軽口コラム

慣用句知らずは他人(ひと)ごとではなかった。

 毎年行なっている文化庁の国語に関する世論調査。その結果の一例を目にして我ながら驚いた。
 文章を仕事にする者としては「失格」の烙印を押されたような気がしている。校正もへったくれもないなぁ・・・という心境だ。

 しかしここは、恥を覚悟で驚いた一例を記すことにしよう。

 まず「流れにさおさす」。

 これまで「流れに竿さす」と、書くのだと思っていた。実際に文章に書いてしまったこともあるのかも知れない。
 しかし、正しくは「流れに棹さす」。

 「竿さす」と書くぐらいだから、意味は「勢いを失わせること」だと、信じて疑わなかったものだ。
 でも、本来の意味は「棹さす」と書くのだから、乗じる、つまり「勢いに乗ること」。

 会話でも間違いなく使ってきた。「おいおい、せっかく調子に乗ってきているのに、流れにさおさすようなことをするなよ」と、いった具合にである。
 多くの人がその返事として「ブレーキかけちゃった?ゴメン」とか何とか言ったように記憶している。

 次に「役不足」。

 この意味も、これまでまったく逆にとらえていた。

 「あの人じゃあ、役不足というものでしょう」。その返事は「もっと力がある人のほうがいいよね、誰かいないだろうか」。
 そんな会話を平気でしていた。

 しかし、正しくは「力量に対し役目が軽すぎること」を「役不足」というのだそうだ。まったく逆解釈をしていたことになる。

 とはいえ、直ぐに承知できないのが正直なところだ。
 重要な役割を依頼された人が「いやいや、私には荷が重すぎます。私は役不足です。到底、ご期待にそえることは出来ません。逆にご迷惑をおかけしそうです」と、謙虚な姿勢で断わる時に用いることの方が多いのではないか?・・・今もモヤモヤしている。

 さて、もうひとつ「確信犯」。

 「悪いと思っていながらやる確信犯みたいな奴と一緒に行動はできない!」とか何とか、酔っ払った勢いで多分、口にした記憶がある。
 しかし、これも正しくは、「信念に基づき正しいと信じてなされる行為、犯罪」を「確信犯」というのであって、「悪いことと分かった上での行為」ではないのだという。

 これらのいずれも、6割の人が間違って解釈していたという。

 これまで信じて疑わなかったその一人の者として、この間違いには参った。ずっしりと重く、おそれ入った。意気消沈である。
 ・・・まさか、意気消沈の本来の書き方は「意気軒昂」で、意味は「勢いづくこと」ではないだろうな、と、ふと臆病になっている。
(03・6/19)

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泥沼から脱出「ロードマップ」が迷い道へ誘導?

中東和平構想

 和平合意の履行違反、武力衝突の繰り返しと、進めば進むだけ泥沼にはまり込んできたイスラエル・パレスチナ和平。

 そんななかで、アメリカを中心にロシア、EU、国連が、泥沼からの脱出を目指した「ロードマップ」を作成した。一般に市販されている「道路地図」か?と「単語」だけを見るとそう思いがちだが、このロードマップは、不信感と憎悪ばかりが肥大化して外交よりも武力による報復合戦に走ってきたイスラエル・パレスチナ双方に対する和平に向けての「行程表」で、言わば「道筋案内」だ。

 泥沼化を続けるわりに、このロードマップは実に簡単で、内容の大枠はと言えば、年内にパレスチナ暫定国家を樹立し、2005年までに最終的な和平達成を目指す。3段階に分けて進めることで、1967年以来のイスラエルによる占領も終結する、としている。
 道筋はと言えば、5月までの第1段階でテロと暴力の停止、パレスチナ側の生活の正常化などを実現。6月から12月までの第2段階をパレスチナ国家独立への移行期と位置づけ、暫定的な国境を持つパレスチナ国家を創設する。04年から05年の第3段階を最終地位に関する合意と紛争の終結期とし、国境の画定、聖地エルサレムの帰属、難民問題、入植地の取り扱いなどを決める、としている。

 アメリカは、クリントン前政権時代の00年7月に中東和平首脳会談が失敗に終わって以来、約2年10カ月ぶりに行き詰まった仲介外交を再開するのだが、「ロードマップ」を作った中心が、イスラエル寄りの色合いが濃い、いわゆる「片寄った」方針を持っているため、「迷い道へ誘導」する可能性が強まっているのが実情だ。
 この実現見通しについて、ブッシュ大統領は「パレスチナ、イスラエル双方の誠実な努力と貢献次第だ」と表明しているが、アメリカが、イスラエルへの軍事的、政治的肩入れをやめない限り、実効性や和平の早期進展は望めそうにもない。

 実現についての正直な見通しは、「まずは、ブッシュ政権が和平仲介者としてもっと公平な姿勢に改めるべきで、ブッシュ自らの誠実な姿勢と努力と貢献次第だ」というのが一般的なものだろう。アメリカがイスラエルを軸にした中東統治を画策する限り、健全な道筋を描けるはずがないからだ。

 勿論、崩壊状態にあるイスラエル・パレスチナ和平交渉が、国際的な仲介で再び動きだすなら喜ばしいことだ。しかし、にわかに希望がわいてこないのも事実である。
 武装闘争に走るパレスチナ側の責を問うばかりではなく、国連調査団の派遣拒否やNPT(核拡散防止条約)への調印拒否、そして、IAEA(国際原子力機関)の核査察拒否、イスラエル軍によるジェニンの難民虐殺疑惑等々の問題を抱えるイスラエルに対する甘さも問われて然るべきで、こうした対応姿勢が、パレスチナ側の不信感や絶望感に結びついているということも決して忘れてはいけない。
(03・5/4)

●ロードマップ履行の前提条件として、イスラエルは、入植停止などテロの停止を挙げ、難民帰還などにも留保すべき点を挙げている。一方のパレスチナ側は、ヨルダン川西岸などのイスラエルによる不法占領やイスラエル軍の侵攻が中東問題の根源だとして、占領停止や撤退の即時全面履行を求めている。

●イスラエルのシャロン首相とパレスチナ自治政府のアッバス首相が5月17日、イスラエル首相府で初会談し、新和平案の履行問題について協議した。無修正の和平案受け入れと即時履行開始を要求したアッバス首相に対し、シャロン首相は、ユダヤ人入植地の撤去問題など留保点10数項目の扱いをブッシュ大統領との首脳会談で協議するとして無修正の和平案受け入れを拒否。
 その後、ブッシュ大統領がイスラエル側の「懸念」に配慮することを約束したのを受けて、イスラエル政府は「アメリカに示した14項目の懸念について考慮されるもの」との前提で、5月25日の閣議で新和平案を原則受諾することを賛成多数で承認した。

●これを受けて、ブッシュ大統領、イスラエルのシャロン首相、パレスチナ自治政府のアッバス首相との3者会談が6月4日に行なわれ、まずは、ロードマップの履行を開始するという意思を内外に示した。
 ロードマップでは「5月までの第1段階でテロと暴力の停止、パレスチナ側の生活の正常化などを実現」としていたが、やっと起点に立ったというのが現実で、早くも「ロードマップ改訂版」を用意しなければならないのが実情だ。

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ブッシュ、狂ったシナリオ

 3月20日にイラク攻撃を開始して21日たった4月9日、アメリカ軍はバグダッドの中心部に部隊を進め、首都全域をほぼ制圧。イラク軍の抵抗はほとんどなく、指揮系統は機能せず、警察や治安部隊は姿を消した。フセイン政権の事実上の崩壊である。

 しかし、ニューヨーク株式市場はイラクのフセイン体制崩壊への戦勝ムードよりもアメリカの景気や企業業績の先行き懸念が勝り、大幅続落。「戦争の早期圧勝が景気回復につながる」との当初の甘いシナリオは完全に消え去った。

 アメリカ・ブッシュ政権の描いたシナリオは、戦闘開始当初から大きく狂い、誤算続きの連続だった。
 戦闘開始当初は、イラク南部の都市に入ったアメリカ軍が、フセイン政権の抑圧に苦しみ続ける住民から歓呼の声で迎えられるはずだった。そして、反フセインを掲げるシーア派を筆頭にイラク国民が蜂起し、フセイン打倒の大合唱が響き、イラク国民に支持されたアメリカ軍が「正義の使者」として快進撃を続けるはずだった。もちろん、特殊部隊とハイテク兵器を駆使した攻撃でイラク軍はたじろぎ、次々に降参、そして、その勇姿は、アメリカ軍が異例とも言える対応で戦線同行させているメディアを通じて全世界に写しだされ、正義の戦争が存在するのだということを、これみよがしに提示するはずだった。

 しかし実際には、日々むき出しの流血をもたらす戦闘の実相が鮮明になるばかりで、戦いを通じて正義の戦争はどこの世にもないことを知らしめることとなった。戦線同行の従軍報道で日夜中継を続けるTV映像について、武力行使を是認するアメリカ国内でも、視聴者の6割が「見るのが怖い」と思い、4割が「見ていてぐったりする」と答え、7割が「見ていて悲しくなる」との感想を抱く、とのアメリカの調査機関の報告もでるなど、やるせない思いが人々の心を支配した。
 イラク南部の激戦ではアメリカ兵に死者・捕虜・行方不明者が相次ぎ、加えてバグダッドの人口密集地などではアメリカ軍の「誤爆」による多数の民間人の死傷問題が連日のように起きた。そして、この戦闘行為は、テロ対策というよりもむしろ中東統治の拠点づくりと石油戦略だと見られるに至った。

 国連安全保障理事会の協議プロセスが「最期」となり、国連外交が死んだ日を迎え、アメリカの軍事力が独り歩きする歴史的な日が始まったその時から「反戦」ののろしが世界各地で上がった。「なぜアメリカはイラクを占領するのか。サダム・フセインの排除や大量破壊兵器の破棄ではない別の意図を感じる」「爆撃で女、子どもまでも殺すブッシュのやり方は許せない」「正義の戦争なんかありはしない」などの声が響き、「反戦」の声は拡大の一途を辿った。そればかりか、反戦への思いが世界中でつのり、いまや「反米」「嫌米」の思いまでが日々増幅するに至っている。そして、ブッシュ政権も、先制攻撃論のブッシュ・ドクトリンも、イスラム世界へのアメリカ軍駐留やアメリカ型民主主義の押しつけも、アメリカのゼネコン利権主導の復興も、新保守主義を背景にした超大国の力による冷戦後の世界秩序の実現も認められる代物ではない」の意見が世論の大勢を占めた。

 フセイン政権が崩壊しても、その声に変化はなく、ブッシュ政権が描いた勝てば解放軍という認識も「平和解決を放棄して開戦を決断したのがブッシュ大統領である以上、その戦争責任は免れられるものではない」の声にかき消されつつある。そして、「独裁者に代わる別の独裁者は要らない」のイラク国民の声が象徴しているように、「独裁者からの解放」を得たイラク国民の歓喜が、そのままアメリカへの理解に通じるわけでもなく、ブッシュ政権が描く今後の甘いシナリオ「アメリカに対する感謝」として定着することもなさそうだ。 (03・4/10)

●イラク攻撃で久しぶりに大きな商機をつかんだかにみえたアメリカの軍事産業だが、短期終結で軍需バブルには至らなかった。
 湾岸戦争時の戦費約760億ドルを基準に算盤をはじいた関連企業は、戦費約200億ドルのイラク攻撃で、とらぬ狸の皮算用になった。
 しかし、不景気を一瞬でも救ったのは確かで、約800発を使った1発約100万ドルのトマホークミサイル製造メーカーのレイセオンは、赤字から黒字に転換した。パトリオット100基の製造を受注したロッキード・マーチンも、特殊貫通爆弾「バンカーバスター」の製造で今後の利益が見えてきた。製造ライン休止状態とリストラに明け暮れたボーイングは大型輸送機C―17を60機受注してひと息ついた。
 だが1〜3月期の実質成長率は1・6%にとどまり、軍事費拡大によるアメリカ経済のテコ入れ効果は限定的だった。

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羊年に羊一匹が死をもって警告?

 イギリスのロスリン研究所は2003年2月14日、社会的にも大きな波紋を広げた世界初のクローン羊「ドリー」が死んだと発表した。
 ドリーは98年に雄羊と交尾して出産したボニー(雌)を含め、複数の子羊を産んだが、2002年1月には、早くも足に老化からくるとみられる関節炎が認められ、クローンは老化が早いと言われていた。その後、老化が加速し、肺に進行性の疾患を抱え込んだ模様だ。

 ドリーは96年、成長した羊の体細胞から取り出した核を別の羊の未受精卵に移植する方法で、成体と同一の遺伝子を持つ「ほ乳類」のクローンとして誕生した。
 誕生の際には世界初の事例として衝撃を与えたが、肺疾患での死に対する衝撃はほとんどなかったのが現実だ。羊の寿命は通常11〜12歳といわれており、6歳7カ月でのドリーの死は「クローンは老化が早くて早死する」という事実を世界に示した。

 クローン人間の開発に道を開くものとして倫理上の論議も巻き起こしたが、今回の事実=誕生はするが早く死ぬクローン=で、クローン技術の危うさを浮かび上がらせた。羊年に、羊一匹が死をもって警告したのは、人間への応用は極めて危険である、ということだった。(03・2/15)

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ブルータスお前もか。
金大中大統領の三男、利権介入で巨額利益

 韓国の金大中大統領の子息をめぐる不正疑惑を捜査しているソウル地検は2002年5月18日、スポーツくじの利権などに介入し巨額の金銭を受け取っていたとして、金大統領の三男、金弘傑(無職・38)を斡旋収財(金品授受)容疑で逮捕した。
 検察は、別の利権疑惑で巨額のカネを動かした疑いが持たれている「アジア太平洋平和財団」副理事長で金大統領の二男、金弘業(51)についても出頭を求める方針で捜査している。

 スポーツくじ(愛称Sports TOTO)の運営事業選定をめぐり「韓国タイガー・プールズ」と金大統領の元秘書で建設会社代表の崔圭善(斡旋収財罪で起訴)が、「業者に選定されれば金弘傑に株を与える」と約束、同社や系列会社の約13億4000万ウォン(約1億3000万円)相当の計11万4000株を崔被告を通じて金弘傑が成功報酬として受け取った。また、建設会社からもアパート建設をめぐり2億ウォンを受け取った。

 金大統領の前任の金泳三前大統領も政権末期の1997年5月に二男、賢哲氏が逮捕されているが、これらの利権腐敗一掃を誓って民主化運動を続けた闘士も、大統領になってしまえば同様の利権腐敗に埋没するようで、初の南北首脳会談を実現させ、ノーベル平和賞を受賞して歴史に名を残した金大中氏は子息の逮捕で信頼と威信を大きく失墜させた。(02・5/19)

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『悪の枢軸』は誰?

 ブッシュ政権は軍に対し、ロシア、中国、北朝鮮、イラク、イラン、リビア、シリアの少なくとも7か国を対象とした核攻撃の新たなシナリオ策定と、ブッシュ大統領が『悪の枢軸』と決めつける北朝鮮やイラン、イラクなど特定の国に対する限定的な核攻撃を想定した小型の戦術用核兵器の開発を指示した。

 ロサンゼルス・タイムズ紙によると、新たな計画では、<1>通常兵器で破壊しきれない標的への攻撃<2>核・生物・化学兵器攻撃に対する報復<3>突発的な軍事情勢での核使用の可能性を列挙。また、イラクによるイスラエル攻撃、中国の台湾攻撃、北朝鮮が韓国を攻撃した場合なども、核兵器の使用を想定している、ともいう。
 ブッシュ政権の方針に基づいて国防総省が作成、連邦議会へ示した「核戦略体制見直し報告」では、アメリカが表向きには友好を強調し、「敵ではない」としているロシアについても、「6000発前後の巨大な核戦力が、依然脅威である」との認識を示し、実際には潜在的な標的として名指している。

 世界が和平に向かう21世紀に、先の見通しもない価値観に固執するアメリカのブッシュ政権は、一国主義、覇権主義をあらわにし、自らが『悪の枢軸』となるかのように、冷戦期型の抑止戦略に代わり、攻撃用の最先端兵器開発と核攻撃という新戦略を打ち出しつつある。(02・4/6)

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▼2001年の軽口コラムバックナンバー目次▼

少しは冷静になった?

誤った兵庫県明石市の歩道橋事故での「茶髪の若者=悪者」
の憶測・推測報道。

夏だ!祭りだ! 選挙で踊る「改革」だ!

マッチポンプとプロパガンダで野党の「内閣打倒」共闘、
風前のともしび

「ピースマーク」と笑顔

わが国の首相の器(うつわ)

ハイエナ

IT革命の旗手は経済革命の使者、
一転してバブル崩壊の代表者に

「論外」「開いた口がふさがらない」「言葉がない」?

高知県怒る、が、あとのまつり?

オラが船頭だ!副大臣会議


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▼2000年の軽口コラムバックナンバー目次▼

錠前メーカーに特需?

日本おにぎり隊と米の減反

眠る2000円札、消えゆく宿命?

秘境・辺境「景気の谷」

ITを煽って、あとは野となれゴミとなれ?

たかが「株価」されど「株価」の動揺で、
日本市場の侘しさ哀れ?

「出向」天と地、そして罪と罰

「にじみ出た本心? 散髪行動と運発言/
正直な1日が最も輝いていた」

「土俵上は女人禁制」

「脱いだ!」大興奮

「国家公務員倫理規定が出来たものの」

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▼1999年の軽口コラムバックナンバー目次▼

「核燃料サイクル開発機構ってカルト集団?」

「介護(要介護)認定申請の受け付けが始まったものの」

「サバイバル大砂漠ラリーのパリダカ、
コンピューターには勝てず」

「愛煙家さらに苦境に」

「タイミングは最悪?それとも絶好?」

「ユーモア外交と冷めたピザ外交」

「学級崩壊?」

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▼1998年の軽口コラムバックナンバー目次▼


「キツネとタヌキ」

「お米の減反が意外なところに貢献?」

「防衛庁の隠し芸」

「失笑をかう」

「コケにされた候補者たち」「橋げたの礎石」

「竹みつと空砲」

「政党の偽装結婚と偽装離婚」


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