七草粥
今年は近所の八百屋さんで七草を買った。パックに入った7種の七草が250円。7種類は入ってないが、野生のなずなが沢山入って一もり100円。100円の方を6日に買い7日に備えた。土鍋で米を炊く傍ら、まな板に昨日のなずな、せり、すずしろ、ほか人参を並べ、以前、料理学校の先生に教えてもらった囃子言葉「七草なずな唐土の鳥が渡らぬ先に七草なずなトコトントントントコトントントン・・・・・?」を詠い、包丁で叩くまな板の音も負けず叩きながら細かく切った。 味は あっさりと塩味である。後はお漬け物を添えるだけ。
子供の頃は、田んぼのあぜ道に生えている芹を採りに行かされたものだ。芹と云えばその頃採った地面に密着したものとばかり思っていたので、都会で長い芹を見た時は驚いた。今年は我が家も四季折々の行事食に挑戦して見ようと思っている。浦和市のまん中でどこまで自然を感じられるかの挑戦でもある。
行事食
日本の国は幸せなことに四季というものがある。その季節季節を昔の人は五感で感じ、その季節の無事や感謝を色んな形であらわしている。その時は必ずご馳走を作り天地自然に供え共に祝う。この時の食事が行事食、ハレの食である。これに対して日常はケの食で質素な食であった。それが何時頃からか毎日がハレの食となった。そして医療費30兆円という国になってしまった。
行事食には、1月1日の正月、3月3日の桃の節句、5月5日の端午の節句、7月7日の七夕、9月9日の重陽の節句 、年5回の節句をはじめとし、季節の行事(節会-せちえ-)の料理がある。
行事食を知れば知る程、昔の人の知恵には驚くばかりだ。
最近は、核家族が増え伝える人も少なくなり、残念なことに、行事食の影は薄れるばかり。行事食を知るといかに昔の人は自然との関わりが深かったかが分かる。自然と切り離せない生活、それが祈りとなり生活に染み込んでいたのだ。核家族になったというだけでなく、人間が自然から遠ざかることと比例して行事食の姿が薄くなったように思えてくる。
七草粥とは
七草粥の起源は、中国にはじまるもので『日本歳事史』には次のように記されている。
「正月は小陽(しょうよう)の月であり、七日は小陽の数であるので、七種の若菜を調えて生土神(うぶすながみ)及父母に奉り、後これを食すれば春の気病、夏の疫病、秋の痢病、冬の黄病を治す効験があるといい、また人には三魂七魄という神霊があり、天に七曜と現じ地には七草となる。これを取って服めば我魂魄の気力を増して命を延ぶると云う。これは太宗文王の時から始まる」と。伊勢神宮でも正月七日に若菜の粥を供える神事があり、内宮ではこれを新菜御饌(わかなのみけ)、下宮では新疏菜御饌(はつくさのみけ)という。この神事を今もおこなっている社は、大阪の生国魂(いくたま)神社、熊本の藤崎八幡宮、愛知県の津島神社などがある。
日本では、平安時代の始めには宮中で行なわれ、その後、宮廷貴族の間に行なわれていたものが、庶民に広まったものである。門松や松飾りを取り除くのが「七日正月」までで、この期間を松の内という。土地によって一定してないが、関東では七日まで、京都では十五日までをだいたい松の内と呼んでいるようである。その正月七日に粥に七種の若菜を入れて祝うのである。七種菜はふつう、芹、薺(なずな)、御行(ごぎょう)、はこべら、仏の座、菘(すずな)、すずしろの七種であるが地方で異なるところもある。
お正月の間、ご馳走ご馳走で胃袋を始めとする臓器も疲れてくるのがちょうど七草のころ。その頃、野に出て来た若菜は緑黄色野菜であり、しかも薬効がある。例えば芹には便秘や風邪の予防、利尿作用が、薺には肝臓病や高血圧の予防、はこべは腫れや痛み止めに効き、母乳分泌促進作用があると云われている。緑黄色野菜には、生体内でビタミンAとして働くカロチン、ビタミンB1・B2・C,ニコチン酸、カルシウム、鉄などが含まれ、これらビタミン、ミネラルが糖質、タンパク質、脂肪の代謝をスムーズにしてくれる。食べ過ぎで疲れた臓器を癒し、不足したミネラルを補ってくれのであ。こうした自然の野草のはたらきを昔の人は科学的に分析しなくてもちゃんとからだが知っていたのである。自然と日常生活が常に織りなしていたのだ。そしてそこには無病息災という祈りがある。
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