。
 国連の予測では、2030年には7億人を超えるとされている。
 近年の目覚しい経済成長で貿易額(輸出入)は1兆億米ドルを超えているASEAN諸国は、世界経済において重要な位置を占めるようになり、欧州連合、北米自由貿易協定 、中国、インドと比肩する存在になっている。

 日本はベトナムに対して原発輸出を決めているが、福島原発事故により、曲折が予測されている。

【2011.5.8記】

【関連記事】

中国の監視船で調査妨害されたベトナム、本気で怒る。
 南シナ海でベトナムの探査船が中国の監視船3隻に調査用ケーブルを切断されるなどして妨害された問題について、ベトナム外務省は5月29日、「ベトナムの排他的経済水域(EEZ)および大陸棚での通常の調査を妨げる行為で、重大な主権侵害だ」と非難の会見をして、中国に対する怒りをあらわにした。

 両国は南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島、西沙(同パラセル)諸島の領有権を争っているが、今回の現場、国営石油会社ペトロベトナムの石油・天然ガス開発鉱区は、両諸島から離れていることから、ベトナム外務省は「中国は争いのない場所を、わざわざ、しかも意図的に領有権係争地にしようとしている」「過去から現在に至るまでで、これは、最も深刻な領海侵犯だ」と批判すると共に「外国投資家の心理にも影響を及ぼす許し難い行為だ」と、中国の姿勢に大いなる懸念を示した。

 ベトナムは中国側に抗議し、再発防止と損害賠償を要求したが、中国は「管轄海域での正常な監察活動だ」と反論している。


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