軽口コラム

逃げる警官は叱責できても、
小賢しい防衛施設庁を指導できない小泉首相。

 犯人逮捕の際に、犯人に襲いかかられて逃げる警官には厳しく叱責できても、在日米軍の傍若無人な飛行が繰り返される沖縄・嘉手納基地の騒音問題では、真っ向勝負が出来ないという小泉首相の情けなさが沖縄県民からの叱責対象になっている。

 国は、嘉手納基地周辺の旧来のW値(うるささ指数)の地域分布見直しを視野に入れた28年ぶりの航空機騒音調査に着手した。見直しは住民の生活環境を左右する重要な問題だ。これにより正確なデータが求められることになれば、地元自治体をはじめ地域住民にとっては何よりのものとなる。
 在日米軍に対しても、苦情を伝えるだけではなく、改善を求めるしっかりした根拠にもなる。

 しかし、その嘉手納基地の騒音測定は、始まってみれば、とんだ小賢しさで、防衛施設庁が現地調査を開始した2月21日は、米軍の祝日「大統領の日」で、基地は静まり返っていた。調査開始後、軍用機はほとんど飛ばず状態で、しかも、嘉手納基地所属のF15戦闘機など20機以上が未明の離陸を強行した日だったのに、その飛行は調査の対象から外す、という具合に、アンフェアーな現地調査が実施されている。

 逃げる警官は、TVで放映されて国民の知るものとなったが、軍用機が飛ばない時間と飛ばない日を選んでの防衛施設庁の現地調査は、TVで放映されることもなく、国民の知るものではない状態だ。
 となれば、国民に向けてのパフォーマンスが唯一の手法になっている小泉首相、国民の多くが知らぬが仏で、彼本来の小賢しさも手伝って、アンフェアーな現地調査を叱責するどころか逆に「うまくやれよ」と防衛施設庁にエールを送っている風でもある。

 調査は「騒音の実態把握」を名目に約1年間行なわれるが、現地調査は3回で約3〜4週間程度だという。
 調査の信頼性に疑問が噴出するのは、この先当然のことだが、基地周辺の航空機の騒音の程度を示すWECPNL値(W値:うるささ指数)を判定し、W値75以上の区域を対象に防音工事の費用を助成している国が狙っているは、W値を必然的に下げ、助成枠を狭めるためでもある。

 その方法は「激しい騒音を響かせた夜中は測定せず、平常より静かな日中を測定すること」。この小賢しさを叱責せずして、何に対して叱責するというのか、この国の首相のとる行動は、ますます曖昧なものになっている。
 「それは違う!」というのであれば、即刻、現地調査の方法を、誰の目にもフェアーに映るよう改めることが先決だ。
(05・2/24)

●米軍嘉手納基地の周辺住民が日米両政府に対し、米軍機の飛行差し止めなどを求めた「新嘉手納基地爆音訴訟」で、過去の精神的被害に対する損害賠償だけを認めた2月17日の那覇地裁沖縄支部判決を不服として、原告は2月24日、控訴した。原告らは控訴審でも日米両政府に飛行差し止めを求める。

●防衛施設庁は、東京都の米軍横田基地では03年度、大型ジェット機の1日の標準飛行回数が60回と、前回の1977年度から半減しているとして、横田基地周辺の住宅防音工事の助成対象区域を、現在の約5000ヘクタールから約2500ヘクタールに縮小させる方針を決めた。東京都や周辺9市町は、防衛長官や防衛施設庁長官に対し、地元住民への十分な説明や騒音対策の充実などを求める文書を提出している。

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