【核&被ばく&原発関係】
●揺れる原発政策。
●ビキニ水爆実験で被ばくした第五福竜丸元乗組員の病床からの訴え、叶う。
●JCOの事業許可取り消し。
●JCO臨界事故、大量放射線被ばくの大内久さん死亡。
●国民投票で原発全廃を決めたスウェーデン、原発の閉鎖を開始。
●MOX燃料のデータねつ造でプルサーマル計画の見直し必至の状況に
●国内原子力史上最悪、「起こらない」と言われていた「臨界事故」が発生
●イギリス原子力公社、猛毒の放射性物質プルトニウムを吸引する人体実験を実施。
●アメリカ、民用の原発で核兵器の水爆材料生産を決める
●稼働中の原発、30年稼働から60年稼働に使用期間を延長。
●動き出した核燃料サイクル事業/青森、押し付けられる核と核のゴミ
●資源エネルギー庁、動燃再処理工場の爆発事故を一切掲載せず、市民向け原子力解説冊子を発行
●世界の原発は減少傾向、日本は依然として増加
●アメリカで高レベル放射性廃棄物が漏れ、汚染が深刻化
●ビキニ環礁の水爆実験で被災した日本の遠洋マグロ漁船、元第五福龍丸乗組員の呼びかけ
ビキニ水爆実験で被ばくした第五福竜丸元乗組員の病床からの訴え、叶う。
1954年、マーシャル諸島ビキニ環礁でのアメリカの水爆実験で「死の灰」を被った日本の遠洋マグロ漁船856隻。その被災船のひとつ第五福龍丸の元乗組員、小塚博さん(69歳/静岡県相良町在住)が、「C型肝炎に感染したのは被ばく治療の際の輸血が原因で、職務上の災害にあたる」として、船員保険の給付を求めている問題で、国の社会保険審査会は8月4日までに、給付を認めなかった静岡県の社会保険審査会側の処分を取り消し、小塚さんの訴えを認める裁決を出した。
被災当時、第五福龍丸の乗組員23人は全員が被ばくしたことから急性放射能症となり、国立病院で輸血を受けた。小塚さんは、10年前から体のだるさや食欲不振に襲われ、C型肝炎と診断されたため、「被ばく治療の際の輸血が原因で、職務上の災害にあたる」として1998年に治療費給付を静岡県に申請。しかし、県の社会保険審査は「輸血が原因と推定せざるを得ない」と小塚さんの主張を認めながらも、被ばく治療後に、いったん仕事に復帰したことなどを理由に「社会通念上の治癒にあたる」として小塚さんの申請を認めず、治療費給付を退けた。
第五福龍丸の乗組員はすでに11人が死亡しているが、今も小塚さんと同様に肝炎に感染し、苦しんでいる元乗組員がいることから、小塚さんは、国の社会保険審査会に審理を請求し、公開審理の陳述で自らの思いを訴えることに執念を燃やしていた。国の社会保険審査会は5月25日、厚生省で公開審理を実施したが、小塚さん自身の病状が悪化し、病床から離れられなくなったために、同じ乗組員で共に被ばくした大石又七さん(66歳/東京都大田区在住)や代理人の弁護士、医師らに自分の思いを託した。
5月25日の審理では、小塚さん側の弁護士や医師が「被ばく治療後に、いったん仕事に復帰したことなどを理由に社会通念上の治癒にあたるとした社会的治癒の考え方は、感染から発症まで長期間にわたるC型肝炎を念頭に置いていない」「元乗組員はほとんど同じように肝炎になっており、輸血が原因と推定せざるを得ないのにもかかわらず、給付を認めないという行政判断は不可解」と批判。
肝癌になり、治療で一命をとりとめた第五福龍丸元乗組員の大石さんは、肝炎と被ばく治療との因果関係に疑問を呈する国側に対し、「死んでいった仲間も声にならない声で訴えていた。現実に何人も同じ経過をたどっている事実を無視するのか」と怒りをぶつけるように陳述した。これらの状況を考慮に入れ、社会保険審査会は「被ばく治療によりC型肝炎に感染したことは否定できない」としたうえで、「感染から発症まで長期間にわたるC型肝炎の特性などを考慮すると、治癒したとはいえない」と裁定、小塚さん側の訴えを認めた。
※ビキニ環礁の水爆実験で被災した日本の遠洋マグロ漁船、元第五福龍丸乗組員の呼びかけ
JCOの事業許可取り消し
茨城県東海村のウラン加工施設JCO東海事業所の臨界事故で、 科学技術庁は2月3日、JCOの加工事業許可を取り消す行政処分の方針を決め、官報で公示した。
そして3月13日、JCOや関係者から意見を聴く聴聞会で、JCOの木谷社長が取り消し処分に従うと延べたことから、事実上事業許可取消処分が決まった。
原子炉等規制法に基づくものとしては、過去に旧動力炉・核燃料開発事業団のもんじゅ事故などで1年以内の操業停止の例があるが、事業許可取消は、最も重い処分で、 日本の原子力開発史上初めての例になった。臨界事故以来、JCOでは自主的に操業を全面停止しているが、業務上過失致死傷と炉規法違反などの容疑で、刑事責任が問われる企業にもかかわらず、1月5日に木谷宏治社長が操業再開の意向を表明するなど、地元をはじめ国民の反発を受けていた。
今回の事業許可取消は、原子炉等規制法に基づくものだが、それにとどまらず、安全管理や安全意識の欠如など、基本的には企業の社会的責任が背景にあることは否めない。ちなみにJCOの生産ラインがなくなると、国内でウランを再転換するのはJCOと三菱原子燃料の2社だけのため、国内の核燃料製造能力は大幅に低下する。核燃料製造メーカーなどは、コスト安の海外企業への依存度を高めてめており、JCOからの供給がなくても当面は燃料が不足する事態にはならない、と見ているが、長期的には原子力業界全体としてのダメージは避けられない模様だ。
法律上は処分後2年で再申請が可能だが、科学技術庁では「現時点で再開、再申請の議論をするのはまったく不適切」としている。
JCO臨界事故、大量放射線被ばくの大内久さん死亡
茨城県東海村のJCO東海事業所での臨界事故で、大量の放射線被ばくをし、東京大学付属病院に入院していた同社員の大内久さん(35歳)が事故発生から83日目の1999年12月21日午後11時21分に還らぬ人となった。
大内さんは、普通の人が1年間に浴びる放射線の約1万8000倍に当たる推定15〜20シーベルトもの致死量を上回る大量の放射線を全身に浴び、やけど、臓器障害、腸の障害など、急性放射線障害の典型症状とされる悪化が続いた。
大内さんのからだは、被ばくにより血をつくる幹細胞が破壊されたため、造血と免疫の機能再生のために放射線障害の治療としては世界初の「末梢血幹細胞移植」が10月6〜7日に実施された。しかし、影響は体の深い部分までおよんでいて、やけどで皮膚がはがれても再生しない状態となった。全身の7割が熱傷していることから、皮膚の脱落が続いて体液が1日に3キロ程度流出、1日10リットル前後の輸血と輸液の点滴をし、大規模な皮膚移植を繰り返したが、全身の熱傷や腸管の損傷、呼吸器障害、免疫力低下などが大内さんを次々に襲い、容体が悪化。
大内さんは、11月27日午前7時すぎにはいったん心臓が止まるなど、重篤な事態にもなっていた。心臓マッサージや昇圧剤の投与などで1時間後に自発呼吸が回復したが、心停止状態の際に、肝臓に血液が通わなくなり、呼吸、循環機能が極度に悪化するなど厳しい状態が続き、酸素注入や昇圧剤の増量などで血圧や脈拍など、かろうじて維持している状態が続いていた。事故当時、大内さんは同事業所の転換試験棟で、酸化ウラン粉末を硝酸に溶かす作業に従事。ウラン精製の作業でウラン溶液を沈殿槽に大量に入れたため、溶解に使っていた沈殿槽で核分裂が連続する臨界反応が起き、その瞬間に発生した中性子線を中心とする強い放射線に直撃され、大量に放射線被ばくをした。すぐに現場から助け出されて茨城県水戸市の国立水戸病院に運び込まれたが、被ばく症状が重いため、科学技術庁直轄の千葉県千葉市にある放射線医学総合研究所病院にヘリ移送された。検査の結果、大量被ばくが判明し、東大病院に移送して徹底治療が実施されていたが、放射線被ばくによる多臓器不全で亡くなった。
原発を含む国内の原子力施設で、公にされないままに何らかの被ばくを要因とする死者は、因果関係の確実な立証に至らないまでも、これまでも出ている模様だが、今回の惨事のように、国内初の臨界事故で、大量に被ばくしたことが原因で直接、死亡したのは大内さんが初めてになる。
国民投票で原発全廃を決めたスウェーデン、原発の閉鎖を開始。
1980年の国民投票で原発の全廃を決めているスウェーデンで、稼働中の原発を運転停止、閉鎖する作業が開始された。
総発電量の約半分近くを原発に頼っているスウェーデンは、国民投票で、原発の新規建設の中止と既存原発(稼働中の原発は12基)を2010年までに全廃することを決定していたが、閉鎖を指名された民間電力会社などが強く抵抗を続けると共に、雇用や経費、代替エネルギーへの転換の遅れなどの問題で脱原発政策は事実上、後退していた。
このほど閉鎖に動いたのは、スウェーデンの民間電力会社シドクラフト社で、これまで同社も原発廃止には抵抗を続け、閉鎖実施を先送りしてきた。しかし、政府との協議で、国営電力会社から2基相当分の電力約120万キロワットの無償供給を受けることが可能になったため、1999年11月30日に同社は、スウェーデン南部のバーシェベック原子力発電所1号機(沸騰水型、出力約60万キロワット)を運転停止し、完全閉鎖に向けての作業を開始した。2号機も閉鎖する。
1号機は1975年から稼働。30年寿命から見るとあと5年は稼働可能だった。勿論、日本のように60年稼働に道を開いた国からすれば十分に稼働が可能な原発だ。
民間原発が廃炉となるのは世界でも異例。これを受けて、脱原発政策を打ち出している欧州各国がどのように反応するのかが注目される。
MOX燃料のデータねつ造でプルサーマル計画の見直し必至の状況に
福井県高浜町の高浜原発4号機でプルサーマルを計画している関西電力は1999年12月16日、イギリスで製造されたMOX(プルトニウムとウランの混合)燃料データで、また新たなねつ造が見つかったため、輸送されたMOX燃料すべて(8体)の使用を中止すると発表した。
これまで関西電力は、福井県高浜町の高浜原発3号機用燃料については、MOX燃料の検査データが、製造元のイギリス核燃料会社(BNF L)でねつ造された問題が発覚したため、3号機用燃料をすべて作り直すとして、来春予定の3号機でのプルサーマル計画は1年程度遅れるという見込みを示していた。しかし、4号機用は「問題なかった」とする最終報告書をまとめ、11月1日、福井県に提出、「年内にも運転を始める予定だ」とし、これを受けて福井県知事も、一時は「輸入燃料体検査に入ってもらう。問題はないし見直す考えはない」としたが、地元の意向を考慮し、11月19日、「高浜町議会と県議会の議論を踏まえたい」と、12月県議会後にあらためて計画に対する最終判断を表明する意向を示していた。このため関西電力は、年内開始を予定していた高浜原発4号機のプルサーマル運転を来年1月に伸ばすことに方針変更。「4号機用の燃料は何ら問題はない」とし、資源エネルギー庁や原子力安全委員会および関西電力側は「ねつ造はなかった」と強調していた。
しかし、プルサーマル計画を疑問視する市民団体は、「関電が公表した検査データをもとに分析した結果、4号機用燃料についても記録にねつ造の疑いがある」と指摘すると共に、燃料の使用差し止めを求めて大阪地裁に仮処分を申請した。
そんな折の12月9日、イギリスのガーディアン紙が「イギリス核燃料会社(BNF L)でデータ偽造のあった燃料の一部は日本へ送られたことが、この問題を調査した検査局のイギリス政府への報告で分かった」と、日本に送られた高浜4号機分の燃料についてもデータ偽造の可能性があることを報じ、一気に状況は変化していった。
この報道を受けても、資源エネルギー庁および関西電力側は「ねつ造はなかったと信じている」とさらに強調していたが、燃料を調査したBNFL検査局が12月16日、調査結果を関電に報告し、燃料集合体8体に収められた直径約8ミリ、高さ約13ミリの燃料ペレット3000個の中から200個を抜き出して直径を測る検査データでは、8体に入った199ロット(1ロットは3000個のペレット)のうち1ロットのデータが、別のロットのデータを100個分そっくり引き写したも のだったことが判明すると共に、他のロットもデータ偽造の疑いが濃厚であることが分かった。
そうなれば、ごまかしたくてもごまかしようもなく、資源エネルギー庁は 「関電には、再発防止策が確立されるまでBNFLから核燃料を輸入し ないよう指導した」と、態度を急変。
また、東京電力が導入を計画している福島第一原発3号機でのプルサーマルで使われるMOX燃料について、福島県の佐藤栄佐久知事から12月16日、「検査体制に不備があるのではないか」との抗議を受けて、ベルギーの燃料加工会社で加工した燃料を使って福島第一原発でプルサーマルを計画している東京電力にも「再度データの確認を指示した」と、混乱を示した。そして、かたくなに「ねつ造はなかった」と言い続けていた関電側も態度を一変させて「われわれの調査不足と言われても仕方がない」と、責任を認め、MOX燃料の使用中止を表明した。通産省、資源エネルギー庁、原子力安全委員会、そして電力会社と、一蓮托生の馴れ合いの要素を多く含んでいることを示す今回の問題は、国民の中で高まっている原発不信に、さらに拍車をかけることになり、プルサーマル計画そのものは、実施以前の課題が山積されていることを鮮明にしたようだ。
日本向けのMOX燃料の製造事情
MOX燃料の データねつ造が相次いで発覚しているイギリスBNFLは、イギリス政府からプラントの一時閉鎖を命じられており、現在は、政府の再開許可が出るまで稼働できない状態になっていることから、日本向けのMOX燃料を製造し直すめどは、全く 立っていないのが実情だ。プルサーマル
プルサーマル計画とは、事故で見通しが立たなくなった高速増殖炉に代わる国の核燃料サイクル政策の一環として存在するもので、プルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を一般の原発で燃やすというもの。電力業界は2010年までに16〜18基の原発で導入を計画している。
プルサーマルの一番の問題点は、原子炉内の核反応を調節する制御棒の利きが低下し、制御が不安定になるということ。原子炉安全専門審査会でも、制御棒の利きの低下を認識している。しかし、「制御が不安定になることはない」とするのが推進を前提にした審査会の見解だ。またさまざまな事故を想定した場合、周辺住民の被ばくの危険も指摘されているが、これに関しても「被ばくの危険は小さい」と審査会では結論付けている。そして、原発燃料としてプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料だけを使う「フルMOX」を前提に設計した改良型沸騰水型炉(ABWR)の安全審査についても、国の原子力安全委員会は「フルMOXでも炉に与える影響はほとんど変わらない」として「審査基準を変える必要はない」と結論づけている。
原発の燃料はウラン燃料を使用するが、プルサーマルでは、ウラン燃料にプルトニウムとウランの混合酸化物のMOX燃料を混ぜて使用する。しかし、フルMOXはMOX燃料だけを原発の燃料として使用するもので、ウラン燃料に比べてプルトニウムが多いMOX燃料は、原子炉内で核反応が進みやすく、制御に大きな問題が残る。そのため、世界ではフルMOX燃料使用の原発稼働を見合わせているのが実情だ。
原子力安全委員会が「現行の原発の安全評価審査指針で充分」と、時期尚早の結論を出した背景には、電源開発が青森県大間町に2002年着工を目指している大間原発からの「フルMOX」燃料使用が計画として存在しているからで、この結論は、あらかじめその計画を認めることを前提に出された模様だ。
国内原子力史上最悪、「起こらない」と言われていた「臨界事故」が発生。
1999年9月30日午前10時半ごろ、茨城県東海村で住友金属鉱業100%出資の子会社である核燃料製造メーカー「JCO東海事業所(旧社名、日本核燃料コンバーション)」のウラン加工施設で「国内原子力史上最悪の臨界事故」が起きた。
施設のすぐ近くでは、放射線量が通常の約4000〜1万5000倍に達し、半径350メートルの周辺世帯には避難勧告が出された他、半径10キロの範囲で屋内待機が要請され、混乱した。この混乱は10月2日に解消されたが、改めて原子力施設や業務をめぐる「不備」や「欠陥」および科学技術庁および原子力安全委員会などの対応能力の「欠落」などが浮き彫りになり、我々国民は、否応なく常に危険と隣り合せでの生活を強いられていることを再認識する格好になった。
JCOの施設は、6フッ化ウランを原料にして、二酸化ウランに転換・加工して電力会社に納入する「ウラン燃料加工」が行なわれている工場で、今回の臨界事故(一定量以上のウラン235などに中性子が衝突すると、核分裂反応が持続的に進行するようになる。この状態を『臨界』といい、これに伴なう爆発などで発生した事故が臨界事故)は、国へ届けた本来の作業手順書とは別に、一部の作業工程を省略するため、未承認のステンレスのバケツ容器を使った違法性の高い内部手順書を作り、日常的に手抜き工程による加工を行なっていた挙句に招いた「犯罪」であることが判明した。
企業責任の追及は勿論のこと、当然のことながら事故の重大性から科学技術庁は、臨界事故を起こしたJCOが国の許可申請を受けた燃料加工工程と異なる違法なマニュアルを作成し、無許可のステンレス製バケツを使って操業していたことが国内での原子力史上最悪の事故事故につながったとし、原子炉等規制法に基づき、JCOの事業許可を取り消すことを決めた。処分は、転換試験棟内部の実地調査を行ない、今後、放射性物質が外部に漏れる可能性がないかどうかを再点検し、事故処理の終了後に正式決定する。しかし、現場に残る放射能汚染されたウラン溶液は、核分裂生成物を含み高レベル放射性廃棄物と同様の処理が必要で、すぐに対応できる施設はない。このため溶液を同事業所内の別の場所で保管する「とりあえず」の方法しかなく、処理の長期化は必至だ。
科学技術庁は、この臨界事故を「施設外への大きな危険を伴なわない事故」として原子力事故国際評価尺度を「レベル4」と低めに認識していたが、安全管理を軽視していた点を重視して「施設外への大きな危険を伴なう事故」に認識を改め、「レベル5」と判断する方針も固めた。評価検討委員会に諮問したうえで正式決定し国際原子力機関(IAEA)に報告する。
この「レベル5」は、炉心溶融につながったアメリカ・スリーマイル島(TMI)原発事故と同レベルになり、スリーマイル同様に旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の「レベル7」に次ぐ危険きわまりない原子力関連施設事故事例のひとつとして歴史に刻印されることとなる。また、加えて、臨界事故が発生しておりながら、発生から5時間近く経過しないと「臨界」の判断が出来なかった科学技術庁のオソマツさも併せて、全世界にアピールしたことにもなった。
この事故では、作業中の従業員3人が大量に被ばくしたのをはじめ、同社の敷地内にいた50人、敷地外7人、消防署員3人の計69人に、事故処理で冷却水の抜き取り作業などをした14人の83人が被ばくした。事故当時、敷地内には123人がいたが、被ばくが確認されていない残りの64人は、事故発生当時「フィルムバッジ」(ガンマ線測定器)を身につけていなかったため、被ばく者数から除外されているが、この64人も放射線の影響を受けている可能性が強い。また、この臨界事故で、風評被害なども含む茨城県内の商工業、農畜水産業に与えた損害などの合計額は、150億円超えになることが県の調査で分かった。商工業では96億円、農畜水産業では25億円、観光業関連では15億円、交通機関関係では2億、競輪やゴルフ場など他の産業では7億円の被害が出たとしている。また減収が見込まれる県税は核燃料等取扱税を含めて7億円、同県が10月末までに支出した災害対策経費は4億円にのぼった。
イギリス原子力公社、猛毒の放射性物質プルトニウムを吸引する人体実験を実施。
イギリスのガーディアン紙が報じたところによると、イギリス原子力公社(AEA)は、猛毒の放射性物質プルトニウムの人体への影響を調べるため、2人の科学者が志願してプルトニウムを吸引する人体実験を1年半前に行なっていたことを明らかにした、という。
実験に志願していたのは「プルトニウムは微量でも人体への影響は深刻で、ガンになる危険性が高い」とされている医学界の常識に対して「プルトニウムが人間に危害を及ぼすという恐怖には根拠がない」と主張し、異論を唱えている核関連の科学者のエリック・ボイス博士(73歳)とその同僚で、オックスフォード州ハーウェルにあるAEA研究所で、極微量のプルトニウムを吸引した。
AEAは、2人の吸引実験の結果は来年、発表するとしているが、これまでのところまったく副作用は現れていないと説明。また、人体に入ったプルトニウムは骨や睾丸(こうがん)にとどまるという従来の学説とは異なる結果が出ているとも言っている。同紙によると、イギリスでは1992年から98年にかけても、26歳から67歳までの12人にプルトニウムを注射する実験が行なわれており、ボイス博士はこの実験にも参加していたという。
今回、ボイス博士らが吸引したのはプルトニウム244と呼ばれる同位体で、博士は「半減期8000万年ぐらいで放射線はゆっくりと放出される。健康への影響は心配していない」と話している、とか。
今回の吸引実験は、国立放射線防護委員会の許可を得て行なわれ、欧州連合(EU)が資金を出した模様。
アメリカ、民用の原発から核兵器の水爆材料生産を決める。
アメリカは他国に対し、核不拡散の立場から、原発や再処理工場の軍事利用の禁止を求めていながらも、12月22日、核兵器に使うトリチウム(三重水素)をテネシー州の原子力発電所で生産することを決めたと、アメリカ・エネルギー省が発表した。
この極めて矛盾する政策をとることに、国内外の反核グループなどは反発を強めている。トリチウムは水素の放射性同位体で、軍事用としては水爆の材料に使われている。核兵器に用いられているトリチウムは、半減期が約12年で、毎年約5%ずつ自然崩壊して減っていくため、補充しなくてはならないので、早ければ2005年までに、補充分を原発から確保するという。生産に使われるのは、テネシー渓谷開発公社が所有する加圧水型原発で、原子炉の中で発生する中性子をリチウムに当ててトリチウムを作る。
アメリカは、核兵器用トリチウムをサウスカロライナ州の軍事用原子炉で生産してきたが、冷戦の終結で1988年にこの原子炉を閉鎖し、生産を停止した。以来、エネルギー省は核兵器保管計画の一環として、トリチウム生産用に新たに加速器を建設するなどの計画も検討してきたが、既存の原発を使う方が安くつくとの結論に達した。
アメリカ下院議会は1998年初め、核不拡散上の理由から、民生用原子炉での軍事用トリチウムの生産を禁止する法案を承認したが、上院と両院協議会で否認された。下院の法案支持者らは現在も、原子力利用の軍民の分離原則に反すると批判を続けているが、「政府所有の原発でもあり、保有する核兵器を維持するという安全保障上の目的なら問題はない」とエネルギー省は主張している。
資源エネルギー庁、動燃再処理工場の爆発事故を一切掲載せず市民向け原子力解説冊子を発行
資源エネルギー庁が市民に広報するために編集する98度版の原子力解説冊子『原子力発電その必要性と安全性』に、昨年3月の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)再処理工場爆発事故の記述が一切ないことが分かった。この冊子は毎年、資源エネルギー庁公益事業部が編集し、通産省と科技庁の外郭団体が発行しているもので、B5判カラー120ページで有料。主に電力会社や関係自治体が大量購入し、原発推進のための広報資材として市民に無料配布している例が多い。
本年度版は4月下旬に発行。原子力発電の仕組み、安全性、核燃料リサイクルなどを国内外のエネルギー事情とからめて説明。事故に関連して旧ソ連のチェルノブイリ原発事故や高速増殖炉もんじゅのナトリウム漏れ事故などの事例も取り上げているが、昨年3月11日に茨城県東海村の動燃東海事業所再処理工場であった火災爆発=多数の作業員が被ばくしたうえ外部にも放射線が漏れ、国際的な評価基準では国内過去最悪になった=事故は、本文は勿論のこと、巻末資料の原子力年表にも一切記載していない。
この件に関して、原発推進に異論を唱える市民グループなどから「明白な事実さえ隠す姿勢が問題」「動燃解体につながったこの事故に全く触れないのは、極めて意図的だ」と批判の声が上がっている。これを受けて同庁は「編集当時、事故の評価が固まっておらず、あいまいのまま載せれば誤解を招く可能性があった。意図的ではないが、あえて記述は避けた。来年の改定で検討したい」と説明。相変わらず、動燃が事故隠しした体質そのままの、責任感や問題意識のない姿勢を続けている。
アメリカで高レベル放射性廃棄物の地下水汚染が深刻化
世界で最初の原爆となった「トリニティー」や長崎に投下された原爆「ファットマン」を生産したアメリカ最大の核兵器用プルトニウム生産施設(ワシントン州のハンフォード核施設)で、貯蔵タンクから漏れた高レベル放射性廃棄物が地下水にまで到達し、地域住民の健康への影響が深刻に懸念されていることが、アメリカエネルギー省の報告書で判明した。
人類の奢りを象徴する核開発、核戦略の施設は、ここに「ずさんな貯蔵による環境汚染」という決定的な実例を示して、歴史の流れの中で、愚かさのなれの果ての姿を暴露した。
エネルギー省が今年2月に発表した3つの報告書によると、同施設の3つの地下タンク群から漏れた高レベル放射性廃棄物が、地下水に到達。半減期21万年のテクネチウム99、ヨウ素129、トリチウムなどが、飲料水の含有基準の20倍などの高い濃度で検出された。同施設では高レベル放射性廃棄物378万リットルが、これまで67のタンクから漏れており、今後さらに地中にあるプルトニウム、ウラン、ストロンチウム90などが地下水に続々と到達、今後は、施設内を通過し地域住民の飲料水や農業用かんがいなどの水源となっているコロンビア川の汚染も時間の問題という深刻な事態になっている。またアメリカ政府は、核兵器生産過程での放射性物質による汚染の深刻さを認め、この核施設から放出された放射性物質による汚染の影響をもろに受けた「風下住民」に対する初の本格的な医療検査を今年から始める。
しかし、これらの汚染を解消する能力や技術は、優秀を自認する人類は持ち合わせておらず、ゴマカシもやり直しもきかない恐ろしい結末を迎えることとなった。また、この事態は日本の六ヶ所村の核燃サイクル施設でも今後考えられることで、一日も早い「核を封印する」意志が求められることになってきた。
稼働中の原発、30年稼働から60年稼働に使用期間を延長
耐用年数は長くて30年とされていた原発を通産省・資源エネルギー庁は、一基60年の長期運転も認める方向で、電力各社から出された保全計画を容認することを決めた。
これは、通産省・資源エネルギー庁が電力各社から出された原発の60年運転を仮定した機器全体の技術評価を審査した結果、安全が確保されていると判断したもので、当面は、運転開始から30年近くがたつ福島第一原発1号機(東京電力)、美浜原発1号機(関西電力)、敦賀原発1号機(日本原子力発電)に対して、今後の保守点検など保全計画全体を妥当だと認め、寿命のきた原発をさらに10年間、稼働させるというもの。
新規立地や増設が反対運動などで困難、廃炉にする場合の費用や安全対策は極めてコスト高という側面も踏まえた上での判断だが、既存の原発が今後どんどん老朽化して寿命を迎えるという状況への対応策として、老朽化原発の延命を決め、60年稼働への道を選択した。また、政府の地球温暖化対策の基本方針にも「原発の推進」が盛り込まれて閣議決定された。これは、中央環境審議会の地球温暖化対策に関する基本方針小委員会が「基本方針」としてこれまで「原発の推進」の明記を避けていたことに電気事業連合会が不満を持ち、電力各社や関係業界に中央環境審議会に「原発の推進を明記すべき」という意見を送付するよう呼びかけ、寄せられた業界の意見に同審議会が屈した形で明記することになったもの。ちなみにその「組織票」にも匹敵する「意見」を「意見募集として寄せられた国民の意見」として中央環境審議会が示した数は「原発の推進を明記すべき」とする意見が1036件中899件(87%)だった、とか。
しかし、電力業界の圧力に屈した形での「原発推進」の明記ではまずいため、「国民的議論を行ない、国民の理解を得つつ進める」という表現を盛り込み、中央環境審議会の企画政策部会が3月24日、行政や企業、国民が取り組むべき地球温暖化対策の基本方針としてまとめた。日本の原発は1966年、茨城県東海村に最初の原発が出来て以来、現在53基/総出力4524万8000キロワットが稼働し、97年度の発電量比率は火力が52%、原発が39%、水力が9%。今後、二酸化炭素排出量削減に向けても原発への依存は増し、2010年度までの発電量比率目標は、原発45%、火力42%になっている。
世界の原発、減少傾向の時代の中で
世界で運転中の原発が、一昨年より基数、総出力ともに減少し、今後も減少傾向に向かうことが、日本原子力産業会議の調べで分かった。この調査結果によると、1998年末時点で世界で運転中の原発は1997年末に比べ5基減り、合計出力も約100万キロワット少なくなった。
ちなみに、1998年末時点で運転中の原発は429基(合計出力は3億6469万7000キロワット)。日本は53基(合計出力は4524万8000キロワット)で、アメリカ(107基)、フランス(56基)に次ぐ世界第3位の「原発依存大国」。「原発はコストの面で高くつくし、今後のコスト競争力もない」という判断で、昨年アメリカやオランダが、それぞれ2基と1基閉鎖、カナダでも5基が運転を休止し、今後の原発計画を見直しに入っている時代に、日本では、耐用年数という寿命の観点でも「老朽化20年」から「30年は稼働可能」とし、老朽化した原発の廃炉引き伸ばし策にでている。また、「見直し」という基本姿勢は殆どなく、近年は東京電力柏崎刈羽原発7号機(新潟県)と九州電力玄海原発4号機(佐賀県)の2基を増設して稼働させ、さらにこれまで以上に高リスクなプルサーマル計画(プルトニウム混合燃料の利用)を推し進め、また政府は、温暖化防止京都会議で決まった温室効果ガス6%削減の達成に向けて「温暖化の原因となる二酸化炭素の排出が少ない原発の増設」を対策の柱に挙げながら、2010年までに原発発電量を1997年比で1・5倍以上にすることを決めるという認識錯誤、判断不良の中にいる。原発は「二酸化炭素の排出が少ない」ものの「最も危険な放射性物質と放射能を排出している」ことの認識がない。
現在の施設の中で、将来にわたって最も危険性の高い原発および核燃料サイクル施設は、閉鎖後も放射性廃棄物の半永久的な保管管理が、高度な技術と膨大な経費と共に必要で、原発の数が増えれば増えるだけ放射能汚染という厄介な問題を抱えて核のゴミと一緒に、深刻に存在し続けていくことになる。
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一方、科学者たちの技術革新熱や探究心、開発欲も依然旺盛で、核の世界は、ガス炉や軽水炉を使った原発が廃炉に向う時代の中で、アメリカとロシアが、冷戦時代の軍事研究を応用して発電を目的とした新方式の核融合実験を共同で進めるという新たな動きの時を迎えはじめた。
●軍事研究を応用した核融合技術=中性子爆弾などを開発する目的で生み出された核融合技術で、核融合を主に利用した兵器には水爆と中性子爆弾がある。水爆は、プルトニウムやウランの核分裂反応を利用し、そのエネルギーで重水素と三重水素の核融合反応を誘発する仕組み。
現在、アメリカとロシアが共同で進めている核融合は、MT核融合「マグネタイズド・ターゲット・フュージョン」と呼ばれ、核分裂反応を引き金とせず、高性能火薬の爆発や強力なパルス電流発生装置で小型容器内に強い磁場をつくり、核融合反応を生じさせる仕組みだ。
核融合研究では現在、真空容器を使う磁場封じ込め核融合と、レーザーによる慣性核融合の二つの方法が競い合っているが、MT核融合は、急激なエネルギー放散を抑える磁場封じ込め方式の特徴と、圧縮で核融合反応をもたらす慣性核融合の特徴を併せもっているとされる。
動き出した核燃料サイクル事業、青森六ケ所村再処理施設
青森県は、六ケ所村の核燃料再処理施設への試験用の使用済み核燃料受け入れに同意する方針を固め、木村守男知事が「最終的な手続き」としてきた、科学技術庁長官や通産大臣との「核燃料サイクル協議会」を開いたうえで1998年7月29日、受け入れの前提となる安全協定の締結を表明。安全協定が結ばれたことを受けて、その第一弾として福島県・東京電力福島第2原発4号機の使用済み核燃料(約8トン)が運び込まれた。
これによって、六ケ所村の再処理施設で、全国の原子力発電所の使用済み燃料からプルトニウムを取り出し、再び原発の燃料にするというプラントの再処理事業が動き出すことになったが、計画ばかりが先行して実質の工事はほとんど進んでいないのが現実だ。六ケ所村では、日本原燃の貯蔵プールに保管された後、2003年に同村に完成予定の再処理工場で再処理される予定だったが、事業者の日本原燃が操業開始を遅らせる方針を固めたため、今後の見通しは皆目たっていないのが実情。
これまで日本原燃は、再処理工場の設計と工事方法の認可のうち、全工程の8割分の手続きが完了する7回目の認可を国から受けたが、工場本体の進ちょく率が2月末で12%にすぎず、「予定通りの操業開始は困難」との結論を4月に出した。
これにより2年半程度先送りし、操業開始を2005年7月とすることを青森県と六ケ所村に報告し、計画変更許可を国に申請した。再処理工場の操業開始時期は、1996年の大幅な設計変更に伴ない、2000年操業開始予定が2003年1月に変更された経緯がある。この際に約8400億円の事業費が約1兆8800億円に増額されたが、今回の計画変更で、総事業費はさらに増える見通しになった。
●経緯=これまで青森県と国は、核燃政策について話し合う核燃料サイクル協議会を発足させ、青森県の要望事項「国は高レベル廃棄物の最終処分のめどを付ける」「原子力施設にレスキュー隊を配備する」「プルトニウムとウランの混合燃料を普通の軽水炉で使うプルサーマルの見通しを示す」「電気料金の割引を全県に適用する」の4点について協議していた。しかし国は「レスキュー隊の検討を原子力安全委員会で始める」程度の対応姿勢しか示さず、かねがね木村知事は「政府一体の取り組みが薄い」などと不満を表明し、日本原燃が六ケ所村に建設している再処理工場に使用済み核燃料を運び込むための安全協定締結について、態度を保留していた。
安全協定の締結にあたって木村守男知事は「青森県を高レベル放射性廃棄物の最終処分地にしないことを総理に確認してもらったことも重い」と表明したものの、核のゴミが集中するのが核燃料再処理施設であることから、今後は必然的に、高レベル放射性廃棄物をめぐっても国と青森県との間で、かけひきが展開されそうだ。●使用済み核燃料=原発内で使われるウラン燃料の燃えかす。国内の原発では、これまで原発内貯蔵プールに収められていたが、今後数年で満杯になる見込み。
●使用済み核燃料の搬入=福島第2に続き、愛媛県・四国電力伊方原発1号機と鹿児島県・九州電力川内(せんだい)原発1号機から第二弾、その後随時と計画されている。国内の原発から運び込まれた使用済み核燃料は貯蔵プールの燃焼度計測装置の試験に使われる。しかし、使用済み核燃料輸送容器の検査データが改ざんされるなど、ズサンさが表面化し、その対応などで六ケ所村への試験用使用済み核燃料搬入は一時中断、全体的に搬入は遅れ気味になった。
使用済み核燃料輸送容器の試験データが改ざんされた問題で、科学技術庁は5月19日、改ざん容器について「容器自体の安全性に問題はない」とし、安全性を認める「容器承認」を行なった。今回の審査で、同庁は原電工事の管理体制に問題があったことを認めながら「管理体制の審査はあくまでも品質を確保するのが目的。改ざん前のデータなどから品質は確認された」として、容器承認を決め、木村知事にも報告し、「貯蔵プールの燃焼度計測装置の試験再開に理解を」と要請。それを受けて木村知事が、中断している六ケ所村への試験用使用済み核燃料搬入と、同村の再処理工場貯蔵プールでの使用前検査(校正試験)について再開を認めると表明したのは7月5日だった。一連の作業は、中断から約9カ月ぶりに動き出し、今後、事業者の日本原燃は、東電福島第2原発4号機から昨年10月に受け入れた使用済み核燃料約8トンを使い、燃焼度計測装置の校正試験(貯蔵施設でウラン残留量を測定する燃焼度計測装置の目盛り合わせ)を再開。また、四国電力伊方原発、九州電力川内原発から六ケ所村への2回目の試験用使用済み核燃料(計24トン)の搬入は、9月に伊方原発分が、10月に川内原発分が再開される。
これらを用いた校正試験が完了すると、国内の原発から出る使用済み核燃料の受け入れ態勢が一応、形式的には整うことになる。●高レベル放射性廃棄物と保管=原子力発電所の使用済み核燃料を再処理した際の廃液に含まれる高レベルの放射性廃棄物(半減期が200万年を超える放射性物質も含まれる)、いわゆる「核のゴミ」。これをガラス固化体(ガラスとともに高熱で溶かし、円筒形のステンレス製容器に詰めたもの)として管理する。青森県六ケ所村には、建設中の再処理工場をはじめ、日本原燃が運営する核燃料サイクル施設が集中的に立地されている。同社の高レベル廃棄物管理施設の貯蔵容量は1440本だが、将来的には3000本以上増設される計画になっている。
現在は主に、フランスから返還された高レベル放射性廃棄物のガラス固化体が六ケ所村に貯蔵されている。返還は1995年4月に始まり、現在も返還中だ。この廃棄物は、国内の原子力発電所で出た使用済み核燃料をフランスまで運び、仏核燃料会社(COGEMA)の再処理工場でプルトニウムとウランを取り除いた後に残った廃液。六ケ所村には今後10年以上かけて3000本以上のガラス固化体が運び込まれる計画だ。だが、地下数千メートルに最終処分される施設のめどは立っていないため、最低でも30年〜50年は、六ケ所の施設で貯蔵される。
通産省・資源エネルギー庁は、原子力発電所から出る使用済み核燃料を最終処分するまで、一定期間、保管する中間貯蔵施設を受け入れる自治体に交付金を支給する方針を決め、1999年度予算の概算要求に、電源開発促進対策特別会計から支出できるよう制度創設を盛り込んだ。施設の候補地さえ決まっていない現状打開に向け、枠組みづくりを先行させることで受け入れ促進を図るのが狙いだが、このまま青森県六ケ所村がその役を負わされてしまう可能性も濃厚だ。●高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵施設=原発関連施設が最終的に生み出し、管理の目途が立っていない「核のゴミ」である高レベルの放射性廃棄物は、その処分方法や処分技術が確立するまでの間、どこかに保管しておかなければならない。旧動力炉核燃料開発事業団(動撚)が北海道幌延に計画していた「貯蔵工学センター」は、北海道議会や地元市町村の反対などで今年2月、白紙撤回された。また、動撚改め「核燃料サイクル開発機構」として新たに組織化された核燃料サイクル事業体は、北海道と幌延に再度アプローチ。10月12日に「高レベルの放射性廃棄物の地下埋蔵処分技術の研究」という名目で「深地層研究所」(仮称)の建設計画を申し入れ、北海道はこの提案を一旦返上したが、現在、再検討に入っている。
通産省などは、「処分地選定は全国的な見地で行なう」としているが、 核燃料サイクル開発機構が北海道幌延町に計画している深地層研究所計画をめぐり、地元では「貯蔵工学センター計画は白紙撤回されたが、新たに計画が浮上した深地層研究所設置を契機に、幌延町が最終処分の場になり兼ねない」と、警戒を強めている。
北海道庁としては、深地層研設置に関する結論を年内に出す予定で、幌延町および周辺の「核廃棄物施設誘致に反対する道北連絡協議会」などから反対意見を聴取した後に、検討委員会で報告書をまとめ、専門家による報告書の再検討などで結論を出すという段取りだ。研究所計画に対して核廃棄物の持ち込みにつながらない担保措置を検討しているが、道民の多くは、担保措置の実効性を疑問視しており、調整は難航しそうだ。
推進の立場の幌延町長は、1月4日に町内で開かれた新年交礼会などで、早くも「研究所計画は年内にも実現する」との見通しを示し、積極姿勢をアピールしている。※他の原発関連記事は「列島縦断NESハイライト」や「ニュースハイライト」にあります。
第五福龍丸の核被害を後世に
1954年、マーシャル諸島ビキニ環礁でのアメリカの水爆実験で「死の灰」を被った日本の遠洋マグロ漁船856隻。その被災船のひとつ『第五福龍丸』の乗組員だった大石又七さんが「国民の悲願である核兵器の廃絶を願い、築地魚市場に、まぐろ塚をつくって後世に残したい」思いで『築地にまぐろ塚を作る会』を発足させた。
その呼びかけで、大石さんは次のように言っている。「最近、東京への修学旅行が増え、浅草、ディズニーランド、国会議事堂と見学するようですが、東京には平和学習の場所が少ないようです。都立夢の島・第五福龍丸展示館もコースに入っているのか、年間600人余りが訪れるようになり、私も時々呼ばれて話します。ビキニ事件の内容は、生徒は勿論、先生も校長も知らない人がいるような時代になりました。物質文明にひたる中で、過去の恐ろしい悲劇には関知したくないかのようです。被ばくした私たち第五福龍丸元乗組員23人も、これまでに11人が共通して、後遺症と思われる癌や肝機能障害で亡くなりました。残り12人の中にも癌患者が3人います。私も子供を死産で亡くし、3年前には肝臓癌の手術もしています。人類は核と共存できません。世界中の誰もが核を廃絶したいと願っていますが、無くしたいと思っているだけでは無くせません。一人ひとりが、無くすための努力をしないと無くならないと思うのです。ささやかなまぐろ塚ですが、平和を守ろうと願う大勢の善意の力で、放射能の恐ろしさの一端を末ながく伝えていきたいと思っています」
賛同と協力の連絡は、下記に。
事務局:東京都大田区東嶺町42-17『築地にまぐろ塚を作る会』/大石又七/電話03-3758-3448/
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みなさんから頂いた署名や10円募金を基に2000年4月14日、第五福竜丸展示館前にマグロ塚を仮設置することが出来ました。これも皆さんからの支援の賜物と深く感謝いたします。また、マグロ塚の説明文を塚の前に置くための準備もすすめていますので近々に設置できると思います。
昨年8月1日には築地の中央市場正門にプレートの設置後、多くの皆さんの後押しもあり、夢の島公園の第五福竜丸展示館前にマグロ塚の設置を東京都建設局と交渉してまいりました。このほどやっと許可され、築地の中央市場の整備が完了するまで置いていただくことができるようになりました。
今後ともビキニ事件のことを語り伝えるとともに平和と核兵器・核実験のない世界をめざして進んでいきたいと考えています。2000年4月23日
マグロ塚をつくる会代表 大石又七※ビキニ事件の詳細は、小社刊行の『ビキニ水爆事件「死の灰」被災を追う―被災漁船856隻を追って―』があります。
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