「陰と陽」と云えば、皆さんの頭に浮かぶのは何だろう?
日陰と陽なた、裏と表、占いや八卦や易や易経のマーク、男と女、などなど・・・だろうか?
いずれにしても相対する、あるいは対向する、反対現象や存在が思い浮かぶのではないかと思う。


太陽は東に出て西に没し、昼は明るく夜は暗く、夏があり冬があり、男いて女がいて、生があり死があり、動があり静があり、冷があり温があり・・・・、陰は静で柔順なものであり、陽は動で剛健的なもので、宇宙のあらゆる現象と存在は常に陰と陽なのである。

その陰陽がどんな働きをするのか? 古代中国の叡智ある人々は、例えば炎の高く空中に上がるのを見て何故、「火」が「上空」に昇るのか、など、その変わり様を見て、いろいろな発見をした。火が「陽」で上空が「陰」。「陽」が「陰」に移動するさまを見て取った。
四季の移り変わりの中でもいろいろな発見をした。春に花が咲いて冬に雪が降る。桜の木には無数の花が咲くがどの花も同じように見えて違う、この世には同じものは一つとしてなく常に変化しているが、今年もまた昨年のように美しい花が咲くことを大地をながめて季節の変化の中から見てとった。
また、あらゆる生物の適用していく様をみて、生じたものは必ず滅ぶことや人の誕生の喜びは死の悲しみになり、理想が大きければ絶望も大きい事なども見た。長い長いあいだの無数の観察から、一時も止まぬ流れの中に、永遠に変わらない秩序を見い出したのである。つまり世界は絶えまなく変化(易)する。しかしそこには一定不変(不易)の法則が貫いている。そしてその法則は、陰と陽の対立、転化という簡明な形式で表わされ、森羅万象に貫通するという考えだ。

「当るも八卦、当らぬも八卦」

陰と陽はお互いに相対するもののようであるが、陰はずっと陰で陽はずっと陽というのでなく、陰が極まって陽になり陽極まって陰にもなる。
また、陰の中には陽も潜んでいるし、陽のの中に陰も存在するということ。例えば、男は女に対して陽であるが、息子は母親に対して陰である。同じ天空も晴れれば陽で、雨は陰である。同じ人でも運動している時は陽で、読書している時は陰となる。人間は動物という意味では陽だが、その中でも歯や髪の毛は植物のように静かで人体中では陰だから、陽中の陰という訳だ。
宇宙の構成から肉体精神の構成にいたるまですべて陰陽交合でないものはない。この陰陽が相互に盛え、衰え、消え、交替し、転換し、交歓し、闘争したりしてかかわり合い、変化を生じ、その結果を展望して整理したのが易だ。「当るも八卦、当らぬも八卦」という占いの世界のことだと思っていた易は、森羅万象の変化を64の異なった組み合わせで整理したものなのだ。

下のマーク、よく見る易のマークです。これは平面図ですが球を想像すると良いのかも知れません。万物を球と捉え、万物は陰陽から成っていて、陰の中にも陽、陽の中にも陰が潜んでいる象徴のように見えるのですが皆さんはいかがですか?

この相対する現象や存在が目に見える世界のあらゆる段階において必然的に現出するのは、その根源に目に見えない世界に根本的に相対するチカラがあるからだということを五千年前から叡智ある中国の人々は看破していたのです。今日の人類がたどりついた量子力学や最先端の科学が陰陽の原理と一致することが判って来たのです。


食物と陰陽


この易の原理を「食」に取り入れることを発見した日本人がいます。桜沢如一という人(1893〜1967)です。桜沢氏は明治時代の陸軍薬剤監の石塚左玄の食養法を学び、食物に陰陽を取り入れ、易に基づいた食生活による人間革命が必要な事を解き、世界中に広めた人です。

人間は体を中庸に保っていれば、だいたい健康でいられます。中庸というのは、陰(拡散)のエネルギーを持つカリウムと収縮のエネルギーを持つナトリウムのバランスによって決まります。
中庸の食物は何かというと穀類です。玄米のナトリウムとカリウムの割り合いは1:6で、この割り合いが体内では中庸に近いのです。でも、最近は環境や田畑に肥料が多くなったので1:20以上になっているようです。
おおまかに云うと動物食は陽性、野菜は陰性ということになります。でも、同じ陰性の野菜でも根の方は陽性、葉の方は陰性となり、上に伸びる葉は陰性、地面に這うタンポポのような葉はそれにくらべると陽性という風に見ていきます。筍などは短時間に上にぐんぐん伸びることを見るととても陰性な食べ物です。
少し例を出すと、極陽性の食べ物には、肉、塩、陽性は醤油、味噌、梅干し、たくあん、極陰性には、砂糖、夏野菜、合成酢、酒、コーヒー、果物、添加物、放射線などがあります。
例えば、蕎麦とうどんとどちらが陽性か知りたい時、寒い地方(陰)と暖かい地方(陽)で、どちらで蕎麦がよくできるかというと北国の寒い土地です。陰には体を温める蕎麦(陽)が必要なわけです。南国(陽)は暑いので体を冷やすために果物をよく食べます。だから果物はとても陰性だということが分かります。
このように陰陽の原理を生活や食の中にも見ることができます。

不思議なもので、私は11年まえに四国から関東に来たときは、蕎麦がおいしいと思わず、もっぱらうどん屋さんを探して入っていました。5〜6年経ったころから蕎麦でもよくなり、今は蕎麦の方がおいしいと思うようになりました。また、同じコシヒカリの米でも四国から送ってくるのは炊いてもサラサラで、こちらで買ったのはもちもち感が強かったです。お米も5〜6年経った頃からもちもち感が強い方がおいしく感じ始めました。それが何故だか判らなかったのですが、私の体が四国(陽)の土地からこちらの気候や土地(四国よりこちらが陰)に慣れて来たのだと実感したことでした。

陰性の食べ物は、心や体をリラックスさせるけど、過食は体を冷やし血液濃度を薄くして免疫力が下がります。体調や気分も内向性、感傷的、優柔不断、集中力の欠如など陰の状態が起こって来ます。
反対に陽性の食べ物は明るさ、積極性、勇気などを生むけど、過食すると、心と体がとても緊張し、攻撃的、おしゃべり、競争心など引き起こします。
そのバランスで私達は生きているんですね。

肉食を多く取った人が青汁を飲んで体調がいいというのは、肉の陽と葉野菜の陰でバランスがとれるんですね。そこで考えるのは、肉という極陽の食べ物をとったら果物という極陰の食べ物で中和してバランスをとるといいと誰しも思います。確かに洋食を食べたあとには自然とケーキや果物が食べたくなります。からだが自然と欲しがるのです。
しかし、両極端の食べ物は精神やからだに不調和をひき起こします。極端なエネルギーの食べ物は、細胞を破壊したり、神経を刺激したり、機能を麻痺させるのです。

日本人は、肉のバランスを生野菜や果物、コーヒーでとるというより、最初から中庸の穀類を6割以上採り、あとは塩、火、時間、圧力という陽性の性質を利用して、陰性の野菜を味噌、梅干し、漬物などに陽性化し、穀物と野菜、それに少しの海草、魚で日本人に合ったバランスのとれた食事を作り出していたのです。伝統食、郷土料理の根っ子には、陰陽の易の教えを見ることができます。

以上、おおまかな陰陽の話をしましたが、食物を陰陽だけで見る事はもちろんできません。食物には、陰陽もあれば、酸アルカリもあり、その食物がもつ独自の遺伝子情報(例えば、コンニャクは陰性であるが体内の毒素を引き出すはたらきも持つなど)もある。その中で適切な素材を選び、その人にあった調理方法で料理し、良く噛み、生命に対する正しい認識をもって食物と日々、接して行くことが大切かと思います。


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