「太陽光発電を現在の10倍にする」。
政府が掲げるこれからの日本の姿は、毎度のことだが「今日、明日から本気で取り組む」のではなく「10年後には」の文言が必ず冠されるから情けない。
ひな形が用意されたかの如き決まりきったニュースによると「経済産業省は、日本企業による国内外での太陽電池の販売拡大などにより、2020年の太陽光発電の産業規模が現在の10倍の最大10兆円になるとの試算を明らかにした。雇用規模も1.2万人から11万人への拡大を見込む。同省は、太陽光発電を日本経済の成長を後押しする新たな成長分野と位置づけ、普及拡大や技術開発を積極的に推進する。経産省は国内で家庭の太陽光発電の導入量を20年に現状の10倍、30年には40倍に拡大する目標を掲げている。太陽光発電システムの導入費用を3〜5年の間に現在の半額に低減させることを目指し、国内普及と共に海外での販売を大幅に伸ばす方針だ」となる。
結局は「絵に描いた餅」状態が続く。
政府が餅を絵に描いている間に、2008年末時点の太陽光発電の総設備容量は、スペインに抜かれてしまい、前年の世界第2位から3位に転落した。
これは、民間国際団体の再生可能エネルギー政策ネットワーク21(REN21、本部ドイツ)の4月6日までの調査で分かったことだ。
08年に新たに設置された太陽光発電の容量でも前年の3位から4位へと後退した。日本が掲げる「再生可能エネルギーの開発」は、実は、立ち遅れているのである。
再生可能エネルギー政策ネットワーク21の調べによると、08年末の太陽光発電の総設備容量はドイツが1位で540万キロワット、2位がスペインで230万キロワット、日本は197万キロワットでドイツのわずか40%弱という状況だ。
昨年(2008)1年間で新設された設備容量では、スペインがダントツで170万キロワットに上る。2位はドイツで150万キロワット、3位は米国で30万キロワットとまだまだ少ないが、それよりも少ないのが4位の日本で、僅か24万キロワットに過ぎなかった。
1年間で新設されたスペインの設備容量170万キロワットは驚異的でもある。これは、大型の原発1基分を上回る。その間に日本は、危険が常に隣りあわせの「原発」に固執し、プルサーマル計画まで推し進めるのが関の山という状態だ。渦巻く利権に群がらないと一歩も進めないという日本が古くから抱え込んだ構造的大欠陥でもある。これでは、いつまで立っても、埒はあかない。利権が欲しければあとにすればいい。産業構造が冷えきってしまえば「甘い汁」も吸えなくなるのだから。もう利権用ヨダレカケはゴミ箱にでも捨ててもらいたいものだ。
加えて、風力発電の総設備容量でも日本は、08年末現在で190万キロワット。これは、世界トップを争う米国やドイツの12分の1以下だ。
日本は05年、太陽光発電の導入量でドイツにあっさりと世界一の座を奪われた。ドイツは91年に固定価格買い取り制度を導入し、急速に普及が拡大した。一方、日本は、太陽光発電導入に対する補助金を05年に打ち切った。普及の伸びが鈍化した一因だ。
日本の取り組みはひとことで言えば「チマチマしてセコイ」のが実情だ。そして何よりも国民的議論が成されないという大いなる欠点がある。
政府が言うことには、「太陽光で発電した家庭などの余剰電力の固定価格買い取り制度を来春にも導入する。これに伴い一般家庭の電気代は最大100円程度の値上げになる見通し」だという。
日本の制度案とドイツの制度との大きな違いは、日本が余剰電力に限り買い取るのに比べ、ドイツは発電量の全量を買い取る点にある。要は基本的な仕組みが違うということだ。価格は1キロワット時約50円でほぼ同額だが、期間は日本の倍の20年。10年程度で導入費用の元が取れるとされ、その後は「もうけ」が出るようになっている。その代わり、一般家庭の電気代への上乗せは約350円と日本の3倍強だ。
政府は「公平な国民負担を原則に、導入家庭が損もしないが、もうけもあまり出ないようにしたい」と言う。しかし、その考えだと、初期投資を回収する期間が長くなるのならまだしも、回収出来ずに損をしかねない。それは、結果として、必然的に大幅な普及が遥か彼方に遠のいていくことになる。
地球温暖化防止や環境保全という「共通の利益」のため、国民が直接負担するのもやむなし。やや大義名分的ではあるが、その気にさせるには、政府が真摯で誠実な取り組み姿勢を示して大胆かつスピーディーに実践・実施するしか道はない。勿論、利権が渦巻く原発依存体質からの脱却を図るのは今さら言うまでもないことだ。