風土記八十八選
第十選
内海・周防灘
本州と九州、四国の三面に接する瀬戸内「周防灘」
周年を通じての穏やかさは、内海独自の漁場も形成する。
小さなマストを立てての漁は、波まかせの風まかせ。
しかし、この穏やかさとは裏腹に、
ここ「上関」では、原発の立地を巡っての喧騒が続く。
海の希少種「スナメリ」の住む海としても知られる上関の海域。
スナメリは、シンガポール・スマトラ・ボルネオ・中国大陸・台湾・韓国・日本本州中部までの沿岸域に見られ、日本では、瀬戸内海と伊勢湾に周年生息するといわれる。水温5〜28℃の海岸からほぼ5〜6kmの浅いところを好み、エビ・カニ・シャコなど底生生物の他、小型魚類を食べるとされているが、詳しい生態はほとんどわかっていない。
しかし、小魚を中魚が食べ、中魚を大魚が食べるという食物連鎖という生態系の観点からは、瀬戸内海にスナメリを食べる生物はおらず、環境庁は、スナメリは瀬戸内海での食物連鎖の頂点にあるとして、環境を見る格好の指標と位置づけると共に環境保全のシンボルにと呼びかけている。
1970年代の目視調査で瀬戸内海のスナメリは約5000頭と推定されたが、その後は減り続け、環境庁からの調査依頼を受けて1998年実施した祝島漁協の目撃情報の集計では計23頭が確認されている。漁師にとってタコ、メバル、タイ、アジ、ハマチなどが獲れる瀬戸内屈指の好漁場は、スナメリにとっても極めて住環境の整った海域で、スナメリの住む海は、いわば豊かな海の象徴でもある。
その海を守るために今日も、
上関の漁師たちは「原発建設拒否」の姿勢を明確に表わしながら
変わらずに淡々と漁を続ける。
本州と四国の海路に大型プロジェクトの「大橋」があちこちに架かる中、
本州と四国を結ぶフェリーが今日も、
地域の喧騒や生活の喜怒哀楽を乗せてゆったりと就航を続けている。
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