医事法
 


 いつもの通り、月一回の某病院への外来の日のことである。この日は薬の処方戔を貰いに行った日だった。

 昨年から、主治医の先生から直接患者に処方箋を渡さなければいけないという医事法に変わり、今までのように、行ったその時間に受け付けで看護婦さんから処方箋を貰い、すぐ帰ることができなくなったのだ。

 医事法が変わるにあたっては「コンピューターの操作を覚えるのに大変だから」と、主治医に外来の回数を一回飛ばされ、器械が入れば入ったで、人間のからだとにらめっこしないで、器械とにらめっこの時間が長い。

 処方箋だけの患者には、患者が来る度に面会して渡していては診察の手が止まるので、午前と午後、2回に分けてまとめて渡す業務をしているため、患者は時間が来るまでに受け付けで手続きを済ませておかなくてはいけない。その手続きというのは、名前と容態の変調の「有・無」を記入するというもので、今までいつも「無」の方に○を付けていたので、何も問題は発生しなかった。
 ところが今回、ちょうど風邪を引いていたもので「有」に○を付け、「風邪」と記入して受け付けに提出した。
 それを見て受け付けの方曰く「薬はでませんよ」の一言。
 勿論、私だって薬がほしい訳ではない。けれど、容態の変調の「有・無」を記入しても、書いた容態を主治医に報告するでもなく、ただただ「薬はでませんよ」の返答と対応では、いったい何のために記入する必要があるのだろうか? と、釈然としない気持になった。

 最近、医療ミスや事故が多いので医事法も見直されているのだろうが、現場の実体はこれだ。やたらに事務的という表現さえ懐かしいと思えるほどにシステマティックで頼りない。
 「医事法が変わっても、それを実行する側の人たちの取り組み姿勢が変わらなくては何も変わらないのに、一体何をしたいのだろう・・・」と数十階建ての病院を後にして帰路に着いたことだった。

                       (2001年2月8日記)


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