軽口コラム

核燃料サイクル開発機構って
カルト集団?

 核燃料サイクル開発機構は11月26日、原発の使用済み核燃料を再処理した際に発生する核のゴミ=高レベル放射性廃棄物をガラス固化体し、地表から500〜1000メートルの深地層に埋めるという「高レベル放射性廃棄物最終処分」について、「約10万年たっても人が住む環境を脅かすことなく安全に処分可能」とのリポートをまとめ、原子力委員会に報告した。

 このリポートは「日本の地質環境」「地層処分の工学技術」「安全評価」の3冊と総論からなっている。
 それによると、処分する地層については、活断層や火山地帯を避け、地殻変動の影響を受けにくい地域を選ぶことは可能だとし、固化体を覆う隔壁についても技術的には従来の想定よりも厚みを減らし、経済的にも負担の小さい処分法が取れるとした。その上で、地下水の塩分が強まったり、地下水の流れが速まったりした場合を想定しても、日本には今後10万年以上経過するまでに人が住む環境に及ぼす影響を心配することのない地質環境が広く存在し、長期にわたって地層処分に求められる条件を満たす処分施設を適切に設計、施工する技術もあり、安全性は保たれると結論付けた。

 原発や核施設に関しては、常に「先に問題なし」とする段取りがあるようだが、今回はその段取りがエスカレートし過ぎて、ついに核燃料サイクル開発機構は10万年先を予測するカルト集団になったようだ。

 現実には、家庭ゴミや事業ゴミでも処分施設を巡って問題や課題が山積されている時代。にもかかわらず、核のゴミの処分施設に対して「問題はない」と主張できる技術は、いくらあつかましい日本でも皆無。ましてや事故続きに事故隠しが常習の核燃料サイクル開発機構に、それを言う資格も能力もないのが偽らざる実情だ。

 現在頻繁に発生する原子力施設の事故さえ「予測不能だった」とするこの時に、優秀な科学者集団を自認するお方たちが、「10万年先も大丈夫だ」としたのは、きっと何かがトリツイテいたに違いない。

 どうやらリポートをまとめる前に、オハライを忘れていたようだ? 明日の技術もままならないのに未体験の10万年先を予測するとは、何とカルトな。もしかして、これまで出現した何じゃかんじゃのカルト集団とは比較にならぬ程の大カルト?すると、それを信じるお方は、・・・?(11/26)

※「社会一般・ニュースハイライト」の「稼働中の原発、30年稼働から60年稼働に使用期間を延長」に詳細な関連記事があります。

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介護(要介護)認定申請の受け付けが
始まったものの

 高齢者自身が高齢者を在宅介護する寝たきりの高齢者は約11万人に上り、「老老介護」が深刻化している中、2000年4月の介護保険制度施行を前に、被保険者に介護が必要かどうかを判定する要介護(要支援)認定の申請受け付けが10月1日から全国の市町村で本格的に始まった。
 介護サービスを受けられるかどうかが決まる要介護認定の申請開始によって、介護保険制度は実質的に動き出したが、認定作業をめぐっては、「模擬試験」によって、コンピューターが分析して判断を出す厚生省が配布した「認定ソフト」の欠陥をはじめ、訪問調査をする各市町村の「調査員」が下す判定のバラつきなど、認定以前の入り口でまだ、基本的な課題が山積されているため、機械的かつ事務処理的な対応や判断先行の仕組に対する批判を筆頭に、今後の混迷が予測されている。

 また一方では、「介護保険」がスタートする2000年を皮切りに、公的介護保険対象サービスの市場規模は、売り上げや雇用規模ともにドル箱で、介護サービス需要は軽く1兆円市場になるという予測でざわめいている。
 これまでのボランティア感覚での「福祉」では知らん顔、もしくは邪魔者扱いだった「お年寄り」の存在が「即、儲け」に直結するとなれば、理屈抜きのありがたい存在以外の何物でもない「カネのなる木」に急変。新規産業の創出にも位置付いた。
 そして今や、「われ先に」と介護サービスの会社法人を立ち上げて「高齢者狩り」にも近い「顧客確保」に躍起になる所も出始めた。
 さらに、機器の分野にも新製品が続々登場し、介護保険スタート後には、家電に匹敵する6兆円市場に成長するとも予測され、大企業は勿論のこと、ベンチャー企業や異業種まで、新製品の発明合戦にこぞって参入し、熾烈な戦いが繰り広げられている。

 そうした中、高齢化率全国3位の秋田県で、65歳以上の高齢者3人に1人が、来年開始の「介護保険制度」に期待してないというアンケート結果例が、秋田県高齢者介護支援協会から示された。
 アンケート人数は少ないものの県内160人に聞いたところ「期待していない」が35%で「期待している」の22%を上回った。また、半数が、自宅か自分の子供の所で介護を受けることを希望した。「誰に身の回りの世話をして欲しいか」の問いには、男性の62%が「妻」、女性の23%が「嫁」と回答した。

 また、岩手県水沢市では、来年4月の介護保険制度の導入に伴ない、直営のホームヘルプサービスの打ち切りを決めたところ、ヘルパー側が「解雇通告だ」と反発し、市との対立が続いている。
 水沢市のヘルパーは26人だが、すでに農協など5つの民間事業者が打ち切り後の参入を希望し、市は、4月からこのれらの民間事業者への再就職を斡旋している。しかし、現在の体制でヘルパーが介護している高齢者や家族も、民間委託に対してはサービスの低下などをはじめ継続性などに不安を抱いており、9月には、市民の3割にあたる約1万8000人が「直営サービスの継続」を求める署名も市に提出するなど、批判が続いている。このため、ヘルパー側はサービスの低下や待遇面の不安などから、訴訟も視野に入れて対応を検討している。

 こうした現実の中で、暴走気味の介護ビジネスの発展が朗報なのか皮肉な動向なのか、利害や見方によって判断は様々に分かれるが、21世紀に向けてのビジネスチャンスが「小子高齢化社会」の中にあるというのは、やはりあまり喜べない時代状況のようだ。(10/21)

●要介護認定● 
 訪問調査で85項目を質問し、その結果をコンピューターによって一次判定する。訪問調査員が記入した特記事項や主治医の意見書と併せ、介護認定審査会で二次判定し、介護の必要度を「自立」「要支援」「要介護1〜5」の計7段階に分ける。「介護の必要あり」と判定されると、在宅の場合で月額6万4000円(要支援)から36万8000円(要介護度5)までのサービスを受けられる。

●高齢者世帯●
 厚生省の1998年国民生活基礎調査によると、65歳以上だけの「高齢者世帯」(高齢者以外に18歳未満の未婚者が同居する世帯も含む)は561万4000世帯で、割合は過去最高の12・6%。8世帯に1世帯は「高齢者世帯」で、高齢者のいる世帯も1482万2000世帯(33・3%)と世帯数、割合とも最高となっている。

●サービスの「充足率」●
 介護保険制度が始まると在宅サービスの柱になるのがホームヘルプサービスや訪問看護だが、厚生省がまとめた在宅サービスの「充足率」は、ホームヘルプサービスは全国平均で希望量の84%が確保できるものの、充足率が100%の市町村は全体の51%にあたる1494にとどまっている。また、訪問看護は全国平均で65%で、充足率が75%を超える市町村は全体の55%にあたる1602にすぎなかった。デイサービス・リハビリテーションの全国平均の充足率は72%、ショートステイは76%。
 また、施設介護サービスに関しては、来年度、特別養護老人ホームが30万5000人、老人保健施設が20万7000人、療養型病床群が19万1000人の入所や入院が見込まれているが、98年度に特別養護老人ホームへの入所を希望していながら、「空きがない」などの理由で、在宅で待機せざるを得なかった高齢者数は約4万7000人に上っている。

 これは、市町村が調べている、「在宅サービスを高齢者が利用したいかしたくないか、利用したいならばどれだけの量を利用したいか」などの利用希望量に対し、実際に来年度から5年間にどれだけのサービスを市町村が確保し、提供できるかを示す割合を、厚生省が10月15日現在で都道府県を通じて集計し、「充足率」としてまとめたもの。

●介護保険料をめぐって●
 政府・自民党は、選挙をにらんで、制度実施後おおむね半年間は保険料を徴収しないことや家族介護に慰労金を支給することを基本的に決めた。
 「65歳以上の高齢者の保険料徴収を半年間猶予した後も1年間半額とする」「40歳から64歳の財政支援による限定的な軽減措置も1年間に延長する」としている。
 65歳以上の軽減措置については半年間の保険料猶予で約3900億円、その後1年間の半減で約3900億円の計約7800億円、40歳から64歳までの軽減措置で約1200億円を見込んでおり、第二次補正予算に1兆100億円、来年度当初予算案に600億円を計上する。
 勿論、財源はすべて「国債」。益々、国債の赤字が膨張しそうだ。ちなみに政府は、二次補正で赤字国債と建設国債を計6兆円程度増発する方針で、99年度の国債発行額は、当初見積もりの31兆500億円から、37兆円超に膨らむ模様。これにより、2000年3月末の国債発行残高は327兆円に増え、財政の危機的状況は一段と深刻化する。

●ゴールドプラン21●
 丹羽雄哉厚相、宮沢喜一蔵相、保利耕輔自治相の三閣僚の協議で決定した新たな高齢者保健福祉計画「ゴールドプラン21」は、介護保険制度が始まる2000年4月から5カ年間の介護サービス基盤整備などが盛り込まれた。
 在宅介護の充実に重点を置き、ホームヘルプサービスを35万人分、訪問看護ステーションを9900カ所と、いずれも現行計画を倍増する。また、特別養護老人ホームも7万人分増やし、36万人分を確保するほか、痴ほう性の高齢者が共同生活を送るグループホームも3200カ所整備する。

●介護保険の利用限度額●
 厚相の諮問機関「医療保険福祉審議会」の介護保険担当部会は1月28日、介護保険での在宅・施設の各種介護サービスの介護報酬(単価)について厚生省案を了承することを答申。これにより、介護保険全体の枠組みがほぼ固まり、厚生省が提示した訪問介護の「折衷型」の導入も決まった。
 利用限度額は、1カ月単位の訪問通所サービスと、6カ月単位の短期入所(ショートステイ)に分けられている。高齢者が利用できる在宅サービスの1カ月の利用限度額は、要支援=6万1500円、要介護1=16万5800円、要介護2=19万4800円、要介護3=26万7500円、要介護4=30万6000円、要介護5=35万8300円。
 特別養護老人ホームなどへの短期入所の6カ月ごとの上限は要支援=7日、要介護1〜2=14日、要介護3〜4=21日、要介護5=42日。ただし、訪問通所サービスの利用を控えた場合には短期入所の上限を2〜1.5倍に増やせる。このほか、福祉用具購入費は年間10万円まで、住宅改修費は20万円まで保険から支給される。在宅サービスのうち、訪問介護(ホームヘルプサービス)は「身体介護中心」「家事援助中心」「家事・介護折衷型」の三つに分けら、それぞれの単価は所要時間で決まる。
 厚生省は2月中旬までにサービス単価を官報で告示する。

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●サバイバル大砂漠ラリーのパリダカ、
コンピューターには勝てず●

 2000年に行なわれる「パリ・ダカールラリー」は、コンピューターの2000年問題による混乱や危険を防止するため、恒例の元日スタートを取りやめ、パリからダカールに空路で移動した後、1月6日のダカール出発から競技が本格開始され、カイロに向かうという日程になった。
 パリダカに参加するすべての競技車は、「全地球測位システム・GPS」を装備。技術文明が生んだ「車」や「バイク」を駆使した砂漠のラリーでは、さすがの四輪駆動車をもってしても、これがなければ競技者は自分の位置を確認することができないのはもとよりゴール地点を目指すことも出来ないのが実情で、いわゆる「カーナビ」は必需品になっている。
 しかし、GPSは2000年問題で1月1日に誤作動を起こす危険性が指摘されているため、関係者から「GPSの不具合で競技者が砂漠で自分の位置を見失うと生命の危機に直結する」「特にオートバイの競技者には危険が大きい」という意見が半数以上を占めた。
 「本来のサバイバル精神が大事」「砂漠の中で2000年の新年を迎えたい」という希望も多く出たが、「2000年問題の保険会社の対応で1月1日は保険をかけられないという現実もあるので、危険な選択は絶対にできない」と主催者側が判断して、異例の日程変更になったという。

 大砂漠のラリーに堂々と挑む勇者たちの姿と、そのサバイバル精神や大自然の中で葛藤を繰り返すチームの結団力などなどが毎年、人間ドラマとして紹介されて人気を増す「パリダカ」。しかし、「保険契約」に裏打ちされたサバイバル精神やコンピューターに支えられた砂漠での葛藤や気迫は、2000年問題を前にいとも簡単になえてしまったようだ。(6/18)

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●愛煙家さらに苦境に●

 愛煙家の居場所が狭められて久しい。ここ数年は、禁煙・分煙のスペースづくりも加速し、愛煙家は肩身の狭い思いを続けている。
 そうした状況に追い打ちをかけるように「世界禁煙デー」というものも出現。新聞などの見出しには「灰皿なしの企業続々」とか「分煙当然、喫煙者不採用も」などの活字も踊り出した。報奨金や景品で禁煙努力を促す「禁煙マラソン」など、「タバコの煙が立たない職場環境を」との取り組みも目立つ。極めつけは、欧米などの事例を取り入れて「非喫煙を採用基準にする」会社まで日本に誕生するといったあんばいで、愛煙家には甚だ「耳ざわり」な世の中の傾向が伝わってくる。

 自らの健康に悪く、かつ周囲への煙害も見逃せないことを十分に知りつつも、愛煙家たちは「一服、二服、三服」に至福を感じている。環境問題や健康問題などを真剣に論じたあとの一服も、これまた「矛盾する」行動が伴なって極めてうまい味がするものである。
 しかし、そろそろ「愛煙家」という文字や表現も消え、「犯罪者」のトーンに限りなく近づいた「喫煙者表現」が成される時代になってきたことを「愛煙家」も薄々、気付き始めている。

 「この一箱で」「この一本で」の言葉を発しながら今日も、愛煙家たちの「禁煙前宣言」が日本のどこかで繰り返されて、「また出来なかった」のセリフと共に、あきらめにも似た一服の紫煙がモクモクとあがっている。(5/29)

●厚生省の調査●
 日本の喫煙者は男性が2642万人、女性が721万人で、その半数以上にあたる約1800万人が「たばこ依存症」だとか。また10代で習慣化した人が依存症になる確率が62%と最も高く、たばこを「やめたい」と思っているのは男25%、女35%。「本数を減らしたい」が男38%、女35%。たばこ対策への要望としては、「駅や病院の禁煙推進」「職場での原則禁煙」「学校での教育機会を増やす」「たばこ税を健康のために使う」が7割以上といった結果が出た、とも。厚生省は生活習慣病を減らすため2010年までに成人の喫煙率を半分にし、未成年者の喫煙をなくすことを目標にしている、とか。

●各国の動き●
 たばこ広告を段階的に減らし、2006年には全面禁止にすることを決めているEUだが、その欧州委員会は、たばこのパッケージに「喫煙が殺す」との警告文表示を義務づける規制案をまとめ、EUの閣僚理事会に出した模様。案では、包装上の一番目立つ位置に警告文を黒枠で囲んだ白地に大きな黒字で「SMOKING KILLS」と印刷するほか、甘味料や香料などの添加物表示も義務づけ、1本当たりのタール含有量の上限を12ミリグラムから10ミリグラムに下げ、ニコチンは1ミリグラムまでとし、煙のCO(一酸化炭素)も規制して10ミリグラムにする、というもの。

●増税の動き●
 自民党の亀井静香政調会長あたりが、来年度税制改正で「たばこ税」を1本当たり2円程度増税すべきだと主張している、とか。
 1999年は旧国鉄と国有林野の長期債務の返済の一部に充てるために、無関係のたばこに対して1箱当たり20円の税が上乗せされたばかり。今度は、国の税収不足に対応するのが目的とかで、「年間約5000億円の増収が見込める」というが、日本タバコが「そんな無茶な、絶対拒否」の姿勢で、いまのところ棚上げ。

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●タイミングは最悪?それとも絶好?●

 「中国は、スパイ活動で1970年代後半から約20年間にわたって米国が開発した7種の核弾頭と中性子爆弾の技術を国立の研究機関から組織的に盗み出し、米国を射程に入れる核搭載大陸間弾道弾の実戦配備を可能にした」と断定した米下院特別委員会の報告書が公表されたが、中国外務省スポークスマンは早速「米国の一部の反中勢力が中国への敵視と偏見をみなぎらせて報告書をでっち上げ、『中国脅威論』をまき散らした」と厳しく批判。「覇権主義に凝り固まる米国に対しての政策そのものを見直す必要がある」との声も中国内で出始めた。中国にとってはNATOによる在ユーゴ中国大使館誤爆事件に続く、「アタマにくる」アメリカ側の行為で、米中間の亀裂が深まるのは避けられず、関係冷え込みが長期化する様相を呈してきた。
 大使館誤爆事件で対米対決姿勢を取った中国が事態収拾に動き出そうとしていた矢先で、かつ天安門事件10周年や建国50周年で中国人が愛国心を高めつつあるこの時期に持ち出された「スパイ疑惑」報告書の公表は、またしても「最悪のタイミング」で、中国人の自尊心を大きく傷つけ、対米非難の火に油を注ぐことになったようだ。

 また、よせばいいのにヘルムズ米上院、ギルマン下院の両外交委員長(ともに共和党)は、中国による核スパイ疑惑や中国大使館誤爆後の米中関係の冷却化を受けて、中国のWTO加盟をめぐる米中交渉を停止するよう求めた書簡をクリントン大統領に送った、とか。クリントン大統領は5月25日に対中関与政策の継続を宣言したが、米議会外交政策の有力者である両委員長の要請は、米中両国が目標とする中国のWTO年内加盟を一層難しくし、両国関係をさらに、さらに悪化させそうだ。

 また、国連の指揮下で戦争犯罪人を裁く国際法廷として1996年に設立されたオランダのハーグに置かれている旧ユーゴスラビアの国際戦犯法廷が「コソボ自治州内での虐殺やアルバニア系住民に対する弾圧など、民族浄化を進めた」としてユーゴのミロシェビッチ大統領を戦争犯罪で起訴したことに対しては、「今回の起訴は外交によるユーゴ・コソボ紛争の解決をさらに遠のかせることになる」「NATO軍空爆を正当化する口実にすぎず、米英中心の策略は見えみえ」と疑問の声が集中する中、「グッドタイミングだ」と喜ぶのは、やはり米英。
 特に米英にしてみれば、最初の肝心な問題は「ユーゴ側の住民虐殺という非人道的行為が先にありき」。これに視点を戻して最近の空爆批判をかわし、さらにミロシェビッチ大統領に対しては「国際戦犯」の烙印を「国連認証」の下で押し、NATO有利に和平交渉を進めたいのは山々。
 ロシアのチェルノムイルジン特使を中心とした外交交渉が活発化し、ユーゴ側もG8外相会議の和平案を交渉の出発点とすることに同意するなど、政治的解決の機運が生まれていた矢先の事だけに、この時期の起訴には、これもまた「最悪のタイミングだ」と批判の声が上がっているものの、米英はどこ吹く風のようだ。

 前後の見境もなく「流れ」を度外視したこうした動きは、目立ちたがり屋さんの「デベソ」が多いから? それとも「純粋」?「単細胞」? それとも「画策」することで生じる「混乱」や「こじれ」を楽しみたい人たちが多いから?(5/27)

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●ユーモア外交と冷めたピザ外交●

 中国の朱鎔基首相が訪問先のアメリカで大いにうけた。4月7日のニューヨーク・タイムズ紙は「ユーモアのうまい中国首相が米国に到着」との見出しで報じ「外交的声明で使われる決まりきった言葉もほとんどなかった」などと紹介し、「冷めたピザのように生気に欠ける」と厳しく皮肉ったどこかの首相への評価とは違い、アメリカのメディアは好意的に受け止めた。

 朱首相はロサンゼルス市長主催の昼食会や中国系市民との夕食会で「人権問題はルソーやアメリカの独立宣言問題からさかのぼって延々と語る必要があり、10分間では到底足りない」「今秋の建国50周年の軍事パレードで披露する最新兵器はアメリカから盗んだものではないので、メード・イン・チャイナと書いたらどうかと助言された」など、持ち前のジョークを交えて語り、笑わせた。

 中国に対する核弾頭技術のスパイ疑惑や人権問題に対して批判的な空気が強く、また、中国が望むWTO(世界貿易機関)加盟も「時期尚早」とする意見が多い中での訪米の感想も「北京駐在のアメリカ大使らからは、最悪の場合、殴られて青あざができるかもしれないが、笑顔を絶やさないようにと忠告を受けた」とサラリと表現し、米中対立の微妙な問題も軽快なユーモアでかわした。

 そしてアメリカは、中国のWTO加盟について「重要な進展があった」として「今年中の加盟を目指すことで一致した」との声明を「共同声明」として発表したが、実際の交渉の行方の困難な局面を象徴しているかのように「WTO加盟に絡む貿易交渉では、中国の農産物関税の引き下げなどで合意、前進をみた」とするアメリカの発表に対して朱首相は「我々は最大限の譲歩をし、今年中の加盟を目指すことでは意見は一致したが、関税の引き下げにはまだ最終的な同意はしていない」とし、中国側の大幅な譲歩案を記した市場開放に関する文書などは「アメリカ側が自らの要求を記したもので、それは合意文書ではない」と厳しく非難した。また、このアメリカのフライング気味の声明発表に関して朱首相は「今のアメリカが持っている政治的雰囲気のためで食い違いは重大なものではない。両国の違いは極めて小さい」と述べ、焦るクリントンとは対照的に「中国3000年の歴史はダテではない」といわんかのように余裕を示した。
 交渉協議は、アメリカ側の価値観を優先させるといういつものパターン通りにはいかず、人権、台湾問題でも予想通り双方が原則的立場を主張して譲らず、協議は平行線に終わった。しかし、大きな流れで見れば今回の朱鎔基首相の訪米が、後退局面にある米中関係を好転させるきっかけづくりになったのは確かなようだ。

 そしてアメリカは「中国の農産物関税の引き下げなどで合意、前進をみた」という表現箇所を削除したうえで「中国のWTO加盟を強力に支持する」と、大幅に中国側に譲歩、異例の共同声明の改訂を行なった。

 一方、自らを「オプティチズム」(楽観主義)と表現し、少々さむいオジンギャクしか持ち合わせていない日本の小渕首相は、予想通りの「冷めたピザ」状態でアメリカを漫遊。「オブチの今回の訪米ハイライトは、大リーグのシカゴ・カブスの始球式くらいのものだ」とホワイトハウス高官からも冷笑された。

 また、ワシントンポスト紙は「まったく興奮しない。オブチ外交は中国の朱鎔基のようにクリントン政権の外交戦略に大いなる影響を与えるものでもなく、また歴史的意味も何もないものだ。歴史的意味ではNATOの50周年式典のほうがまだましだ」と酷評した。

 さらにホワイトハウス側は「オブチ対応よりも優先順位はユーゴ情勢」と言わんかのようにクリントン大統領が急きょ、ロシアのチェルノムイルジン特使との会談に熱中するなど、一般人同様のゴールデンウイーク気分での平和ボケ訪米は、首脳会議でも簡単にあしらわれてしまった。

 ガイドライン法案成立というアメリカ向きの手土産をひっさげた日本の首相が、4月下旬〜5月にかけての訪米でどう受け止められるか? また、どのように主張するのか? が一応のところ注目されていたが、やはり、朱鎔基首相に比すれば、それは寄席でいえば前座と真打ちの違いに匹敵したようだった。(5/4)

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●学級崩壊?●

 小学校のみならず、保育園も「学級崩壊」の芽が出始めているらしい。

 東京武蔵野市にある民間の臨床教育研究所がまとめた「子どもと親の最近の変化に関するアンケート」結果では、保父母の七割以上が「言動が荒っぽく、自己中心的な園児が増えた」と感じているとも。
 最近問題になっている小学校低学年の「学級崩壊」は、「幼児期の子育てが大きく影響していることも間違いない」とする意見が多く、アンケートに応じた約450名の内九割の保父母が「子どもを受容することと、わがままを許すことの区別がついていない親が増えた」と答えた。
 また七割以上の保父母が最近の園児について「自己中心型が増えた」「言動が荒っぽくなった」「片付けやあいさつができない」「すぐにパニック状態になる」と回答している。

 これはそのまま、「最近の人間は」という枕言葉に続く「自分勝手であいさつもろくに出来ず、困ったら直ぐにパニくる」というものにも当てはまり、今の大人社会をそっくり反映した形になっている。

 ちなみに園児の行動としては、気に入らないと保母に「うるせえ」「くそばばあ」と言い、しかられると集団で反発し、部屋から出ていくなど、最近の人間の行動パターンがやはり反映されたものになっているようだ。中には、夜、PHS(簡易型携帯電話)でおしゃべりを楽しんでいる四歳児同士もおり、取り巻く環境そのものが保育園児らに映し込まれている。(2/12)

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軽口コラム
▼1998年の軽口コラムバックナンバー目次▼


「キツネとタヌキ」

「お米の減反が意外なところに貢献?」

「防衛庁の隠し芸」

「失笑をかう」

「コケにされた候補者たち」「橋げたの礎石」

「竹みつと空砲」

「政党の偽装結婚と偽装離婚」


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